(△)ジョン・C・チャンピオン(製作兼任)とエドモント・ノースの原案を、ドナルド・S・サンフォードとガイ・エルムズが脚色しウィリアム・A・グラハムが監督した英国潜水艦映画。
主演はハリウッドからジェームズ・カーンを招いた。
共演はデイヴィッド・サムナー、ノーマン・ボウラー、ブライアン・グリレス。
あらすじ
1943年、ボルトン中佐は英国海軍の潜水艦でドイツ戦艦リンデンドルフに果敢に立ち向かい撃沈されたが、ペニグトン、バーキスト、クェンティン、デイビーズと共に英国の海岸に泳ぎ着いた。ボルトンは、他の乗組員50人の命を失った責任を問われて査問会にかけられたが、無罪となる。さらに3隻の特殊潜航艇を使い、選抜した海軍兵士を特訓するようにレッドメイン中将に命令される。
ボルトンたちは、スコットランドの北海岸にある基地に集められ、フロッグマン同士の格闘戦を考慮した厳しい訓練を開始する。海中のネジを外す訓練中に二度までクェンティンが溺れそうになり、最後はボルトンに助けられる。翌朝、クェンティンは一人で再びネジ外しに挑戦し、成功する。
そこで、彼らの特訓の目的が明らかにされる。特殊潜航艇Xでの長旅になれることと、潜水艦防止ネットをペンチで切断して敵の制海域に侵入することである。
敵の偵察機が上空に出現したことにより敵は警戒を強め、ついにドイツ空挺部隊が送り込まれる。敵全員を射殺したが、味方も八人を失う・・・。
雑感
昔懐かしい英国の特殊潜航艇であるX艇をテーマにした映画だ。ロードショーでは観ていないが、たびたびテレビで見ていた。今回はDVDでのノーカット版を見た。テレビ版はかなり短くなっていて特に冒頭箇所が欠落しているが、大筋はノーカット版とあまり変わっていない。
ただし、リマスター版DVDと銘打っていたが、画質は良くなかった。
この映画は、1943年9月に実際に行われた作戦におおよそ基づいている。作戦の標的名称は戦艦リンデンブルク号でなく、また沈没させたわけでもない。この作戦ではX艇のXー6、Xー7がノルウェーの港に停泊中の戦艦「ティルピッツ」号を「大破」させたが、Xー5が犠牲になった。
この作戦で使われたのは、海底で爆発すると海上の艦艇の底を突き破るほどの強力な爆弾だったようだ。だから、水深の浅い湾内でしか使用できない。
英国のX級小型潜水艦は、フロッグマンの輸送など特殊な作戦にも使われた。
潜水艦としてはドイツ伝統のUボートが有名だが、特定潜航艇サイズのものは終戦間際にしか作られなかった。ドイツは、X艇に攻撃されるまで特殊潜航艇の有効性に気付いてなかったようだ。
日本は真珠湾攻撃から特殊潜航艇を多く利用していたが、戦況が不利になると回天などの自爆用特殊潜航艇を作り出した。日本人は伝統的に素潜りが得意だったが、アクア・ラングを付けるフロッグマンが作戦の主役になったことはあるのだろうか?
兵士は皆、イギリス人が演じていた。主役ジェームズ・カーンは、典型的アメリカ系ユダヤ人だが、一応英国連邦のカナダ人で英軍所属という設定だ。
スタッフ
製作、原作 ジョン・C・チャンピオン
監督 ウィリアム・A・グラハム
脚色 ドナルド・S・サンフォード、ガイ・エルムズ
原作 エドモンド・ノース
撮影 ポール・ビーソン
キャスト
ボルトン中佐 ジェームズ・カーン
レッドメイン中将 ルパート・デビス
デイヴィス大尉 デイヴィッド・サムナー
ゴーガン大尉 ウィリアム・ダイサート
ペニントン中尉 ノーマン・ボウラー
バーキスト上等兵曹 ブライアン・グリレス
クエンティン水兵長 ポール・ヤング
ウィリス少尉 ジョン・ケランド
***
この事件により、計画の実施が繰り上げられた。レッドメインは、ボルトンに目標がリンデンドルフだと告げた。
特殊潜航艇Xー1、Xー2、Xー3は、スコットランドからノルウェイのある湾に向かった。途中、機雷網に引っかかるが、ボルトンが自らフロッグマンとして機雷を取り除いた。
X艇は、リンデンドルフが停泊中の湾の入り口にネットが張られているのを発見する。フロッグマンがネットを切り取っている最中、敵のフロッグマント遭遇し、戦闘となるが、二人がかりで刺し殺す。そしてX艇は、湾内に侵入することができた。
しかし哨戒艇が魚雷を発射し、Xー2は撃沈した。Xー1もフロッグマンとして船外活動していたボルトンが気を失い、乗組員は全員拿捕された。乗組員はリンデンドルフ号に連行された。リンデンドルフの底に潜り込んだXー3の艇長デイビーズは、味方の兵士がいる戦艦を攻撃するのに躊躇する。Xー3に収容されていたボルトンが気付き、代わりに爆弾を発射した。Xー3は全速力で湾を脱出した頃、大爆発とともにリンデンドルフは撃沈した。