原作はジョン・モナハンで脚本も書いているが、当時のジェームズ・メイスンの妻である女優パメラ・ケリーノが脚本参加している。製作はシドニー・ボックスだが、主役を演じるジェームズ・メイスンも製作に参加している。夫婦で良い儲け話と思ったのだろう。
一種の倒叙型ミステリーなのだが、刑事コロンボ型とは異なり、犯行時点に捻りが入っている。
Synopsis:
教授が犯罪心理学の講義を始める。今日の内容は正常者が正義のために犯す殺人だ。
ある医師に急患があった。緊急手術しなければならないほどの重症だ。早速娘アンの手術の承諾を母親エマに得て、実施し成功した。これから一、二週間、問題がなければ退院できる。その間にエマと医師は親しくなるには十分な時間があった。しかしエマには地質学者の夫がいて、いつも研究旅行に出ている。医師も妻はいるが、別居して何年も口を聞いていない。お互いに良い雰囲気だったが、最後の一線は越えられなかった。娘アンがいたからだ。その結果二人は別れることにした。
ところが数年後エマが寝室の窓から落ちて死んだと言う。検視審問では事故死と判定されたが、証人の口から直接情報を聞き出すと、義妹ケイトがエマを激怒させたために、エマが立ちくらみがして窓から落ちたのだ。彼はケイトに対して復讐をすることを天国のエマに誓う。
実は講義している教授こそ、その医師だった。彼は人前で話して確信を持ちたかった。
しかし、いざ殺人計画を実行しようとすると、机上の空論通りには行かない。自殺に見せかけるつもりがケイトを絞殺してしまうし、管理人も帰って来る。急いで車に死体を乗せ海で捨てようとするが道に迷い、運悪く他の医者が救援を求めてきた。責任感から手術を執刀してしまうが、その結果、車に死体を乗せていることがバレてしまう。そして死体を海に落とすために海岸に向かったのに、自分が飛び込むことになってしまった。
Impression:
復刻ライブラリーのDVDには音声と字幕がずれているところがあった。返品は効くそうだが、字幕OFFにして特に問題はない。戦後すぐの上流階級の英語は聞き取りやすい。
実際に野心的なプロットだった。犯人がいわば学生たちの前で公開自供しているわけである。もっともこの時点ではまだ次の被害者ケイトは生きている。自供ではなく完全犯の予告を行っただけだ。
この犯罪がパラノイヤが起こすタイプの犯罪だと看破した学生が一人だけいた。そのとき主演のメイスンの表情に焦りが見えた。
そして理論を実践してみると、小説ではないのだから、思い通りには行かない。殺人は成功するがミスを連発して捕まるのは時間の問題だった。
さらに大きな試練がやって来る。自分にしか出来ない手術患者が目の前に現れた。パラノイヤ的気質のある外科医は非常時でも自分でなければ手術できないことがあれば、やってしまうらしい。結局これが命取りになって自殺を選ばねばならなくなったのだ。
本当にこんな結果しかなかったのか。例えば、夫に洗いざらい告白して、ケイトの宗教上の罪を世間に知らしめることもできただろう。もちろん、夫が反対したら逆に自分の妻に対する不倫疑惑だけがクローズアップされるかもしれない。
なお、ケイト役のパメラ・ケリーノはジェイムズ・メイスンの当時の奥さんである。
Staff/Cast:
監督 ローレンス・ハンチントン
製作 シドニー・ボックス 、 ジェームズ・メイソン
原作 ジョン・P・モナハン
脚色 ジョン・P・モナハン 、 パメラ・ケリノ
撮影 レジナルド・ワイヤー
作曲 バーナード・スティーヴンス
指揮 ミューア・マシーソン
音楽演奏 ロンドン・シンフォニ・オーケストラ
[amazonjs asin=”B06W5JGRCB” locale=”JP” title=”霧の夜の戦慄 DVD”]
出演
ジェームズ・メイソン マイケル・ジョイス
ロサムンド・ジョン エマ
パメラ・ケリノ ケイト
アン・ステーヴンス アン
モーランド・グラハム クレイ
ブレフニ・オルーク ファレル医師