フランスでは1956年秋に上映されたハッピーなクリスマス映画フランソワーズ・アルヌールとイタリア人ロベルト・リッソが「なりすまし」同士のカップルで、名優シャルル・ボワイエがキューピット役になる。カラー映画。

 

あらすじ

12月23日
パリのパレスホテルに滞在するドロルメル氏は足を痛めた振りをして妻マドレーヌをチューリヒのクリスマスパーティーに送り出す。ホテルの散髪屋から部屋にマニキュア娘(ネイリスト)を呼ぶと、貧しいが美しいフランソワーズがやって来た。ドロルメル氏はすっかり彼女を気に入ってしまう。
フランソワーズは帰りのエレベーターでブリニオンと名乗るイケメン実業家と出会い、つい見栄を張りホテルに滞在するドロルメル嬢だと名乗ってしまう。
12月24日
実はブリニオン氏というのは嘘で、貧しい自動車修理工ジェラールが故障したブリニオン氏の車を取りに来ていたのだ。彼はクリスマスにドロルメル嬢(フランソワーズ)を誘おうと、ホテルに電話を掛ける。ドロルメル氏は何のことか分からなかったが、フランソワーズを再び呼んで問い質すと、正直に告白した。彼女を愛人に狙っていたのに、娘になりすますとは呆れ果てる。しかし彼女に恩を売ろうと、今晩のクリスマスパーティにフランソワーズ、ジェラールと共にジェラールの乗った車で出かけることにする。ジェラールは修繕が終わり納車するためブリニオン氏の車に乗ってきたのだが、なかなか言い出せず無断借用してしまう。気が付いたブリニオン氏はカンカンで早速警察に訴える。パーティーは三人で盛り上がるが、フランとジェラールは抜け出してミステリーバスツアーに乗り込む。
置いて行かれたドロルメル氏は独り身の女性を引っ掛け、ジェラールが乗ってきた車で出かけるが、早速警戒中の警察に捕まってブタ箱行きだ。
12月25日
すっかりクリスマスを満喫したフランとジェラールだったが、部屋に帰ると現実が待っていた。暗い気持ちでフランは借りていたドレスをドロルメル氏に返しに行く。
ドロルメル氏は、どう誤魔化したのかチャッカリ釈放されていた。初めはフランに怒っていたが、しょげた顔を見ると可哀想になってくる。一緒に昼食を摂る約束をし、フランが風呂に入っていると、ジェラールがやって来て、ドロルメル氏に対して正体に告白すると、クリスマスだけにドロルメル氏も寛大になり、一緒に二人で昼食を摂って今後のことをじっくり話し合えと言って、自分は出かけて行く。

 

 

雑感

 

雑感
クリスマスキャロル的な、おとぎ話だ。1956年にはまだこんなのどかな映画が作られていた。そうでなければ、ジェラールは窃盗罪で訴えられるレベルだった。
背景にはフランスの身分階級がある。フランとジェラールは同じ世界の人間だったのに、お互いに上流階級になりすましてしまった。でもそれが為に、一生に一度の素晴らしいクリスマスを迎えられた。そして翌日、その夢から覚めるが、それでも二人は同じ階級で結ばれる運命だった。
この映画で注目すべきは、オヨヨ大統領が登場することである。ドロルメル氏が入れられたブタ箱に、自分をオヨヨ大統領と思い込む狂人がいる。凶暴ではなく、「ビバ、オヨヨ」と称賛すると機嫌が良い。ドロルメル氏は連絡先を交換したのか、翌朝オヨヨからホテルの電話に掛かってきてフランが取ってしまう。フランはドロルメル氏の言う通り「ビバ、オヨヨ」と大統領を称賛する。
実はこれが「オヨヨ」と言うギャグの語源であり、映画原作や脚本を多数執筆している小林信彦が使ってたんだが、それを若かった桂三枝(現在の文枝)が利用して謝罪させられたことがある。
一つ残念なことは相手役のリッソに格が感じられなかったことだ。イタリアも資本を出していたから仕方がないが、もう少し上手い俳優ならもっと良かった。

スタッフ・キャスト

 

監督 アンリ・ヴェルヌイユ
脚本 シャルル・スパーク、アンリ・ヴェルヌイユ
音楽 ポール・デュラン
撮影 フィリップ・アゴスティニ

出演者
フランソワーズ・アルヌール
シャルル・ボワイエ
ロベルト・リッソ

 

 

 

幸福への招待 Paris, Palace Hotel 1956 フランス・イタリア合作映画

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