健康維持のため、毎日近所を散歩していると、顔見知りになるが何頭かいる。
例えばキジトラ柄のタマ、この名前は勝手につけた。初めは警戒していたが、最近は声をかけても半分目を開けて寝たフリをしている。
この家の飼い猫シロが死んでしばらく経つので、次の猫を飼ったと思っていたが、この家の未亡人に尋ねると、違うそうだ。朝、可哀想に思い、餌をやったら、それ以来毎朝この家にたかりに来る癖がついたのだろう。毛並みが良いから、近所の飼い猫かもしれない。

この春、茶トラの双子を見つけた。まるまる太っていて、初めは飼い猫かと思った。二匹で身体をくっつけて暖め合っていた姿が忘れられない。
ところが、餌のことで喧嘩したのか仲違いしてしまい、二匹は行動を別にするようになった。一匹はまだ買い手の見つからない建売住宅の前を根城にしていたが、みるみる痩せて行き、ついに姿が見られなくなった。
もう一匹は行動力があり、我が家にまで現れた。ここでは飼えないので、隣に紹介したが目つきが悪いと言われて破談になった。彼もその頃には真っ当な野良になっていたのだ。やがて内猫が住む家の台所に押し入り餌を奪っていたが、これも夏の盛りに見えなくなった。涼しくなったら戻ってくるだろうか。

 

 

学校裏に向かう小道があり、庭の小屋の屋根にいつの間にやら黒白猫居ついている。ここのお婆さんの飼い猫らしい。お婆さんに年齢を聞こうと声を掛けたことがあるが、いつも黙って写真を撮っているせいか、無視された。この猫も寝そべっているだけで相手をしてくれない。
ところが、その日はいつもより遅れたらしく、散歩している時、ちょうど屋根に登ったところだった。至近距離で互いに目と目が合い、しばらく猫は固まってしまった。こっちは丁重な挨拶をして、笑顔で立ち去った。

 

 

その小道を曲がると川にぶつかる。川に行く手前のお宅に老夫婦が住んでいるが、ここも黒白猫を飼っていた。初めて会ったのは2年前だった。あまり通ることのない道だったので、きっとそこに何年も起居していたに違いない。以来、その道を度々通っては、話しかけ続けた。名前を家人が呼んでいるのを聞いたことがなかったので、海上保安庁アニメ「ハイスクール・フリート」に因んで、「五十六」と名付けた。

彼は老猫で苛められるのか足を引きずっていて毛並みも悪かった。初めは家の前に来る私を避けていたが、次第に私が家に入ってこないことを悟り、寝たふりをするようになった。それ以来、長い付き合いになった。
猫は犬と違って、距離感を持っている。一定の距離感を守れば攻撃や逃走することはない。猫にしても痛い足を引きずって逃げるのが、馬鹿馬鹿しいのだろう。しかし、たまに住処と違う場所で鉢合わせした時は、目を見開いて固まってしまった。

 

 

ところが猛暑だったこの夏、姿が見えなかった。9月の末になってふと覗いてみると、見知らぬキジトラが玄関先にチョコンと座ってこっちを見ている。かなり若く見えるが、何処かからもらわれてきたのか。すっかりなわばりを継承した感じだ。

 

 

どうやら、先住者は天国に旅立ったようだった。老猫にも今年の夏の暑さは耐えられなかったらしい。いつも予想はしていたが、その度にどっこい生きているぜと現れてくれただけに、今回はポッカリ心に穴が空いてしまった。

この辺りは飲食店が近くにあって夜中の猫の喧嘩が多いのだ。新人猫はまだ警戒心が薄いようだが、五十六のように外猫はいずれ厳しい生存競争に巻き込まれるだろう。日に日に猫の野生を取り戻すはずだ。

 

猫の代替わり

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