1930年から1934年まで暴れ回った連続強盗殺人犯ボニーとクライドの話に因んで、マッキンレー・カンターが書いた新聞小説を自ら脚本化してダルトン・トランボ(ミラード・カウフマン名義)が脚色したものをジョセフ・H・ルイス監督が映画化した作品。ボニー&クライドものとしては「暗黒街の弾痕」(ヘンリー・フォンダ主演、1937年)に続く第二作である。
あらすじ
子供ながらの銃マニアであるばかりに少年院に送られたバートは軍役を終えて故郷に帰って来る。久々に会った親友クライドとデイブに連れられて、カーニバルへ出掛けアニー・ローリーと運命的な出会いを果たす。彼女は射撃スターだったが、バートに射撃競技で敗れる。射撃ショーの主催者パケットは早速バートを採用するが、アニーとバートが出来てしまって駆け落ち結婚する。しばらくは蓄えで暮らしていたが、アニーは豊かな生活に憧れ二人で拳銃強盗を始める。初めは小さな店ばかりを狙っていたが、銀行強盗をやってみて豪奢な生活を楽しみ、その味が忘れられず食品会社の給料強盗をしでかす。その際、アニーが社員と警備員を射殺してしまう。アニーは以前パケットと強盗した折、一人射殺したことがあって前科一犯なのだ。とうとう連邦捜査局が出て来て全米に捜査線が広げられる。パケットが警察に犯人をばらしたため、指名手配になってしまう。
追い詰められたバートとアニーは故郷しか逃げる場所はなかった。姉の家にしばらく厄介になるが、親友クライドとデイブがやって来た。バートとアニーは思わず逃げ出して国立公園に潜入する。そこは子供の頃キャンプをしてよく知った土地だったが、それはクライブとデイブも同じだった。やがて周囲を包囲されてクライブとデイブが代表してバートたちの隠れ場所にやって来る。アニーは怒り狂って撃とうとするが、バートがアニーを射殺する。音に反応して一斉射撃が行われて、バートも倒れる。
雑感
なかなかのフィルム・ノワール作品だ。女が男を色仕掛けで操るというのは良くあるファム・ファタールだが、これは女が及び腰の男を引っ張って強盗殺人をするのだ。
この作品は1949年当時モノグラム・スタジオ配給のB級映画にも関わらず「Deadly is the Female」の原題でヒットした。
翌年ユナイテッドに配給権が移るとジョン・ドールを主演扱いにして「Gun Crazy」と改題されて拡大上映され再ヒットしたそうだ。
しかしこの映画の価値がわかるのに、もう少し時間が掛かった。
ペギー・カミンズに情を移せれば面白い映画だ。しかし彼女は可愛げない憎まれ役に徹して、当時の保守層がアメリカ映画に望むタイプではなかった。
ペギー・カミンズはウェールズ生まれのアイルランド人で、ダリル・ザナック(20世紀フォックス)に招かれたが、不本意な作品にしか出演できず英国に戻った。彼女には、少し時代が早すぎたのだろう。
映画の途中でパケットが元相棒アニーを新聞社に売るところがあったが、ボニー&クライドの物語でもクライドの元相棒レイモンド・ハミルトンが新聞にネタを売ったことがあった。
主演ジョン・ドールはブロードウェイ俳優だったが、映画界に呼ばれてデビュー作「小麦は緑」でアカデミー助演男優賞にノミネートされる。演技力は格段に上なんだが、作品に恵まれず45歳でこの仕事から離れて5年後に亡くなった。
スタッフ
監督 ジョセフ・H・ルイス
製作 フランク・キング 、 モーリス・キング
原作 マッキンレー・カンター 新聞小説「Gun Crazy」の映画化
脚色 マッキンレー・カンター 、 ミラー・カウフマン(ダルトン・トランボ)
撮影 ラッセル・ハーラン
音楽 ヴィクター・ヤング
作詞 ネッド・ワシントン
キャスト
アニー・ローリー ペギー・カミンズ
バート・テア ジョン・ドール (ロープ、謎の大陸アトランティス)
アニーの元の相棒パケット(パッキー) ベリー・クローガー
ウィラウビー判事 モーリス・カーノフスキー
姉ルディ・テア アナベル・ショウ
友人クライド・ボストン ハリー・ルイス
友人デイヴ・アリスター ネドリック・ヤング
ボストン保安官 トレヴァー・バーデット
ブルーイ・ブルーイ スタンリー・プレイガー