禁酒法でのギャングの抗争を描くフィルム・ノワール。
アル・カポネを取材していた新聞記者キュベック・グラスモン及びジョン・ブライト合作の原作をハーヴェイ・シュウが脚色し、ウィリアム・A・ウェルマン(「つばさ」でアカデミー作品賞受賞)が監督しデヴラクス・ジェニングスが撮影した。
主演はジェームズ・キャグニーで、この映画でスターダムに登り始める。
共演はジーン・ハーロウ、エドワード・ウッズ、ジョーン・ブロンデル、ベリル・マーサー、ドナルド・クック。
あらすじ
シカゴで育ったトムとマットは、悪党プティーそそのかされ悪事を働いていた。
2人はプティの指図で毛皮の窃盗を企てたが、失敗に終わった。しかしプティはいち早く消えて、2人を怒らせる。
貨物窃盗事件を起こしたトムとマットは匿ってくれたパディの下で働く。一方、トムの兄弟マイクは出征した。
一方トムは禁酒令により、政府に保管された酒を盗み出す仕事にマットととりかかった。
パディ一派はネイサンの部下となって酒を密造し始めた。
酒密造のライバルはバッグスである。
その後、頼みのネイサンが事故で亡くなる。
それを知ってバッグスは一気呵成に攻め始めた。
ある日、トムが母を訪ねるとマイクが戦地から傷病兵となって帰還した。
マイクはトムがヤクザに成り下がったことを責めるが、トムは何も言えなかった。
バックス一味は機関銃でマットをまず射殺する。
トムは単身敵陣へ殴り込んだが、撃ち合いになり重傷を負う。
マイクとトムは病院で再会し復縁するが、その夜、トムは死体となって自宅前に放置されていた。
雑感
アル・カポネ物語とは関係ないが、外伝的なお話。若くして出世しかけるが、禁酒法で殺された一人のギャングを描いている。
見た目にはそれほど怖くないが、実際の抗争は一般市民を巻き込んで手榴弾テロも行われており、凶悪なものだった。だから「民衆の敵」なのだ。
当時のキャグニーの演技はあまり怖くなくて薄口に感じる。それは舞台俳優でなく、ボードビリアン出身だからだろう。
家庭に居場所を失い、誘拐され惨殺されてしまうエンディングが恐ろしい。
前年に「地獄の天使」でデビューしたプラチナ・ブロンド、ジーン・ハーロウは後半だけの登場で最初の愛人を追い出し、新たな愛人の座に納まるだけだからあまり良い役ではない。
スタッフ・キャスト
監督 ウィリアム・A・ウェルマン
製作 ダリル・F・ザナック
原作 キュベック・グラスモン 、 ジョン・ブライト
脚色 ハーヴェイ・ショー
撮影 デヴラクス・ジェニングス
トム・パワーズ ジェームズ・キャグニー
グウェン ジーン・ハーロウ
マット・ドイル エドワード・ウッズ
マミー ジョーン・ブロンデル
パワーズ夫人(母) ベリル・マーサー
兄マイク ドナルド・クック
パディ ロバート・エメット・オコナー
ネイルズ・ネイサン レスリー・フェントン
パティ マレイ・キンネル