洋の東西を越え、価値観の違いを乗り越えても結ばれなかった二人の愛に当時世界中が涙したメロドラマ。
このDVDは、懐かしいNETテレビの日曜映画劇場(1969.10.5)の吹き替えを使っているらしい。ウィリアム・ホールデンは俳優近藤洋介でジェニファー・ジョーンズはNHK東京放送劇団出身の里見京子が声を当てている。もちろんテレビでも見ているバージョンだ。
 

ハン・スーインは中国人男性とベルギー人女性の間に生まれた香港の女性医師。ただし彼女は映画の設定ではイギリス系中国人となっている。映画「慕情」は彼女の半生を描いた自伝を基にジョン・パトリックが大胆に脚色した作品。
 

ハン・スーインは、夫が中国の国共内戦で戦死したため、香港の病院で働いていた。ある日、病院理事長主催のパーティーでアメリカの従軍記者マーク・エリオットと知り合う。マークにはシンガポールに妻がいるが、夫婦仲は冷め切っていた。やがて二人で海へ泳ぎに行き結ばれた。スーインとマークは重慶のスーインの家族に挨拶に行き結婚の許諾をもらった。今度はマークがシンガポールの妻と別れる番だったが、妻は承知してくれなかった。スーインはマークを慰め、マカオへ旅行に出かけるが、マークは朝鮮戦争勃発で急遽韓国に向かう。香港に帰ってきたスーインだったが居場所はなかった。理事長夫人の怒りを買い、スーインは病院を辞める。友人ノラの家に寄寓してマークの便りを待つが、来たのはマークの死亡を知らせる記事だった。その直後にマークからの手紙が届く。スーインは愛を語り合った丘の上にある思い出の木陰で、再び医師として生きていくことを誓う。

 

お話としては、ジェニファー・ジョーンズに東洋人の血が感じられないため、冒頭やや違和感はあるが話が進むにつれ慣れて来る。
二人のラブシーンは現代映画のラブシーンと比べるとウェットであり、年齢のわりにウブで気恥ずかしいものだが、西洋人と東洋人の恋だからそれぐらい気持ちを前に出さないと通じない部分もあると思って見ていた。決して西洋人同士のダイナミックなラブシーンではないのだ。
 

ウィリアム・ホールデンといえば近藤洋介である。ホールデンの地声よりも近藤の声の方がぴったり来る。ただしジェニファー・ジョーンズの里見京子は実際の年齢よりも老けた声だから、恋に燃える女性は苦手だと思う。少なくとも上品すぎる。そこが残念。
 

有名な主題歌はサミー・フェインが作曲したが、よく聞くとプッチーニのオペラ「蝶々夫人」のアリア「ある晴れた日に」のメロディーが聞こえる。だからこの歌は現代版蝶々夫人と考えて作曲されたわけだ。つまり当時の欧米人は日本人と中国人の区別が付いてなかった。
 

 

監督 ヘンリー・キング
脚色 ジョン・パトリック
原作 ハン・スーイン
製作 バディ・アドラー
撮影 レオン・シャムロイ
音楽 アルフレッド・ニューマン

 

キャスト
Mark Elliot ウィリアム・ホールデン
Han Suyin ジェニファー・ジョーンズ
Mr.Palmer-Jones トリン・サッチャー
Adelline Palmer-Jones イソベル・エルソム
Dr.Tam マレイ・マシスン
Ann Richards ヴァージニア・グレッグ