ヴァラ・カスパリーの短編小説「The Gardenia(梔子の花)」を基にしてチャールズ・ホフマンが描いた脚本を名匠フリッツ・ラングが映画化したフィルム・ノワール

ガーデニアとはクチナシの木や花のことを指す。自然界には白や黄色の花しか存在しないが、以前は青に染めたものを使っていた。最近では、バラ同様に遺伝子操作で「青いクチナシ」を作り出すことができる。

題名は、当時話題になった未解決遺体切断事件の「ブラック・ダリア」事件にひっかけている。この作品と「口紅殺人事件」、「条理ある疑いの彼方に」の三部作は、3面記事を賑わすような事件を扱ったニュースペーパー・ノワール三部作と言われる。

主演はアン・バクスター、リチャード・コンテ
共演はアン・サザーン、レイモンド・バー、ジョージ・リーヴス
白黒映画。
日本未公開。

ストーリー

カリフォルニア州ロサンゼルス。
ノラ・ラーキンは、電話会社のオペレーターである。同じ職場のクリスタルとサリーと共同生活をしていた。
ノラの誕生日に朝鮮戦争に出征している恋人から東京で看護婦と結婚するという便りが届いた。失意のどん底にいるときにハリー・プレブルという女たらしの広告画家からクリスタルに誘いの電話があった。クリスタルは前夫と出かけていたので、代わりにノラが誘いを受ける。
「ブルー・ガーデニア」という店で、強いカクテルを何杯も飲んでしまい、ノラは悪酔いしてしまう。ナット・キング・コールが失恋ソングの「ブルー・ガーデニア」を歌い、盲目の女性が「青いクチナシ」を売りにきたのでプレブルはノラに一輪買ってや
った。
そしてプレブルは、ノラを部屋に連れ込んで「ブルーガーデニア」のレコードを掛けてムードを醸し出す。その上でフラフラになっている彼女と関係を持とうとするが、ノラは火かき棒で彼を殴りつけてしまい、そのまま眠ってしまう。

目が覚めると、そこはプレブルの部屋であり、床に彼が死んでいた。彼女は動転して、靴など身の回りの品を忘れたまま自分の部屋に帰る。
翌朝、起きたノラは自分が彼を殺したのかどうか、記憶がなかった。
出入りの家政婦が、死体を発見して警察に連絡した。火かき棒は警察が到着する前に洗ったため、指紋は採取できなかった・・・。

 

雑感

フィルム・ノワールとしては、戦後のフリッツ・ラング作品の中でも佳作に挙げられる。
しかし、ミステリ映画としては、前半のペースを上げてケイシーが犯人探しをするところから、もう一捻り欲しかった。ヒッチコックなら、そうしているのだ。もちろん、上映時間や予算の問題でそこまで欲張ることは許されなかったのだろう。

アン・バクスターは、緊張感を高めるアップの映像が多かった。RKO出身の撮影監督ニック・ムスラカフリッツ・ラングと相談して工夫したらしい。
リチャード・コンテは、戦時中にローズ役のルース・ストーリーと結婚していた。
ヘインズ警部役のジョージ・リーヴズは、「スーパーマン」で子供たちの人気者だった。ただし、子供番組に出ているため、スポンサーの制約でイメージを崩すような作品に出られなかった。ここでも、目立たないようにメイクを強めにしている。
アン・サザーンは、さまざまな映画に脇役として参加していた。ここでも主人公ノラの良き相談相手として「淡島千景」や「越路吹雪」的ポジションで登場している。(60)

スタッフ

監督  フリッツ・ラング
製作  アレックス・ゴットリーブ
原案  ヴェラ・キャスパリー
脚本  チャールズ・ホフマン
撮影監督  ニクラス・ムスラカ
音楽  ラオール・クロウシャー
主題歌  ナット・キング・コール「ブルー・ガーデニア」

キャスト

ノラ  アン・バクスター
ケイシー(コラムニスト)  リチャード・コンテ
クリスタル(ルームメート)  アン・サザーン
プレブル(イラストレーター)  レイモンド・バー
サリー(ルームメート)  ジェフ・ドネル
ヘインズ警部  ジョージ・リーヴス
ナット・キング・コール  本人
ローズ(レコード店員)  ルース・ストーリー

***

ノラは、LAクロニクル紙の事件解説記事を読んでいるうちに火かき棒と鏡が割れる音を思い出した。新聞コラムニストのケイシー・メイヨは、被害者が行った「ブルー・ガーデニア」で取材を通して掴んだ犯人の特徴をレポートしていた。ノラは、自分のことだと思い、デートの日に着た黒いドレスを燃やしてしまった。
翌日にはケイシーは、犯人に宛てて呼びかける記事を書いた。それによると「犯行は女たらしの被害者に対するトラブルによるもので女性だけの責任ではない、しかし警察は近いうちに犯人を逮捕するだろう」とあった。
ノラは、ケイシーだけが頼りになりそうな気がした。その夜、部屋から抜け出しケイシーの新聞社に電話を掛けた。ケイシーは、真夜中の新聞社で落ち合うが、落ち着かないので食堂に移る。ノラは事件に巻き込まれた友人のために助けを求めていると言った。ケイシーは、明日この店に本人が現れるなら最高級の弁護士を世話しようと申し出た。
ノラは部屋に戻るが、クリスタルが起きていて最近のノラの様子に気に掛けていた。そこで、ノラは全てを彼女に告白する。
翌日、クリスタルに付き合ってもらってノラはケイシーに食堂で面会する。しかし食堂の店主が二人の話を盗み聞きしていて警察に通報していた。ノラは、担当のヘインズ警部に逮捕される。

ケイシーはノラに対して好感を持っていただけに目の前で逮捕されたことがショックだった。彼は空港のBGMを聴いて、あることを思い出し、ヘインズに頼んでプレブルの部屋を開けて貰う。ケイシーが見たかったのは、レコード・プレイヤーの上に乗っているレコードだった。ノラは、プレブルの部屋で「ブルー・ガーデニア」がかかっていたと証言した。しかし、ターンテーブルに乗っていたのは、ワーグナーの「トリスタンとイゾルデ」序曲だったのだ。誰かが、ノラの後からこの部屋に入ったのだ。
糸口が掴めたケイシーはヘインズとともに、プレブルが買ったレコード店に当たった。すると、店員ローズがトイレで自殺未遂を起こす。命には別状はなく、彼女は警察病院で犯行を自供した。彼女もプレブルに弄ばれて妊ったにも関わらず捨てられた犠牲者だった。
ノラは釈放となった。改めて、ノラにケイシーは声を掛けるが、彼女は素っ気ない。ノラは、とっくに許すどころかケイシーが犯人を見つけてくれたので感謝すらしてるのだが、クリスタルが男には安売りするなと忠告していた。ケイシーは、女の子たちの電話帳をカメラマンのアルに譲り、ノラの後を追うのだった。

ブルー・ガーデニア The Blue Gardenia (1953) アレックス・ゴッドリーブ製作 ワーナー・ブラザーズ配給 日本未公開

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