無差別連続殺人鬼(シリアルキラー)は、雨の日に犯行を繰り返し、殺人現場に「ザ・ジャッジ(判事)」と書いたメモを残していた。様々な情報を収集して姿なき殺人鬼を追いつめる刑事と女新聞記者を描いたフィルム・ノワール。
画面はスタンダード・サイズで白黒映画である。上映時間は約60分。
リリー・ヘイワードが脚本を書いて、監督はリチャード・フライシャー。
主演はウィリアム・ランディガン、ヒロインはドロシー・パトリック。
あらすじ
ハリー・ブラント警部補は、雨の日に無差別殺人を起こして現場に「ザ・ジャッジ(判事)」と書いたメモを残す連続殺人鬼を執拗に追い求めていた。
ある雨の夜も、7番目の殺人事件が起きた。ハリーは、捜査課長には成果が出ないなら捜査から外すと言われてしまい、初めて現場に来た美人ゴシップ記者アン・ゴーマンに逆ギレする始末。
鑑識が犯行現場に落ちていた毛髪を調べたり、ハリーが遺留品を使って犯人をマネキンで再現して目撃者に見てもらったりする。自分が「ザ・ジャッジ」だと言う男が現れたが、有名になりたいだけの別人だった。警察による犯罪捜査は、一向に進まない。それどころか、アンが警察がマネキンを使って捜査していることをすっぱ抜いたものだから、美人に気を許しかけたハリーはお冠だ。
また、雨の夜だった。ハリーが捜査本部にいると、つい犯人のマネキン像に話掛けてしまう。同僚のアートは、気味が悪くなり、どこかで一杯やって寝ろと勧める。そして誰もいなくなると、マネキンが動き出した。実は彼こそが、「ザ・ジャッジ」だった。奥から本物のマネキンを引っ張り出して、自分の座っていたところに置いて、警察署から消えてしまった・・・。
雑感
リチャード・フライシャー監督(「ミクロの決死圏」「絞殺魔」)の好きなサイコ連続殺人事件である。とくに第七と第八の事件に焦点を絞り、短い上映時間ながらコンパクトにまとめている。
日本人の怪談とは異なる水のイメージを使っている。水というより、小川とか雨というイメージかな。
冒頭の雨の水溜りシーンから、ラストの工場パイプから水滴に至るまで、水を小道具に使い、雨の日に起きる連続殺人事件の恐怖を上手く引き出している。
また人形だと思い込んでいたのが、実は警察署に入り込んだ犯人だったのも驚きだ。
とくに撮影のロバート・デ・グラスが凄い。ラストに鉄道車両の工場での銃撃やアクション・シーンがあるが、なかなかの迫力だった。
主役のウィリアム・ランディガンは、戦前エロール・フリンの主演映画に脇役で出演していた。
スタッフ
監督:リチャード・フライシャー
脚本:リリー・ヘイワード
撮影:ロバート・デ・グラース
音楽:レオニード・ラープ
キャスト
ハリー・ブラント警部補 ウィリアム・ランディガン
アン・ゴーマン(新聞記者) ドロシー・パトリック
アート・コリンズ刑事 ジェフ·コーリー
チャーリー・ロイ エドウィン・マックス
マルヴァニー警部 チャールズ・D・ブラウン(三つ数えろ)
***
ハリーが車に乗っていると、アンが呼び止めて、謝罪をした。そこへ警察無線で8番目の殺人事件の一報が入る。夫人が殺されていた。その現場に、場違いなカストリ雑誌を発見する。
アンに尋ねると、この雑誌は一般に流通しているものではなく、古本屋に卸している分だと言う。そこから刑事達の古本屋への聞き込みが始まった。目当ての古本屋は見つかるが、まだ犯人かどうかはわからない。さらにレストランに聞き込むと、食事に来て雑誌を一人で読んでいる男チャーリー・ロイがいると言う証言を得る。
チャーリーの家はすぐわかって、張り込んでいると、チャーリーが帰ってくる。何者かに尾けられている感じがしたチャーリーは、近くの鉄道工場に逃げ込む。そこをハリーが追い詰めて逮捕する。しかし、工場の水滴の音に反応して、凶暴になり、手錠をしたままハリーを階段の上から何十mも下に突き落とそうとする。最後は、逆に反動でチャーリーが落下していった。
ある夜、アートがバーにチャーリーを呼びに来るが、ハリーとアンは良い雰囲気だ。それを見てアートは、一人で署に帰るのだった。