人気の梶芽衣子を当時の映画会社が取り合いになった。銀蝶シリーズ以来、東映に草鞋を脱いでいたが、「女囚さそり」をプログラム・ピクチャーにする路線が気に入らず、フリーになり東宝と出演契約を結ぶ。そして東宝にとっても珍しいタイプの映画を撮る。
『修羅雪姫』(しゅらゆきひめ)は小池一夫原作、上村一夫作画による漫画で週刊プレイボーイにて連載された。それを原作とした映画である。明治時代の日本を舞台にした「るろうに剣心」のような剣劇。この映画を観たクエンティン・タランティーノが大きな影響を受け、2003年に監督した『キル・ビル Vol.1』の中で、この作品へのオマージュを捧げた。
監督は日活で梶芽衣子を起用して「野良猫ロック」シリーズを撮ったことがある藤田敏八、原作は小池一夫、上村一夫(作画)、脚本は長田紀生。
主演はもちろん梶芽衣子、共演は黒沢年男、敵役は地井武男、仲谷昇、中原早苗、岡田英次。
あらすじ
明治の中頃、殺し屋である雪は傘の柄に仕込んだ刀で、暗黒街の実力者柴山源蔵を暗殺した。その後雪は東京の外れの乞食集落に松右衛門を訪ねた。松右衛門と抗争していた柴源を殺害した見返りに、組織を動かして竹村伴蔵、塚本儀四郎、北浜おこのの行方を探索させるためだ。
明治6年、日本では国民の徴兵令が布告されたため、一家の働き手である農民の一揆が相次いだ。この布告を利用し、金を出せば徴兵免除になると、村人を騙した竹村、塚本、おこの、正景徳市の四人は、都会から白い服を着た男が現れたら徴兵吏だから通報せよと申し渡してあった。小学校教師の鹿島剛、妻の小夜と息子の司郎が赴任してきたが、夫と子供を殺し、小夜を回した。一味はバラバラに逃げたが、徳市は小夜を離さず、女郎屋を開いて働かせ、夜は抱いたが、ある夜油断したところを殺される。やがて逮捕され無期徒囚となった小夜は看守を誘い日夜セックスをしてようやく子種を得て、娘を出産し、産後の肥立ちが悪くて亡くなる。彼女は3人への恨みを雪に伝えて、同房女囚に見守られて息をひきとった。お雪は出所したお富にひきとられ、僧侶道海のもとで必死の修業をつんだ。
竹村伴蔵の行方が知れた。竹村は娘小笛と二人で貧しい生活をしていた。小笛はヤクザ浜勝のもとで女郎になって、生活費を稼いでいた。お雪は浜勝一家に草鞋を脱ぐ。そして初めて竹村と会い、お雪は復讐を果たした。竹村が自殺したことにして、お雪は小笛を東京のお菊のもとへ逃がした。
塚本儀四郎はすでに死んでいた。恨みを晴らせない悲しみで、お雪は塚本の墓前の花を斬る。それを新聞記者足尾竜嶺は見ていた。彼は、道海からお雪について取材して、小説「修羅雪姫物語」を新聞に連載した。だが竜嶺は、事実無根の小説を書いたと巡査に連行された。それは偽巡査だった。おこのは料亭の女将になっていて、彼らを雇ったのだ。竜嶺はおこのの後ろ盾を見て、愕然とした。お雪は竜嶺を救出したが、おこのはあっさり首を吊った。しかし竜嶺は父の塚本儀四郎が生きていて、おこのを殺し他ことを知っていた。
塚本は、鹿鳴館を舞台にして軍部のための商人となっていたのだった。お雪と竜嶺は鹿鳴館に乗り込んだ。竜嶺は塚本を狙って逆に刺されるが、お雪の白刃は、二人を串刺しにした。全てが終ったが、茫然とした雪を小笛が刺す。ずっと親の恨みとしてつけ狙っていたのだ。
雑感
東宝には珍しく、血飛沫がやたらと上がる映画。黒沢年男が登場しなければ東宝作品と分からない。
華奢な梶芽衣子を非常に綺麗に撮れている。少しイチャモンをつけると、大映「濡れ髪牡丹」で魅せた京マチ子の傘を使った剣劇の方がカッコ良かった。
中田喜子のくだりを編集で端折ったため、わかりにくくなっている。
スタッフ
製作 奥田喜久丸
原作 小池一夫 、 上村一夫
脚本 長田紀生
監督 藤田敏八
撮影 たむらまさき
音楽 平尾昌晃
美術 薩谷和夫
キャスト
鹿島雪 梶芽衣子
母鹿島小夜 赤座美代子
赴任教師鹿島剛 大門正明
息子鹿島司郎 内田慎一
三日月お寅 楠田薫
タジレのお菊 根岸明美
道海和尚 西村晃
乞食の元締松右衛門 高木均
一味の首領塚本儀四郎 岡田英次
北浜おこの 中原早苗
竹村伴蔵 仲谷昇
正景徳市 地井武男
記者足尾竜嶺 黒沢年雄
敵伴蔵の娘小笛 中田喜子
柴山源三 小松方正