映画「透明人間」と言えば、最近ではポール・バーホーヘン監督の「インヴィジブル」(Hollow Man, 2000)や「SAW」の脚本家だったリー・ワネルが監督を務める、2020年封切り予定「The Invisible Man」(ユニヴァーサル映画なので同じ題名が使える)がある。オリジナルは1933年のユニバーサル映画で、大ヒットしてベネチア国際映画祭で特殊効果賞を受賞した。
監督は「フランケンシュタイン」から「ショウ・ボート」第一作まで何でも撮るジェームズ・ホエール、主役はクロード・レインズ、ヒロインは「タイタニック」で101歳になったヒロインも演じたグロリア・スチュアート。
あらすじ
英国の寒村の酒場に体中包帯だらけの男が宿を求めて訪れた。女将は特別室を用意してくれたが、男は寝ずに実験ばかりしている。ある日女将は男が食事をするところを見てしまった。口がなかったのだ。女将が金切声を上げるのを聞いて、近所の男たちが集まってきた。すると変なことばかり起こるようになる。酒場の主人は怒って、謎の男を警察に頼んで追い出そうとするが、男は警官の前で全身の包帯を取ると、すっかり姿が消えてしまって声だけが響く。男は透明人間だった。男は警察の目から逃れ、かつての同僚ケンプ博士のところに身を寄せる。透明人間グリフォンは透明になる術を発見したが、元に戻る方法をまだ見つけられない。ケンプは師クランリー教授や婚約者フローラと会わせてくれるが、その一方警察とも通じていた。それをグリフォンに勘付かれ、ケンプに恨み言を吐きながら警察より一足早く逃げ出す。グリフォンのターゲットになったケンプは警察の協力を得て郊外へ来るまで逃げるが、その車にいつの間にかグリフォンが乗っていて、ケンプごと谷底へ突き落とす。しかしグリフォンも傷付き、農家の納屋でぐっすり眠ってしまう。農家からの通報で警察隊は納屋を包囲の上、火を放つ。そして煙に巻かれたグリフォンが逃げ出すところ雪にできる足跡で居場所を特定し、一斉射撃をして倒す。
臨終の床で、透明だったグリフォンの顔が徐々にはっきりしてきて、息を引き取る瞬間完全に姿が明らかになった。
雑感
原作者H.G.ウェルズはこの直前に映画化した「ドクター・モローの島」が改変(邦題「獣人島」)されていたため、「透明人間」の制作には口を挟み、原作に近いものを要望したそうで、ケンプ博士が殺されることを除いて、大きくは変わらなかった。
酒場の女房、ユナ・オコナーが金切り声を上げる演技は素晴らしく、映画をコミカルな味を加えていて、これが大ヒットの要因になったと思われる。
のちに「シーザーとクレオパトラ」で主役を演ずるクロード・レインズはこれが映画初主演、しかも顔が出るのは最期の一瞬だけ。包帯を脱いでいるときは針金で人型を作ったものを使ってアテレコするが、包帯を巻いているときはレインズが黒ずくめの格好をして、つや消しの照明を当てて撮影した。
原作ではケンプ博士は殺されない。
スタッフ・キャスト
監督 ジェームズ・ホエール
原作 H・G・ウェルズ
脚色 R・C・シェリフ
撮影 アーサー・エディソン
美術 チャールズ・ホール
配役
透明人間グリフィン クロード・レインズ
恋人フローラ グロリア・スチュアート
ケンプ博士 ウィリアム・ハリガン
主任警部 ダッドリー・ディグス
酒場の主人ホール氏 フォーレスター・ハーヴェイ
ホール夫人 ユーナ・オコナー
クランリー博士(師) ヘンリー・トラヴァース
レーン警部 ドナルド・スチュアート