石坂洋次郎の短篇「くちづけ」「霧の中の少女」「女同士」を松山善三が脚色し、第一話を算正典、第二話を鈴木英夫、第三話を「浮雲」の成瀬巳喜男が監督するオムニバス恋愛映画
白黒映画で撮影は山崎一雄
主演は,第一話が青山京子、太刀川洋一、第二話が司葉子、中原ひとみ、小泉博、第三話が高峰秀子、上原謙、中村メイコである。

 

雑感

青春時代の恋愛を描いた石坂洋次郎作品を三人の監督がそれぞれ撮った。
第一話は、主演が女子大生役の青山京子だが、相手役が二枚目半の太刀川寛だけにストレートで終わらない。
第二話は、帰省した女子大生司葉子とその妹役の子役中原ひとみ(東映)が主演で、そこへ遊びに来る司の同級生は小泉博。こっちは、綺麗にハッピーエンドを迎える。東映所属で他流試合だったが、中原ひとみはませた小娘役をやらせると上手かった。祖母役の飯田蝶子が、10年後に若大将シリーズに出演した時より老けていた。痩せていたようだが、役作りで体を絞ったのか?

第三話は、院長上原謙を巡って院長夫人高峰秀子が看護婦中村メイコに嫉妬して縁談を無理矢理まとめてしまう話。しかし、その後のオチが最高だった。成瀬巳喜男監督にこんなユーモアがあったのだ。
第一話はつまらなかったが、第二話は心が温まり、第三話はニヤッとしてしまう。そんな三部作だった。

キャスト

(第一話)
青山京子  夏目くみ子
太刀川洋一(寛)  河原健二
十朱久雄  くみ子の伯父
杉葉子  義姉倫子
滝花久子  母
笠智衆  長谷川教授
日吉としやす  宏

(第二話)
司葉子  金井由子
小泉博  上村英吉
中原ひとみ  由子の妹妙子
伊東隆   弟信次
飯田蝶子  祖母八十子
藤原釜足  父半造
清川虹子  母テツ子

(第三話)
高峰秀子  金田朋子
上原謙  金田育三
中村メイコ  竹谷キヨ子
小林桂樹  竹谷清吉
伊豆肇  朋子の兄
長岡輝子  金田の母
堺左千夫  患者
八千草薫  新人看護婦

 

スタッフ

製作  藤本真澄
原作  石坂洋次郎
脚色  松山善三
監督  筧正典、鈴木英男、成瀬巳喜男
撮影  山崎一雄
音楽  齋藤一郎

 

あらすじ

第一話「くちづけ」
共学の大学文学部に通う夏目くみ子は、義姉の倫子の再婚話について子供っぽい潔癖性から嫌悪感を覚える。彼女は、仲の良い級友の健二に相談すると、彼は幸福とは主観的だ(人の幸せに口出しをするな)と話す。
ところが倫子は、一人息子宏が大きくなるのを見守ることが幸せだったので、再婚話をことわった。くみ子は自分が幼稚だったことを恥じた。彼女は、倫子からそのとき婚前に他の男と一度接吻したことを聞かされる・・・。
長谷川教授にカンニングについてお目玉を食った日、くみ子と健二は早退して多摩川の土手の草むらに寝ころぶ。突然、健二はくみ子にキスして良いかと聞いた。くみ子は了承したが、キスした途端にプロポーズもされていないのにいけないことをしてしまったと、泣いて逃げ出す。家の近くで倫子が宏と凧をあげていた。くみ子は、倫子の話を思い出し、こういうこともありなのかと悟る。

第二話「霧の中の少女」
夏休みで会津に帰省している由子の家に彼女の学友の上村英吉がやって来ると言う。母は警戒するが父や祖母は嬉しそうである。
由子の妹妙子が二人を近付けまいとして、いつも二人について回った。しかし、かえって二人の絆は強くなる・・・。
祖母の提案で二人と妙子を温泉に一泊旅行へ行かせる。その夜、妙子が寝た隙に二人は夜霧のデートを楽しんだ。妙子は二人がいないことに気付いて大騒ぎになる。ちょうどやって来た祖母も一緒になり、探すと霧の中から現れる。二人の元気な姿を見て、妙子も祖母も安心する。
英吉が東京へ発つ日、由子はホームの端で両親に会って欲しいと言われる。 由子は幸せだった。

第三話「女同士」
町医者金田育三の妻朋子は看護婦キヨ子の日記観てしまう。キヨ子は、育三を愛していた。兄に相談すると、キヨ子に結婚を世話してやれば良いと言う。そこで、キヨ子と会うといつも口喧嘩ばかりしている八百屋の息子清吉に打診する。やはり清吉はキヨ子のことが好きだった。朋子がお膳立てをすると、二人は次第にお互いを意識し始める・・・。
急病人が出た夜、キヨ子は清吉とデートをしていていなかった。後から、育三にお目玉を食らってしまう。そこへ清吉の父からキヨ子を息子の嫁に欲しいと言ってきた。それには育三も吃驚してしまい、二人を祝福する。婚礼の日に、朋子はキヨ子に日記を覗いたことを告白する。そして、育三との結婚生活に不要だから、自分に日記帳をくれと言った。キヨ子もその通りだと思い、日記帳を渡す。
やがて、新たな看護婦がやって来るが、それが八千草薫のような美人であり、朋子の悩みはまた増えたのであった。

くちづけ 1955 東宝東京製作 東宝配給 恋愛に関わるオムニバス映画

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