敗戦後15年経ったローマにおける不良たちの群像劇。
パゾリーニの原作、脚本を基にしてボロニーニが映画化した。
主演はローラン・テルズィエフとジャン・クロード・ブリアリだろう。共演は出番こそ少ないがロザンナ・スキャフィーノと、映画「ドナテッラ」でベルリン国際映画祭主演女優賞を受賞したエルザ・マルティネッリ。
東和はミレーヌ・ドモンジョ様を中心に派手な宣伝をしていたが、実質的に特別出演扱いだった。
あらすじ
ローマの夕暮れ時、夜の女たちが現われ始める。娼婦アンナ(エルザ・マルティネッリ)とスプリツィアが道を挟んで喧嘩を始める。ルゲレット(ローラン・テルズィエフ)とシンティローネ(ジャン・クロード・ブリアリ)は喧嘩を収めて二人を車で連れ出す。目的は女ではなく、警察の目を誤魔化して盗んだ銃を故買屋に売りやすくするため。なじみの故買屋へ行くが葬式中で追い返されるが、甥のベラベラがこの話に乗ってくる。
アンナとスプリッツァに紹介された買い手は聾唖だったが、第三の娼婦ニコレッタが通訳をしてくれて、現金十万リラをシンティローネたちは手にする。それから3組のカップルに別れて心置き無く楽しむが、男たちが車に乗り込むと、シンティローネが金を奪われたことに気付く。
肩を落とす三人組だったが、帰り道で出会った金持ちの息子三人組と気安くなり、そのうちのアキッラの家に行って飲む。ルゲレットが好奇心で部屋を開けると美しい女が寝ていた。分からぬままに彼はそのラウラ(ミレーヌ・ドモンジョ)という女を抱き、天にも昇る心地になる。
ベラベラがアキッレの財布を盗み、三人は逃げた。ルゲレットとベラベラが争ううちにシンティローネが奪って逃げる。彼はロッサナを原っぱで抱いた後にナイトクラブへ行くが、出禁になっていたので警察に突き出されてしまう。そこにルゲレットが現れ、金とロッサナを奪い取る。その後、二人は遊び回った。店を貸切にして、食べて踊った。夜が明けると、彼はタクシーで彼女を家まで送って帰る。
雑感
貧しいローマのチンピラ達はつるんで金品を盗むけれども、そこから仲間同士の奪い合いが始まり、最後に勝者が総取りする。その金もすぐ女と酒に使い果たして、明日からまたバトルロワイヤルが始まる。結局、金でさえ彼らの目的ではなかった。
ここに描かれているのは、ネオレアリズモ映画「靴みがき」や「自転車泥棒」の少年たちの「後の姿」だ。
でもイタリア人はどんなに希望を失っても、食べて飲んでセックスする。生きている限り刹那刹那で生を楽しんでいる。その点だけは日本人が見習うべきだろう。
青春映画としては、大島渚の「青春残酷物語」、ダニー・ボイルの「トレイン・スポッティング」などがあるが、これらは生死は別にしてネクストステップへ進むタイプ。ところが「狂った夜」は永遠にループが続くようで、余韻が強く残る映画だ。
エルザ・マルティネッリは実生活で妊娠していたようで翌年娘を出産している。映画でもお腹が出ているのがはっきりわかる。
スタッフ・キャスト
監督 マウロ・ボロニーニ
製作 アントニオ・チェルヴィ 、 アレッサンドロ・ヤコボニ
原作・脚本 ピエル・パオロ・パゾリーニ
撮影 アルマンド・ナンヌッツィ
音楽 ピエロ・ピッチオーニ
配役
ルジェレット ローラン・テルズィエフ
シンティローネ ジャン・クロード・ブリアリ
ロザンナ ロザンナ・スキャフィーノ
ラウラ ミレーヌ・ドモンジョ
アンナ エルザ・マルティネッリ
スプリッツァ アントネラ・ルアルディ
ニコレッタ アンナ・マリア・フェルレーロ
ベラベラ フランコ・インテルレンギ