チャールトン・ヘストンが「十戒」「三人のあらくれ者」の次に出演したノワール映画。
平成最後に観た映画。(白黒作品)
「十戒」に出演して大スターとなったチャールトン・ヘストンは監督の人選に口を挟むようになり、敵役として内定していたオーソン・ウェルズを望んだという。
オーソン・ウェルズ監督だけに共演も曲者揃い、重要な鍵を握るのはメンジス刑事役を演ずる戦前からの名脇役ジョゼフ・キャレイアだ。彼の笑顔の意味が最後まで分からなかった。
他に出演はデニス・ウィーヴァー、マレーネ・ディートリッヒ、ザ・ザ・ガボール、バレンティン・デ・バルガス。
あらすじ
アメリカとメキシコの国境地帯で殺人事件が起きる。メキシコ側の若き麻薬調査官マイク(チャールトン・ヘストン)とアメリカ側の老獪な刑事クインラン(オーソン・ウェルズ)が共同して捜査に当たるが、捜査方法を巡って衝突する。
マイクはクインランの弱みを見つけようと必死になって過去の捜査資料を探る。
そんなとき、マイクに恨みがあるギャングが妻スージー(ジャネット・リー)を誘拐し、何故かライバルのクインランに取引を申し出る。
雑感
オーソン・ウェルズがアメリカで最後に監督をしたノワール映画だが、ユニヴァーサルが残念な編集をしてしまい、試写会で発表したときに(批評家が保守派だったせいで)非難殺到だった。そこで場面をいくつかカットして上映したが、やはりこけてしまう。
天才オーソン・ウェルズは編集方法についてユニヴァーサルにクレイムを入れていたが、一切無視されてしまった。(ギャラも俳優としての金額しかもらっていない)
一方ヨーロッパでこの映画は、カルト的人気を誇っている。(オーソン・ウェルズはヨーロッパで絶大な人気を誇っていた。三十年ほど前に何カ国か回ったら、命日でもないのにどの国でもテレビで映画を再放送していた)
ウェルズの死後十数年経ってから再評価の声が高まり、彼の方針に従って編集し直され修復版(最長版)が作られた。今回それを見たが、最初からクレーンからの長回しでのバルガス夫妻の登場シーンがあって度肝を抜かれる。
音楽はまだ下っ端だったヘンリー・マンシーニが作曲しているが、それより色々な店からそれぞれにラジオ局が聞こえてきて如何にも国境の町という感じが出ている。ジョージ・ルーカス監督はこんなに早くにアメリカン・グラフィティのようなシーンをウェルズが撮っていたことを驚いていた。
内容的には欧州復讐譚(「雨の訪問者」、「追想」)の原型ぽくてアメリカ保守派から叩かれそうだが、普通に面白かった。
オリジナルを見ていないから比べられないが、もっと残虐にして欲しかったし、撮り直し出来てシーンを差し替えることが出来ればさらに良くなったと思う。
スタッフ・キャスト
監督・脚色 オーソン・ウェルズ
製作 アルバート・ザグスミス
修復版製作 リック・シュミドリン
原作 ホイット・マスターソン
撮影 ラッセル・メッティ
作曲 ヘンリー・マンシーニ
音楽監督 ジョセフ・ガーシェンソン
出演
マイク・ヴァルガス チャールトン・ヘストン
夫人スージー ジャネット・リー
ハンク・クインラン オーソン・ウェルズ
メンツィーズ ジョゼフ・キャレイア
ジョー・グランディ エイキム・タミロフ
マルシア ジョアンナ・ムーア
アデール レイ・コリンズ
宿直 デニス・ウィーバー
パンチョ バレンティン・デ・バルガス
シュバルツ モート・ミルス
サンチェス ヴィクター・ミラン
特別出演(酒場女) マレーネ・ディートリッヒ
特別出演(キャバレーの女) ザ・ザ・ガボール