チェーザレ・パバーゼの原作小説「孤独な女たちの中に」をスーゾ・チェッキ・ダミーコ、アルバ・デ・チェスペデス、ミケランジェロ・アントニオーニが共同脚本を書き、アントニオーニが監督した。
主演はエレオノーラ・ロッシ・ドラゴ。
ヴァレンティナ・コルテーゼ、イヴォンヌ・フルノー、マドレーヌ・フィッシャー、アンナ・マリア・パンカーニ、ガブリエレ・フェルゼッティ。
ヴェネチア国際映画祭の銀獅子賞、イタリア映画祭の銀リボン監督賞、撮影賞、助演女優賞(ヴァレンティナ・コルテーゼ)などを受賞した。白黒映画。
あらすじ
洋装店支配人クレリアは、トリノに支店を出すために出張してきた。しかし大工たちは、サボってばかりで仕事は進んでいない。
疲れてホテルに帰ると、隣室でロゼッタという娘が自殺未遂を起した。幸い、生命に別状はなかった。この事件のおかげで、四人の同世代の女友達と知り合う。
ロゼッタの自殺未遂は、友人ネネの夫ロレンツォに肖像画を描いてもらううちに、恋心を抱いたためだった。ネネは陶芸家であり、ロゼッタの気持ちを知りながら黙認していた。
クレリアは店の建築工事を仕切っていた大工のカルロに憑かれた。回復したロゼッタに、クレリアはうちで働かないかと尋ねる。
ロレンツォは、絵の個展を開いた。しかし一枚も売れず、その代わりネネにニューヨークで個展を開こうと芸術界の大物から声がかかった。それを聞いてロレンツォは、ネネと別れるしかないと思い、ロゼッタに優しい声をかけた。ロゼッタは、それを本気にしてしまう。友人モミナも面白がってロゼッタを煽る。クレリアは、モミナやロゼッタが所属する上流社会の闇を感じた。
その夜、ロゼッタはロレンツォの心がやはりネネにあることを知る。彼女は走り去り、そのまま港から入水自殺する・・・。
雑感
ミケランジェロ・アントニオーニ監督にしては、まだ初期でわかりやすい映画だ。製作者が、うるさかったのだろう。そのおかげで、ヴェネチア国際映画祭・銀獅子賞を受賞した。
1960年代の「愛の不毛映画」シリーズに移ってからは、難解さを増した。
相関関係がわかりにくかったと思うが、ロレンツォとネネ、ロゼッタの三角関係が初めにあって、クレリアとカルロの関係が映画の中で生まれる。ネネとロゼッタは、一応友人なのだが、こうなってから、ギクシャクしている。
そしてロレンツォが遊びの域を超えてロゼッタを傷つけてしまい、ネネに泣きつくわけだ。
クレリアは仕事柄、上流階級と付き合いがあるが、トリノで育った下町っ子である。地元の大工カルロとも付き合うが、支店の立ち上げが終わると、ローマ本店に帰る。
エレオノーラ・ロッシ=ドラゴは、3年後の映画「激しい季節」と比べるとポッチャリしている。実年齢は、30歳ぐらいの頃だ。
青春真っ盛りに一番楽しいはずの時代を、戦争で台無しにされた世代で、戦後演技に興味を持ち、1949年に初映画出演を果たした、遅咲きの女優だ。
当時、30歳のイタリア人キャリアウーマンは、華やかな世界での成功体験があるから、結婚することに抵抗を感じていたようだ。
成功していなければ、とっくの昔に結婚していただろう。
この作品は、複数の女性視点から見た映画になっていて、なかなか面白い。フランス映画「女ともだち」日本のドラマ「女ともだち」などフォロワーも多くて、例えば映画「ベストフレンズ」や中森明菜主演のドラマ「素顔のままで」なども、この亜流と言える。
さらに男性陣が女性に負けずに自己主張を始めると、明石家さんま、大竹しのぶ主演ドラマ「男女七人夏物語」や映画「セント・エルモス・ファイヤー」へと広がっていく。
アントニオーニ監督は、ヌーヴェルバーグの創始者だけではなくて、「女性の友情」をテーマにした映画を撮った先駆けであったのだ。
スタッフ
監督、脚本 ミケランジェロ・アントニオーニ
製作 ジョヴァンニ・アデッシ
脚本 スーゾ・チェッキ・ダミーコ、アルバ・デ・チェスペデス
原作 チェーザレ・パバーゼ
撮影 ジャンニ・ディ・ヴェナンツォ
音楽 ジョヴァンニ・フスコ
キャスト
エレオノーラ・ロッシ=ドラゴ クレリア(服飾店支配人)
エットーレ・マニ カルロ(大工)
ガブリエレ・フェルツェッティ ロレンツォ(画家)
フランコ・ファブリッツィ チェザーレ・ペドニ(建築家)
ヴァレンティナ・コルテーゼ ネネ(ロレンツォの妻)
イボンヌ・フルノー モミナ・デ・ステファニ(有閑マダム)
マドレーヌ・フィッシャー ロゼッタ(ロレンツォの愛人)
アンナ・マリア・パンカーニ マリエラ(若い娘)
ルチアーノ トニ(マリエラの婚約者)
マリア・ガンバレッリ クレリアの雇い主(ローマ本社長)
***
クレリアは客の前でモミナが無責任に言ったことを罵倒する。クレリアは、会社を辞める覚悟ができていた。もし良ければ、カルロと結婚して、故郷の町トリノで暮らそうと考えた。
だが、経営者は寛大にも、彼女をローマで働いてもらいたいと声を掛ける。彼女の気持が大きく揺れたが、やはり仕事しか自分の生きる道はなかった。
クレリアは、カルロに別れの挨拶をしたいから、列車を見送りに来てと言った。しかし、出発時間なのにカルロは姿を現さない。彼女は、列車から身を乗り出して、カルロを探した。
カルロは、見つからぬように物陰から彼女を見送っていた。