山陽新幹線利権に絡む汚職事件を描いた、梶山季之の原作小説「夢の超特急」を増村保造白坂依志夫が共同で脚色して、増村が監督したサスペンス映画
黒シリーズ」全十一作の最終作品である。
主演は「黒のシリーズ」七作目の田宮二郎
共演は藤由紀子、加東大介、船越英二。白黒映画。

あらすじ

桔梗敬一は、岡山県で不動産業を営んでいた。彼は証券会社に勤めていたが、自ら株式投資に失敗し、会社を辞めて実家の田畑を売って代金決済をしたことがあった。その時に、不動産の魅力に取り憑かれて、この業界に入った。

中江という男が桔梗を訪れた。中江は、工場用地としてこのあたりの土地を、買いたいと言った。桔梗には坪あたり百円の手数料を支払う契約を結んだ。
地主たちと上京した桔梗は、中江と取り引きを終え、三日間どんちゃん騒ぎをした。この時桔梗は、中江の事務所ですれ違った美しい人妻のことが忘れられなかった。

桔梗は、株にまた手を出して全財産を失った。そこで中江の買った土地の上を第二次新幹線(山陽新幹線)が走ると聞いて、騙されたと気付く。桔梗は、騙した中江に五百万の融資を頼むが、断られる。

桔梗は例の奥さんに再会する。彼女は田丸陽子と言って、新幹線公団で財津理事の秘書として勤めていたが、二年前に退職し、今は赤坂のマンションで財津の二号になっていた。強引に陽子の部屋に押し入り、桔梗は不倫の事実を暴露すると脅した。結局、陽子は体を開いたが、心は開かなかった。

しかし、財津から中江が第二次新幹線計画を聞き出したのは事実らしい。一方、桔梗が不審な動きをしていることを察知した中江は、財津に陽子と別れるように勧める。さらに中江は陽子にも別れるように説得する。陽子は手切金として喫茶店の店舗かマンションを要求するが、中江に断られる。

陽子は、手切金を貰えないならば、桔梗と組もうと考える。そして桔梗に今回の事件の裏側をすべて説明した。
中江は、財津に近づき、財津の秘書をしていた陽子が愛人になるように仲介する。愛人手当はほとんど中江から出ていたのである。そして、中江は財津の義父である憲民党幹部工藤に愛人の件を告げて、黙ってほしかったら三星銀行に線路用地の購入資金を融資させろと脅した。工藤も食えない男であり、土地の公団への売却利益の半分をもらう約束で応じたのである・・・。

 

 

雑感

最後の「黒シリーズ」は、やはり田宮二郎増村保造のコンビで撮った。さらに田宮二郎夫人になる藤由紀子が花を添える。

ちょうど東海道新幹線が1964年10月1日に走り出した。それに合わせて、次の第二次新幹線(後の山陽新幹線)建設計画に関わる架空の汚職事件を描いた梶山季之の小説を映画化している。

藤由紀子がヒロインで、欲に塗れた汚れ役を熱演している。最後の表情は、なんとも言えないものがあった。

久々に加東大介が大映映画に登場する。戦後復員してしばらくは、大映専属だった。
東宝での加東大介のキャラとは違うが、贈賄側の元国鉄マンを熱演している。

ちなみに筆者が東海道新幹線に初めて乗ったのは運転開始して何年か経ってからだった。しかし山陽新幹線は、1972年3月15日に走り出してすぐ西明石-岡山間を乗ってみた。

 

 

スタッフ

企画  藤井浩明
原作  梶山季之 「夢の超特急」
監督、脚色  増村保造
脚色  白坂依志夫
撮影  小林節雄
音楽  山内正

 

キャスト

桔梗敬一(不動産屋)  田宮二郎
田丸陽子  藤由紀子
財津政義(新幹線公団理事)  船越英二
中江雄吉  加東大介
工藤(民自党幹部)  石黒達也
長沼博子  町田博子
財津夫人  穂高のり子
不動産屋の若い女  大西恭子
料亭の女中  三島愛子
加田  早川雄三
大藤  高村栄一
小林  春本富士夫
証券会社の社員  中条静夫
旅館の主人  上田吉二郎

 

ネタばれ

桔梗は陽子を味方につけた。陽子は、財津にも三行半を突きつけられて、桔梗の最後の作戦に乗った。中江の言葉を録音するため、部屋にテープレコーダーを隠したのだ。中江は工藤に陽子を殺せと命じられ、ついに陽子を絞殺した。花瓶に隠されたテープを見つけて持って帰った。
後からマンションに来た桔梗は、部屋から陽子が消えてしまったことに気付く。そして書棚に隠したもう一つのテープレコーダーを再生して、陽子が殺されたことを知った。
桔梗は、中江を呼び出しテープを聞かせ、ボコボコにする。でも殺しはしなかった。警官に引き渡したのだ。
中江は取り調べに対して、汚職について洗いざらい告白した。工藤と財津も警察に逮捕された。桔梗は、岡山への帰途、新幹線には乗れなかった。在来線から新幹線が見えたが、カーテンを閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

黒の超特急 1964.10 大映東京製作 大映配給 「黒シリーズ」最終作

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