悪夢を見るような話だ。カフカが生前に未発表だった不条理長編小説(未完)をオーソン・ウェルズが現代風に大きくアレンジした作品。未完というが、途中の部分が完成していないだけで結末部分は出来上がっている。

あらすじ

銀行の管理職Kはある日突然「逮捕」される。その逮捕の理由がよく分からない。さらに拘束もされない。就業時間後に開かれた審理に出席するが、裁判官はKの身分も心得ていない。

叔父のマックスに紹介された弁護士ハスラーと会うが、全くやる気はないどころか検察と通じている風だ。相手にされないKは、ハスラーの元にいた愛人レニという女と関係を持つ。ハスラーは役所に顔がきくテイトレリという画家を紹介してくれたので、ペントハウスに住む彼のところへ行く。しかし何故か少女の一群にもみくちゃにされただけで何も得るところは無かった。

知らぬ間にKは裁判所に戻ってきた。何か宗教的な建物があり、誰かがKの有罪を宣する。するとKは私服刑事に荒野に連れ出され、穴に放り込まれて爆殺される。

この映画を見ていて、夢そのものだと感じた。現実的な悪夢だ。フロイトの夢判断よりリアリティが高いと思う。ただ夢とは多分に主観的なものだから、人によってはこういう悪夢にリアリティを感じないかもしれない。

大胆な演出方法と映像を使って、カフカ(執筆は1914年ごろ)を現代に蘇らせた。オーソン・ウェルズは本当にただ者ではない。

映画オリジナルであるドカーン・エンドはこの映画が最初なのか?日本でも外国でも多用された手法だが、どうなのだろう。

夢の中で良いことが起きたためしはない。ごくたまに良いことがあっても、目がさめると何かを漏らしているのがオチ。

 

監督 オーソン・ウェルズ
製作 アレクサンドル・サルキンド
原作 フランツ・カフカ
脚色 アントワーヌ・チュダル 、 オーソン・ウェルズ

この作品ではとくにアンソニー・パーキンスの好演を讃えたい。不安な現代人を象徴していた。ヒッチコック監督の「サイコ」ノーマン・ベイツみたいだと言う人もいたが、人間関係が希薄で単に不安な若者像を作り上げた。主人公よりも周囲がサイコの集まりなんだ。

女優陣に関しては、何故にこんな大物を使うのかわからなかったが、オーソン・ウェルズ人脈らしい。それぞれに印象的な役柄であり、出演時間も割に短い。制作側から見たコストパフォーマンスとしては、美味しい出演だった。

配役
ジョセフ K.  アンソニー・パーキンス
バーストナー夫人  ジャンヌ・モロー
レニ  ロミー・シュナイダー
弁護士ハスラー  オーソン・ウェルズ
ヒルダ  エルザ・マルティネッリ
グルバオ-夫人  マドレーヌ・ロバンソン

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審判 (オーソン・ウェルズ監督) 1963 フランス・イタリア・西ドイツ

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