司馬遼太郎も初期は忍法帖を書いていた。と言っても、独特の無常感が漂う作品だ。
監督は若き工藤栄一。主演は大友柳太朗、東映時代劇初出演の大木実、高千穂ひずる。共演は河原崎長一郎、新人の本間千代子。
あらすじ
伊賀下柘植一族は豊臣秀吉の攻撃を受けてほぼ絶滅してしまった。生き残ったのは頭領と木猿、重蔵、五平らしかいなかった。彼らは秀吉への復讐を誓った。
10年後、五平は京都所司代前田玄以に石川五右衛門として寝返り、仕官していた。重蔵には豊臣方についた甲賀の摩利洞玄から送り込まれた刺客小萩が絡んでくる。しかし幾たびか刃を交わすうちに互いに惹かれていく。しかし頭領が豊臣と徳川の二股をかけていることを知った重蔵は山に帰り、頭領は摩利洞玄に殺され、配下の黒阿弥も洞玄と五平に殺される。
重蔵は山を降り、洞玄と対決しこれを倒すが、五平の毒手裏剣に侵され、小萩に助けを求める。
全快した重蔵は大阪城に秀吉暗殺のため忍び込むが、秀吉の寝言を聞いているうちにその気が失せてしまう。立ち去ろうとするとき、五平が追ってくるが逃げ去り、代わりに忍者装束の五平が侵入した犯人として処刑される。
重蔵は小萩を連れて、弟子の雲太郎と木猿の待つ山小屋へ帰っていく。
雑感
1999年に篠田正浩監督が撮った「梟の城」(主演:中井貴一、上川隆也、鶴田真由) は、時間が長く緊張がキレ気味になった。その点この工藤栄一作品は、一時間半にまとめてありながら、違和感が全くなかった。
主演大友柳太朗は滑舌が悪いが、立ち姿が好きな俳優だった。忍者装束は似合っていないが、侍姿なら錦之助、千代之助ら誰にも負けなかった。
大木実は松竹から他社に移り、若いうちは開き直って悪役に徹するつもりだったようだ。そしてそれは成功する。
本間千代子は時代劇になかなか適応しなかったが、東映アニメ「風の忍者フジ丸」の忍法コーナーのMCをやったりして、何かと忍者に縁があった人だ。
スタッフ・キャスト
監督 工藤栄一
原作 司馬遼太郎
脚色 池田一朗
企画 橋本慶一 、 三村敬三
撮影 鷲尾元也
音楽 鈴木静一
配役
葛篭重蔵 大友柳太朗
風間五平 大木実
小萩 高千穂ひづる
木さる 本間千代子
雲太郎 河原崎長一郎
下柘植次郎左衛門 原健策
黒阿弥 河野秋武
太閤秀吉 織田政雄
前田玄以 菅貫太郎
摩利洞玄 戸上城太郎
今井宗久 三島雅夫