(▲★)熱血教師になるために大学に戻ってきた元活動家が、大学闘争に巻き込まれるハチャメチャ・コメディ。
製作・監督はリチャード・ラッシュ。
ケン・コルブの原作をロバート・カウフマンが脚色して、撮影は「イージー・ライダー」のラズロ・コヴァックスが務めた。
主演は「M★A★S★H」のエリオット・グールド、キャンディス・バーゲン。
共演はロバート・F・ライオンズ、ジェフ・コーリー、マックス・ジュリアン。
ストーリー
ハリーは、ベトナム戦争で軍から除隊し高校の熱血教師を目指して、かつて反体制派運動の指導者役を務めていた州立大学の教育学大学院に戻ってきた。彼の周りでは相変わらず学生がデモを行い、夜はドラッグを吸って学生運動について議論していた。ハリーの恋人ジャンも、反体制派の学生である。しかし軍隊経験があるハリーは、理想だけでは生きていけないと諦めていた。
ハリーは、家賃が払えずに寮を追い出された。ハリーは、ジャンの部屋に転がり込むが、詰まらぬ事でジャンに当たる。
教育学部のウィルハント博士は、ハリーに教育実習させるために落ちこぼれクラスの英文法を教えさせる。彼の自由放任主義は、教師に不向きだとウィルハントに批判されたが、彼は実習に手応えを感じていた。スポーツ進学組でバットマンしか読めないガルシアが、図書館でドンキホーテを読むほどだった。
ハリーは、教授に頼まれて学校と学生の調停を働きかけていた。学校側は、学生の自治拡大の要請について慎重だった。彼は、ジャンと学生運動の闘争方針をめぐりついに喧嘩してしまう。紛争はますます拡大していき、授業の安全を保障するために州兵が大量動員されることになる。
ハリーは、視聴覚テストを友人ニックに受験させたことがウィルハントにバレる。ハリーは、教師になれない色盲だった。ウィルハントは、教育学部以外の博士課程に進むのであれば不問に付すと言う。
ハリーは絶望して部屋に帰ると、突然ジャンが戻ってきて、安定した生活が欲しいから医学部のグリーングラス博士と結婚すると宣言した・・・。
雑感
「りんご白書」(1970)に代表される学生運動映画の一つだ。面白い点は、今までの大学映画が、青二才の戯言にしか見えなかったのに、この作品の主人公は、ベトナム戦争を経験していて大人の側の論理にも理解がある点だ。ただし、最後は教授陣に対する主人公の堪忍袋の尾が切れて、学生運動に再び身を投じる。
更生を誓ったヤクザが、刑務所から出獄するが、かつての仲間の誘いや世間の冷たい風に怒りを爆発させる高倉健と同じである。だから、東京大学は、1968年第十九回駒場祭(秋の学園祭)で東映映画「昭和残俠伝」シリーズの高倉健の台詞を引用したポスターを作ったが、アメリカでもそれと似たようなことを考えていたわけだ。
エリオット・グールドは、さぞモテたんだろうな。セックスの上手そうな顔をしている。ところが、ジャンに振られて黒人女性と一晩付き合ったときに、彼女から「イマイチだわ」と言われたのは笑った。ジャンを落とした彼のテクニックも黒人には通じなかったか?
ジャン役のキャンディス・バーゲンは、学生運動家でありながら郊外で豊かな家庭を夢見るという、二面性を併せ持つ女子学生。学生運動は無駄だと体制寄りの言葉ばかり吐くハリーに愛想を尽かして、豊かな先生との結婚を一旦は選んでしまい、ハリーは終了試験で怒りを爆発させてしまう。ところが、彼女はやはり学生運動に理想を追い求めデモ隊に舞い戻ってしまう。
ハリソン・フォードが初めてこの芸名で主要な役(ジャンの隣室のジェイク役)を得た映画である。
スタッフ
製作、監督 リチャード・ラッシュ
脚色 ロバート・カウフマン
原作 ケン・コルブ
撮影 ラズロ・コヴァックス
音楽 ロナルド・スタイン
キャスト
ハリー(教育学部の院生) エリオット・グールド
ジャン(生物学の学生) キャンディス・バーゲン
ニック(友人) ロバート・F・ライオンズ
ウィルハント博士 ジェフ・コーリー
エリス(黒人学生) マックス・ジュリアン
ジェイク(学生) ハリソン・フォード
キャスパー博士(担当教官) セシル・ケラウェイ
ガルシア(教育実習での教え子) グレゴリー・シエラ
グリーングラス博士(ジャンに求婚する) リチャード・アンダース
***
州兵が学生を鎮圧している風景を窓から眺めながら、ハリーは修士課程の修了試験に臨む。学生たちの泣き声、叫び声、州兵の撃つ銃声が耳に入る。あるゲイの教授は、学生たちが泣き叫ぶ姿を傍観しながら、「F・S・フィッツジェラルドは同性愛者だったことを知らないのか、『偉大なるギャツビー』には彼の同性愛パニックが描かれているのだ」と自慢げに語った。ハリーに怒りが湧いてきて「(彼の愛人)シーラ・グレアムや(彼の正妻)ゼルダはどうなるのか」と怒った。そして彼は机に乗って、事態を見て見ぬふりをする教授陣を罵倒した。その時、壁際に催涙弾が命中して爆発し、教授たちは瞬く間に飛び出した。
州兵の強硬な姿勢に、学生運動は暴動化していた。その中で血まみれのジャンを見つけたハリーは、お互いにまだ愛し合っていることに気づき、学生と州兵が殺し合いをする中で服を脱ぎ合いセックスを始める。