大正13年から14年まで新聞と雑誌に連載された谷崎潤一郎の名作変態小説を戦後の自由な時代になってから木村恵吾監督が映画化した。主演は京マチ子、宇能重吉で共演は森雅之。
あらすじ
女と付き合ったことのない堅物の譲治が若い女給ナオミと親しくなり、彼女を東京へ連れて帰る。譲治は理想の女性像を持っていて、それを実現しようと、ナオミにお稽古事を習わせる。
しかしナオミは熊谷ら不良たちと遊び歩いて、譲治を怒らせる。ナオミの誕生日に若い男たちと歩き回っているナオミをみて、譲治はやり切れない気持である。
鎌倉へ移りたいと言う譲治はナオミのため、部屋を借りナオミは海で遊び、譲治はそこから毎日会社へ通う。
しかしある日、ナオミは浮気現場を譲治に押さえられる。
ついにナオミは金づるの譲治と縁が切れた。しかし熊谷たちも金食い虫のナオミは負担だった。「いくら遊んでも、いつかまともな生活に帰るべき」と言われてしまい、ナオミは譲治の許へ帰る。
譲治はそんなナオミをなかなか許せなかった。しかし「馬にでもなるから許して」と、四つんばいになるナオミを見て、思わずよりを戻してしまう。
雑感
ラストが原作とは違う。原作ではナオミは譲治の許にふらりと戻って、いつの間にかよりが戻る。許しを乞わない。上映当時としては、最後ぐらい男に詫びる、素直な女でなければ世間が許さなかった。
1960年版で原作ラストを描くためには十一年を要した。
スタッフ・キャスト
監督 木村恵吾
原作 谷崎潤一郎
脚本 八田尚之 、 木村恵吾
企画 清水龍之介
撮影 竹村康和
配役
譲治 宇野重吉
ナオミ 京マチ子
熊谷 森雅之
浜田 島崎溌
関 三井弘次
中村 上田寛
田川 菅井一郎
杉本 近衛敏明
吉岡 清水将夫