ポアロシリーズで、「杉の柩」に続いての女性ドラマである。個性的な美女がたくさん出てくる。
また今度は回想殺人劇であり、脚本家の力量が問われる。ドラマは回想シーンとインタビューシーンを並べるため、事態がわかりやすい。撮影では定番になったが、セピアカラーのハンディ風カメラを用いている。
しかしわかりやすいからと言って、出来がいいとは限らない。新ミス・マープル「スリーピング・マーダー」の後の作品ということで、「スリーピング・マーダー」より多少複雑な重層構造を持っている。しかし「スリーピング・マーダー」の単純明解さも捨てがたい。
あらすじ:
ルーシー・クレイルと名乗る若い女性がエルキュール・ポワロの前に現れ、14年前(原作では16年前。時効の関係で変えたのか?)、父アミアスが毒殺された事件を再捜査してほしいと依頼する。彼女の母キャロラインは、その事件で有罪となり処刑されていた。犯罪にかかわった可能性があるのは五人だけ。ポワロは一人一人を訪ねて、事件を再構成していく。
ルーシー・クレイル(原作はカーラ・ルマルション)役は、美しき両足義足のアスリート兼ファッションモデルであるエイミー・マリンズである。”Aimee Mullins”で検索すれば写真を見ることが出来る。メイクアップでは恐ろしいほど綺麗だが演技力は?である。彼女を起用したのは失敗ではないか。
その亡き母親キャロライン(カロリン)役はレイチェル・スターリングだ。本作品のバリバリのヒロインであり、なかなかチャーミングな女優である。最初のシーンが特に重要だ。彼女は、新しいミス・マープル・シリーズ「牧師館の殺人」で牧師夫人グリゼルダを演じている。
父の愛人エルサ役には、年増だが目が印象的な美人女優ジュリー・コックスを配する。若作りした回想シーンより年相応の現代シーンの方が良かった。家族同様の集まりの中で波風を立てる、アンチヒロインの役割だ。アミアスと恋に落ちたはずだった。
片目の潰れた叔母アンジェラ役はソフィー・ウィンクルマン(若き日はタルラ・ライリー)である。彼女は幼い頃キャロラインに目を潰された。キャロラインはそのことを一生心の重荷としていたが、それがこの事件の鍵だ。
家庭教師ウィリアムズ役はジェマ・ジョーンズ(「ブリジット・ジョーンズの日記」の母親役で有名)が演じている。家庭教師としてはアンジェラやルーシーのことを今も大切に思っている。しかしこれほどの人を使って、この役どころでは物足りない。
男性陣ではアイルランド人のアイダン・ギレンが夫アミアスを演じていた。バイセクシャル的な魅力でストーリーに新しい解釈をもたらした。アレック・ボールドウィンのような男前だが、演技力も伴っている。
ドラマとしては、もう少し回想シーンを増やして、最後の容疑者全員の集合シーンまでポワロは出てこない方が良かったのではないかな?女性心理ものでは、男性探偵は必要以上に表に出さない方がいい。
一回目に見たときは心理小説を本格推理小説のように扱っていると思ったが、二度目の観賞で脚本家の力量の程がわかった。
フィリップがホモであること。若いエルサがうぬぼれて、アバンチュールを本気だと勘違いしていたこと。アミアスとキャロラインは恋の駆け引きを楽しんでいたこと。キャロラインがある人を疑っていたこと。これらを短い間に視聴者に対してきちんと匂わせている。心理ミステリだと思っていた原作を、見事に本格風ミステリドラマに仕上げた。
とはいえやっぱり状況証拠しかないのだ(笑)
僕だったら、もう少し女性心理を強調する脚本を書いたと思うが、これはこれでいい。
スタッフ
脚本 ケビン・エリオット(次回作は「ナイルに死す」)
演出 ポール・アンウィン
撮影 マーティン・フューラー
制作 マーガレット・ミッチェル
原作 アガサ・クリスティ
キャスト
ポワロ(ベルギー人の探偵)デビッド・スーシェ
ルーシー(事件の依頼人) エイミー・マリンズ
エルサ(父の愛人) ジュリー・コックス
キャロライン(母、死刑になった) レイチェル・スターリング (声:萩尾みどり)
アミアス(毒殺された父) アイダン・ギレン (声:松橋 登)
アンジェラ (片目を潰した母の異母妹) ソフィー・ウィンクルマン
フィリップ (父の幼なじみ、弟でホモ) トビー・スティーブンス
メレディス(父の幼なじみ、兄) マーク・ウォーレン
ウィリアムズ (家庭教師) ジェマ・ジョーンズ (声:八木昌子)
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☆
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名探偵ポワロ
『五匹の子豚』
?
(ハヤカワ・ミステリ文庫より)
目次
まえおき
カール・ルマルション嬢の訪問
第一部
1. 弁護人の話
2. 告訴弁護人の話
3. 青年弁護士の話
4. 老弁護士の話
5…
五匹の子豚(名探偵ポワロ)
NHK-BSホームページ
あちこちで台風の被害が聞こえてきますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回は、無事に見ることができました。早速本題に入ります。
『五匹の子豚』 FIVE LITTLE PIGS
ポワロは21歳になったばかりの美しい娘ルーシー・クレイルから依頼を受ける。14年前、夫殺しの罪で死刑になった母の無実を明かして欲しいというのだ。この事件には、夫妻の幼なじみの兄弟、夫の愛人エルサ、妻の異父妹とその家庭教師の5人がかかわっていた。
この題名はマザー・グースから採っているん…
五匹の子豚(名探偵ポワロ)
NHK-BSホームページ
あちこちで台風の被害が聞こえてきますが、皆様いかがお過ごしでしょうか?
今回は、無事に見ることができました。早速本題に入ります。
『五匹の子豚』 FIVE LITTLE PIGS
ポワロは21歳になったばかりの美しい娘ルーシー・クレイルから依頼を受ける。14年前、夫殺しの罪で死刑になった母の無実を明かして欲しいというのだ。この事件には、夫妻の幼なじみの兄弟、夫の愛人エルサ、妻の異父妹とその家庭教師の5人がかかわっていた。
この題名はマザー・グースから採っているん…
『5匹の子豚』 名探偵ポアロ
この夏のNHKからの最大の贈り物、第三話。
冒頭のシーンがとても印象的。
14年間、犯人以外、誰も疑わなかった真実をあばくポアロ。ただ、演出としては、ちょっと退屈でした。特に5人へのインタビュー。同じシーンをそれぞれがどのように見ていたのかを描くのだから、シーンがかぶるのは仕方がないのかもしれないけれど。
それから、エルサ役の目のメイクも怖かった。猫娘のようで(笑)
とても美人とかいう印象ではない。それとも、当時の流行のメイクだったのだろうか。そうなんだろうな、やっぱり。
…
『5匹の子豚』 名探偵ポアロ
この夏のNHKからの最大の贈り物、第三話。
冒頭のシーンがとても印象的。
14年間、犯人以外、誰も疑わなかった真実をあばくポアロ。ただ、演出としては、ちょっと退屈でした。特に5人へのインタビュー。同じシーンをそれぞれがどのように見ていたのかを描くのだから、シーンがかぶるのは仕方がないのかもしれないけれど。
それから、エルサ役の目のメイクも怖かった。猫娘のようで(笑)
とても美人とかいう印象ではない。それとも、当時の流行のメイクだったのだろうか。そうなんだろうな、やっぱり。
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