昔、テレビで見て以来、二度目の鑑賞だ。

 

ウンベルト・Dは長年、公共事業省で勤め上げ定年退職後、犬のフライクと年金生活に入った。年々酷くなるインフレで借金が増え家主から立ち退きを要求されている。そこで年金生活者たちは無認可ストを行うが、仲間に聞いてみると負債を抱えているものは意外に少なかった。そんな彼らを警察は無情にも蹴散らし解散させてじまう。下宿に帰ると自分の部屋はラブホテルがわりにカップルが寝ていた。家主に抗議すると今すぐ滞納している家賃を納めないのなら月末には出て行ってもらうと言われた。その日からのどの具合が悪く熱も上がった。自分から救急車を呼び着替えて身の回りのものを持って待っていると、救急救命士はあまりに手回しが良いので、びっくりする。一週間ほどで修道院系の病院から出ると、部屋のリフォームが始まっていて寝られる状況ではない。差し止め請求を行おうにも裁判所に供託金が払えない。世の中に絶望したウンベルトはあちこちを転々として最期は市電に飛び込み自殺しようと考えるが、フライクが嫌がって逃げ出してしまう。

 

昔見たときは年金問題が身近では無かったので、全然わからなかったが、今ならわかることがある。

ウンベルトは閑職を勤め上げた下級官吏で今で言う早期退職組だ(友人は皆、務め人だったから)。初めは年金だけで生活できたが、イタリアのインフレは異常だからすぐ年金生活は破綻する。だから、他の老人たちは働けるうちは仕事をやり続けたはずだ。ウンベルトは十分働けたのに広いアパートで悠々自適の年金生活を送ったばかりに資金ショートしてしまったわけだ。

だから、ウンベルト一人が可哀想だとは言い切れない。突き放されたようだが、下級官吏のプライドなぞ捨てて修道院の生活保護を受けたら生きていける。ラストシーンは、そういうつまらないエゴを捨てたことを描いていると感じた。

ただし、ネオレアリズモ映画は社会主義の影響を受けているから、上のような見方は斜め読みなのかも知れない。

 

 

監督 ヴィットリオ・デ・シーカ
脚本 チェザーレ・ザヴァッティーニ
撮影 G・R・アルド
音楽 アレッサンドロ・チコニーニ
配役
カロル・バッティスティ
マリア・ピア・カジリオ
リナ・ジェンナーリ