2003/10/11(Sat) 22:20
製作 田中友幸 菊島隆三
監督 黒澤明
脚本 小国英雄 菊島隆三 久板栄二郎 黒澤明
原作 エド・マクベイン 「キングの身代金」
撮影 中井朝一 斎藤孝雄
音楽 佐藤勝
配役 :
権藤金吾 三船敏郎
戸倉警部 仲代達矢
権藤の妻伶子 香川京子
権藤の秘書河西 三橋達也
捜査本部長 志村喬
竹内 山崎努
会社の乗っ取りを画策する重役権藤の元に、誘拐犯から電話が掛かる。彼の一粒種の子供を誘拐したという。しかしそれは人違いで、運転手の子供だった。
権藤は大事な金を他人の子供のために使えないと、ごねる。しかし最後は断腸の思いで会社のことを諦め、金を出すことにした。
金を詰める鞄に細工をする段になって、権藤は昔取った杵柄で腕をふるう。この金を誘拐犯に渡せば、再び職人時代に逆戻りだった。
特急電車に乗り込んだ権藤に誘拐犯から連絡が入る。
「鉄橋の袂で、子供を見せるから、金の入った鞄を車外に捨てろ。」
身代金は持ち去られたが、子供は無事帰ってきた。警察は何とか犯人グループの写真と8ミリを撮った。警察では捜査会議が行われている。犯人への手がかりがわずかながら集まり始めていた。
子供は、自分が誘拐されていた場所が江ノ電沿いだと気づく。しかしそこには二人の男女の死体が。焼却所から美しいピンクの煙が出てきた。警察が例の鞄に仕込んだトリックだった。主犯がとうとう動き出した。
<感想>
三船は下手だと言った人がいるが、下手じゃなきゃ、こんな凄い芝居はできない。
泣かせるところはいっぱいあった。
仲代達也は巧いが、見せ場としては可もなく不可もなく。
デビュー作の山崎努は下手じゃないけど、巧くもない。若い芝居だ。
この映画での捜査会議の絵が好きだ。
色々な映画で捜査会議は取り上げられているが、「天国と地獄」のそれは中でも秀逸である。
戦後、貧しいだけの日本から脱却し、貧富の差が現れた。
高台の家に対する平民の複雑な感情。
クーラーのある家、ない家の差も大きい。
しかし医者なら頭使って、金儲けすれば良かったのに。
医者が大きなリスクを背負い、こういう犯罪を犯す感覚がわからない。
まあ要するに気違いだったのだろうな。
昭和38年頃の横浜の風俗として、ヘロイン窟があったんだなあ。
何か19世紀末、シャーロック・ホームズのロンドンみたいだった。
この映画の最大の失敗は、特急運転席から撮影するところで、なぜ捜査側は「高速度撮影」つまりスローモーションで撮影しなかったのかと疑問と不満を述べたい。そうする事によって更に状況(風景は無論、被疑者状況、逃亡用車両の状況)が良く分かるはずだ。少々フィルム撮影の経験者(私でさえ)なら考える手法で珍しい技法ではないのに。つまり白鳥が水面から飛び立つ際にスローで撮れば水滴から何から何までディテールが良く分かる、あれと同じだ。巨匠も弘法の筆の誤りあるんだな。