休暇でニューヨークへやって来た兵士と若い女性が偶然出会い翌日には恋に落ちて結婚して、その翌日また兵士が戦地へ赴くまでの二日間を濃密に描いている。
主演はジュディ・ガーランドで初の歌わない主演作。相手役はロバート・ウォーカーで共演はジェームズ・グリーソン夫妻。
ポール・ギャリコ&ポーラ・ギャリコの原作を、この後ジュディと結婚するヴィンセント・ミネリが監督している。白黒スタンダード作品。
これをカラー化したビデオ。
あらすじ
田舎者のジョー・アレン伍長は戦時中に48時間の休暇を貰い、初めてニューヨークを訪れる。通路で佇んでいると帰省から戻ってきたアリスのヒールを引っ掛け、折ってしまう。ジョーは靴の修理屋を無理に開けてもらって、ヒールをくっつけて貰う。ジョーはアリスにニューヨークを案内してもらい、セントラル・パークとメトロポリタン博物館を見学する。ジョーはアリスを今晩も食事に誘う。アリスは出会ったアストル・ホテルの時計下を待ち合わせ場所に指定する。
アリスが部屋に帰ると、ルームメイトのヘレンが恋人エドと出かけるところだった。ヘレンは保守的な娘で休暇中の軍人と付き合っても、それは単なるナンパであり遊ばれるだけだから止めておけと忠告する。アリスは大いに迷うが、結局着飾ってアストル・ホテルに出かけてしまう。
ジョーとアリスはホテルで食事するが、時間が経つのは早いものでアリスは最終バスを逃してしまう。そこに通りかかったのが牛乳配達のトラックだった。運転していたのは気の良い男アル・ヘンリーで二人に牛乳配達の現場を見せてやろうと言う。ところがパンクしてしまい、立ち寄った夜間食堂で酔っ払いに絡まれ、アルは負傷する。
ジョーとアリスは気分の悪いアルのために代わりに牛乳配達を引き受ける。気が付くと明るくなる前に配り終わっていた。アルは感謝して二人を自宅に招待する。ヘンリー夫人は賑やかで気の良い夫人だった。二人は、結婚するのに時間をかける必要は無いと語る。
朝になって二人は地下鉄に乗ろうとするが、ジョーが田舎者なので都会の満員電車に慣れていなくて逸れてしまう。二人は必死に相手を探し回るが、互いの苗字を知らないことに気付く。やっとのことでアストル・ホテルの時計下で再会し、ジョーはアリスに求婚しアリスは応諾する。
ジョーは明日の昼までに部隊に復帰しなければならない。次の異動先はロンドンとのことで、次にいつ逢えるか分からない。だから今日中に結婚式を挙げる必要があった。しかし役所の手続きが血液検査を必要にするなど手間がかかる上に午後四時過ぎまでしか受付していないと言われる。何とか血液検査を済ませ、じかんぎりぎにドタバタと結婚式を挙げる。
アリスには結婚した実感が全く湧かず、遅い昼食中に泣き出してしまう。ジョーはそんな彼女を慰めるが、教会前を通り掛かると合同結婚式を挙げたカップルが大勢教会から出てくる。そこで二人は誰もいない教会に入り、二人だけの神前結婚式を挙げる。
翌朝ホテルで目覚めたアリスは満足そうな笑顔で朝食を摂る。アリスは駅でジョーを送り出した後、戦地へ夫を送り出した妻として胸を張って帰って行く。
雑感
兵士が旅先で若い女性と出会い、二日間で恋に落ちて結婚し再び戦地に向かうというロマンティックな話だが、実はそれだけでは終わらない。
アリス(ジュディ・ガーランド)は最初に情緒不安定気味の女性だったが、最後には誇りを持って夫を送り出す勇気ある妻の表情になっている。この辺は戦争中の作品だから仕方がないが、ガーランドの表情の変化は見事だった。
製作前段階の監督はジャック・コンウェイ、撮影に入ったときの監督がフレッド・ジンネマンだったが、最終的に製作者アーサー・フリードとジュディ・ガーランドに監督として指名されたのは、映画「若草の頃」でジュディと大ヒットをもたらしたヴィンセント・ミネリだった(ヴィンセント・ミネリにとっては第四作に当たる)。
ジュディ・ガーランドにとって一切歌わないストレイト・プレイ作品は初めて。ジュディが女優としての幅を広げるため、自らストレイト・プレイを志願したらしい。作品としても興行的に成功したが、「若草の頃」ほどの大ヒットにはならなかった。この作品の上映開始後にヴィンセント・ミネリと再婚し、娘ライザ・ミネリを儲ける(ヴィンセントは初婚)。
ロバート・ウォーカーは所謂繊細な二枚目で有り、か細いイメージがする。彼は撮影当時から妻ジェニファー・ジョーンズとの離婚話に悩み、アルコールが抜けなかったそうで、あのジュディ・ガーランドを心配させた。６年後ヒッチコック監督の「見知らぬ乗客」で俳優として一皮剥けた途端に睡眠薬とアルコールの飲み過ぎで亡くなった。
若い二人に結婚を意識させるアル夫妻を演じるのは、実際にも夫婦であるジェームズ＆ルシル・グリースン夫妻。活動家だった妻のルシル・グリースンは２年後、急死する。
ヘレン役のルース・ブラディはかなりの大根役者だった。誰が彼女に役を与えたのか？
原作の一人ポール・ギャリコは「スノーグース」や「ポセイドン・アドベンチャー」、「リリー」や「マチルダ」の原作者として知られる作家だ。猫好きには「猫語の教科書」が有名。
スタッフ
監督 ヴィンセント・ミネリ
製作 アーサー・フリード
脚本 ロバート・ネイサン、ジョセフ・シュランク
原作 ポール・ギャリコ&ポーラ・ギャリコ
音楽 ジョージ・ベースマン
撮影 ジョージ・J・フォルシー
キャスト
アリス・メイベリー ジュディ・ガーランド
ジョー・アレン伍長 ロバート・ウォーカー
牛乳配達人アル・ヘンリー ジェームズ・グリースン
ヘンリー夫人 ルシル・グリースン
酔っ払い キーナン・ウィン
ビル マーシャル・トンプソン
ルームメイトのヘレン ルース・ブラディ