冒険小説や「ターザン」の翻訳を得意にしていた南洋一郎が戦後に書いた原作小説「バルーバの冒険」を小国英雄が脚色、鈴木重吉が監督した。
主演はヘルシンキ・オリンピックの銀メダリスト浜口喜博、共演は八潮悠子、見明凡太朗
この映画で海外ロケ(主としてアメリカ)を行った。スタジオ収録されたシーンも、主にサミュエル・ゴールドウィン・スタジオで撮影している。白黒映画。

あらすじ

昭和初期、アフリカ奥地に出かけて消息を絶った友人志賀博士の行方を探ろうと、渡部清一郎は娘の礼子、礼子の伯父で昆虫学者である健吉とともにアフリカに向かう。
清一郎の目的は、表向き志賀博士の行方を探すためだとしていたが、実は志賀博士の妻が漏らしたダイヤモンド鉱山を探すことだった。

清一郎ら三人は、現地で生まれた島村時男を通訳として別の部落を訪れた。そして協力的な酋長に会い、原住民の案内役を出して貰うことにした。
しかし酋長は、志賀博士がライオンに喰われて死んだと言う。それでも清一郎は、奥地へ進もうとする。時男は、サファリ(探検旅行)を続ける真の理由を清一郎から聞き出す。
一方、原住民は、酋長すら知らなかった事実を一行に伝える。彼らは、志賀夫妻が亡くなった後、その息子がライオンのメスに育てられたと言うのだ。確かに息子の名前は「丈児」だと志賀の妻が書いて寄越したことがある。

光る山を探して出発後、一行は人喰人種に襲われ、礼子と健吉が逃げた。しかし残る清一郎と時男は捕まってしまう。
一行は礼子と健吉を除いて火炙りになると思われたが、志賀博士が生前に彼らに対して恩義を与えていたので、客として持てなされる。やがて健吉も合流する。

礼子は逃げる途中ゴリラに襲われる。そこに半裸の青年が現われて救ってくれた。青年はいつも「ブルーバ」と叫んでいるが、言葉を知らなかった。ブルーバの持つナイフを礼子が調べると、果たして志賀夫妻のものだった。
礼子が大蛇に襲われた時もブルーバは、体を張って大蛇を退治して、次第に礼子と親密になった。象に一緒に乗って二人がジャングルで遊んでいると、銃に打たれた子像が現れる。銃弾を抜いてやったブルーバは、それがニンゲンの仕業と知っていた。

ついに一行は、礼子がブルーバと一緒にいるところを発見した。時男が銃を撃ったため、ブルーバは姿を消し礼子だけが連れ戻される・・・。

雑感

映画は、原作者南洋一郎が自分で訳しているからか、SF作家エドガー・ライス・バローズの原作小説「ターザン」やジョニー・ワイズミュラー主演(アメリカの水泳金メダル5冠王)の1932年映画「類猿人ターザン」とよく似た内容だ。違いはブルーバが、日本人学者の息子であり、猿ではなくライオンが育てたことになっている。

この映画の見所は、戦後初めて日本が参加したヘルシンキ五輪の競泳自由形800mリレーで銀メダルを獲得した浜口喜博が、俳優に転向してタイトルロールで主演したことだ。セリフは「ブルーバ」と大声で叫ぶだけ。ただし日本人離れした肉体美を持ち、川泳ぎシーンが大きな見せ場になっている。
ただし「大アマゾンの半魚人」ほどの水中撮影技術を日本人スタッフが持っていなかったことや、主演が野生的だが大映ファンの好む色男でなかったことからシリーズ化されなかった。その後、浜口は次第に出演する役が小さくなり、最後は「大怪獣決闘ガメラ対バルゴン」に出演した。それから水泳界に戻り、1980年幻のモスクワ五輪水泳監督を務め、続く1984年ロサンゼルス五輪競泳監督も務めた。

八潮悠子は、1950年にSKD五期生として入団し、その後大映に移籍する。SKDでは草笛光子と同期である。1963年あたりまで大映映画で活躍し、その後は天皇陛下や政治家御用達の名レストランであるニューヨークの「レストラン日本」の経営者と結婚した。移籍直後は市川雷蔵の相手役などヒロインとして活躍したが、その後は脇に回った。

最後の酋長役にウディ・ストロードが出て来たときは驚いた。彼は法廷映画である「バファロー大隊」や史劇「スパルタカス」「リバティ・バランスを撃った男」など映画史に残る不朽の名作に多く出演した。シドニー・ポワチエ、モーガン・フリーマンのような知性派黒人でないから映画賞とは無縁だったが、鍛え抜かれた肉体派黒人の代表だった。まだデビュー間なしの頃だったため、日本映画でも出てくれたのだろう。なかなか凄いことだ。日本ロケだとアメリカ俳優を呼んでも腑抜けた演技しか見せないが、アメリカ・ロケなので彼はきちんと仕事をしていた。

スタッフ

企画  久保寺生郎
原作  南洋一郎
脚色  小国英雄
監督  鈴木重吉
撮影  高橋通夫、板橋重夫
音楽  伊福部昭

キャスト

丈児(ブルーバ)  浜口喜博
渡部礼子  八潮悠子
父清一郎  見明凡太朗
叔父山田健吉  丸山修
島村時男  南弘二
父大助  フランク・熊谷
人食人種酋長  ウディ・ストロード

ネタばれ

やがて一行は光る山(ダイヤモンド鉱山)を見つけたが、人喰人種に襲われる。彼らの酋長には志賀博士の威光も通じなかった。処刑される直前に、ブルーバはライオンや象といった猛獣たちを人食人種の部落に送り込んで部落を破壊し、時男もライオンに食べられてしまう。。
清一郎と礼子はブルーバを故郷である日本に連れ帰ろうとしたが、自分を野蛮な日本人だと信じられないブルーバは河に飛び込んでジャングルに帰って行く。静止する父清一郎を振り切り、礼子も彼の後を追ってジャングルに消える。

 

 

 

 

ブルーバ 1955 大映東京製作 大映配給 オリンピック・メダリスト浜口喜博主演

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