日本版スター・ウォーズ。
月と地球を舞台に地球人の宇宙ロケットが異星人の宇宙船と戦う空想科学映画だ。
高田稔が「皇国の興廃この一戦にあり!」というニュアンスで地球軍に号令をかけていた辺り、日露戦争や太平洋戦争そのものだったから、国際的に問題あるんじゃないかと思ったが、どうせ訳される時、意味を変えられたのだろう。
「地球防衛軍」に続いて東大卒で航空自衛隊幹部の丘美丈二郎が原案を書き、関沢新一が脚本にして、本多猪四郎が監督した。特技監督は円谷英二
 
併映は「サザエさんの脱線奥様」。

あらすじ

 
何者かに鉄橋が空中につり上げられ、特急が谷底に落下事件が起った。世界各国でも反重力事件が発生した。東京の宇宙科学センターに集った世界の科学者たちの前で安達博士の弟子勝宮は「冷却砲」によって反重力状態を人工的に作る異星人の仕業と断定する。冷却砲に対抗するのは、「熱線砲」だけである。
ところが、熱射砲の実験の席上アーメッド教授が「熱線砲」を奪おうとしたが、科学者の抵抗で失敗する。すると円盤が現れて光線で教授を消し去った。

 
月の裏に敵宇宙人ナタールの基地があることがわかった。月へ旅立つ最後の夜、勝宮の同僚岩村が洗脳される。
原子力ロケット・スピップ二機が「熱線砲」を積んで出発した。安達博士、勝宮、岩村、白石江津子がそれに乗りこんでいた。勝宮と江津子は公然と愛し合って熱々だった。スピップ一号と二号は月に到着し、敵基地に攻撃する。勝宮と江津子は小人みたいなナタール人に襲われるが、熱線銃で倒す。そして基地の中心部に大ダメージを与えることに成功する。
だが既にスピップ一号は岩村の手で壊されていた。二号機も宇宙船の攻撃を浴びる。しかし敵中枢を叩いたことにより元に戻った岩村が、スピップ二号の代わりに敵の攻撃を引き付けて最後は撃たれて死ぬが、その間にスピップ二号は月から脱出に成功する。
地上に戻った安達博士は、ナタールに対して総攻撃をかけるため、世界中の産業力を使って攻撃用ロケットを大量に作る。そして敵が態勢を整えて、再攻撃を掛けてくると、全機で迎撃する。ニューヨークや東京の日生劇場も冷却砲で破壊されるが、最後は地球人類が勝利を収める。

 

雑感

 
最後の終わり方が呆気なかった。月基地で敵を全滅させれば分かりやすかったのに、地球上で敵を倒しても、第二陣が来るかもしれない。その割に戦後の検証が甘い。

 
当時は東宝文芸映画が少なくなり空想科学映画に活路を見いだそうとする池部良が主役で、その師安達博士役は「美女と液体人間」「大怪獣バラン」に続き千田是也が演じている。ヒロインはエキゾチックな安西響子だ。

 
映画の中で日立 HIPAC用のプリンタを使っていた。このコンピュータは、論理回路にトランジスターを使ったコンピュータではなく、四年生の時の恩師後藤英二先生が作ったパラメトロンという素子を使ったコンピュータ HIPACの付属ラインプリンタだ。ただし当時HIPACはまだオーダーメイド機しかなくて1960年になってから市販されるから、おそらく宣伝用だろう。
 
物理学的には、絶対零度で重力ゼロは間違いである。

スタッフ・キャスト

監督  本多猪四郎
製作  田中友幸
原作  丘美丈二郎
脚色  関沢新一
撮影  小泉一
光学撮影  荒木秀三郎
特技監督  円谷英二
音楽  伊福部昭

 
配役
勝宮  池部良
白石江津子 安西郷子
安達博士  千田是也
岩村  土屋嘉男
有明警部  村上冬樹
リチャードソン博士 レオナルド・スタンフォード
インメルマン博士  ハロルド・コンウェイ
アーメッド教授  ジョージ・ワイマン
小暮技師  伊藤久哉
シルビア  エリス・リクター
岡田隊員  桐野洋雄
戦闘ロケット隊々長 野村浩三

宇宙大戦争 Battle in Outer Space 1959.12 東宝作品

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