ショーケンこと萩原健一の出世作。
舌っ足らずのアイドル歌手でありながら、実はすごい天才俳優だったのだ。
斉藤監督で前年「めまい」という作品を撮っている。
辺見マリがお色気アイドルの役で出ている映画で、萩原健一はマリに惚れていたが范文雀と最終的に一緒になるようだ。
その後、映画監督がやりたくて斉藤組に入り浸っていたら、この映画の主演俳優が降りて、彼にチャンスが回ってきた。
その後、「太陽にほえろ」「傷だらけの天使」「前略おふくろ様」で人気沸騰して、「青春の蹉跌」でキネ旬主演男優賞を獲得。

蛍子(岸恵子)は夫殺しの模範囚である。
刑吏島本(南美江)とともに母の墓参りすることが許される。
たまたま列車に乗り合わせたチンピラの萩原健一)は、蛍子のミステリアスな魅力に好意を抱く。
やがて目的地に着いた蛍子は朗と母の墓参りをした。
朗は夕方に明日12時にまた会おうと約して行ってしまった。
次の日、何故か午後3時頃になって朗は再び現れた。
三人はまた同じ電車で刑務所のある名古屋に向かう。
途中、落盤事故があり、朗は島本の目を盗んで逃げようと言うが、蛍子にはできなかった。
刑務所の扉を挟んで蛍子は朗に二年後の再会を約す。
しかし朗は彼女への差入を買っている最中に、尾行していた刑事に強盗傷害罪で逮捕されてしまう。
二年後、待ち合わせの公園で来るはずのない朗を待ち続ける蛍子の姿があった。

なかなかよかった
この作品は、(フランス映画に感化されたと思われる)韓国映画から斉藤監督がインスパイアされた映画である。
韓国映画はこの時代の方がよかったのではないか。

映画のラストシーンを見たときにどきっとした。ファーストシーンにつながったのだ。
このファーストシーンとラストシーンは岸恵子の座ったまま待ちぼうける姿を写しているが、要するに1時間半の映画の最中、彼女は待ち続けているのだ。そして映画全体がいわば彼女の二年前の回想シーンなのだ。

韓国映画は見ていないが、最初と最後の待っているシーンの繰り返しにオリジナリティがあったのではないかと推測する。
この映画は二人を十分に描ききっていないと批判する人がいたが、的外れだ。二人が一緒にいたのは僅か二日足らずだったのだ。
だから二人の関係は薄っぺらい。
だが、そんな薄い関係をよすがに生きていくしかない人もいるのだ。
岸恵子が自称35才というのは、いささか年を取りすぎているように見える(当時の実年齢は40才)が、おそらくさばを読んでいるという設定なのだろう。

 

監督 斎藤耕一
脚本 石森史郎
原案 金志軒
製作 斎藤節子 樋口清
撮影 坂本典隆
美術 芳野尹孝
音楽 宮川泰

 

出演
岸惠子 (松宮螢子)
萩原健一 (中原朗)
南美江 (島本房江)
三國連太郎 (刑事、裁判官)
中山仁

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約束 1972 松竹

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