母を失った十歳の少年が急性骨髄性白血病になり父に看取られ亡くなるまでを描いた、感動映画。
オビディオ・G・アソニティスとジョルジョ・カルロ・ロッシが製作し、アントニオ・トロイシオとライモンド・デル・バルツォの描いた脚本をライモンド・デル・バルツォが監督した。
主演は当時有名な子役だったレナート・チェスティ、共演はベキム・フェーミュ、アゴスティーナ・ベリ、マルゲリータ・メランドリ、ニーノ・セグリーニ。テクニカラー作品。
あらすじ
復活祭を迎え春休みになる日、寮生は親に迎えられ自宅に帰っていくが、ルカが一人だけ残される。彼の父ロベルトは、敏腕弁護士で忙しいのだ。不憫に思った、父の友人ベルナルドがロベルトの代わりに迎えにきてくれる。ペルージャの街で、父のためにネクタイやレコードを買った。しかし、ルカが寝る前に父は帰ってこなかった。
翌日、ルカが起きた時は、父はすでに出かけた後だった。ルカは、やや太ったGFステファネラと父に会いに裁判所に行った。しかし久しぶりに会う父ロベルトにルカを構う暇はなかった。
実は、ロベルトはベロニカと言う彼女と付き合っていた。彼女は聡明だったが、反抗期を迎えるルカと上手くやっていけるか不安だった。ロベルトはついに休暇を取って、ルカと地中海のサルディニアで休暇を過ごすことになる。ところがルカは、当日になって恋人ベロニカが合流することを知らされる。ベロニカは、親子を二人きりにさせるために、ルカに遠慮してホテルに移り、少しずつルカとの距離を縮めていこうとした。
ベロニカとルカは、友人として親しくなった。しかし、ルカはロベルトとベロニカが抱き合っている姿を覗き見てしまい、再びベロニカと口を聞かなくなる・・・。
雑感
「メリーゴーランド」は、一種の御涙頂戴映画だ。同じイタリア映画で1976年のヘラルド映画配給「ラスト・コンサート」と比較すると、当時有名な天才子役レナート・チェスティを主役にした分、「メリーゴーランド」がはるかに泣かせる。しかも、原題より邦題の方がセンスがある。「なごり雪」という邦題が良いと言う人がいるが、それは大人の楽しむ映画だ。「メリーゴーランド」と言う題名だから、若者や子供でも泣けるのだ。
ただし、主役レナード・チェスティは映画俳優としては大成できなかった。TV俳優として活動していたが、今は事業家として暮らしているらしい。
父親役のべキム・フェーミュは、ユーゴスラビア出身で、ハリウッド映画「ブラック・サンデー」に呼ばれて、テロリスト役を演じた。
恋人役のアゴスティーナ・ベリは、お色気映画を中心に出ていたが、ハリウッド映画「悪魔が最後にやって来る!」でカーク・ダグラスと共演している。
また、イタリアは縦に長い国で、サルディニアの海岸で泳いだと思ったら、翌日にはスイスに近いアルプスでスキーを楽しめる。実に羨ましい。
スタッフ
製作 オビディオ・G・アソニティス、ジョルジョ・カルロ・ロッシ
監督、脚本 ライモンド・デル・バルツォ
脚本 アントニオ・トロイシオ
撮影 ロベルト・デットーレ・ピアッツォリ
音楽 フランコ・ミカリッツィ 「メリーゴーランド」のテーマ
キャスト
ルカ少年 レナート・チェスティ (血みどろの入江)
ロベルト弁護士(父) ベキム・フェーミュ
ベロニカ(恋人) アゴスティーナ・ベリ
ステファニー マルゲリータ・メランドリ
ベルナルド(父の友人) ニーノ・セグリーニ
***
ロベルトは、ベロニカと話し合い、もう一度親子だけでアルプスにスキー旅行をする。ところが、そこでルカは、意識を失い倒れてしまう。
専門医の診断によると、ルカは急性骨髄性白血病だった。ルカは、寮にいた時から鼻血を出していたそうだ。ロベルトは、息子の健康をかえりみなかったことを後悔した。その日から、ロベルトとベロニカは、交代で病院に泊まる日が続く。
ある日、ルカは父親と普通に喋れるぐらい調子が良かった。ロベルトにルカは、ネクタイとレコードのプレゼントを買っていた事を打ち明けた。さらにルカは、遊園地のメリーゴーランドに一緒に乗りたいとせがむ。そういえば、ロベルトとルカは、一緒に遊園地に行ったことがなかった。ルカの真剣な表情にロベルトは、ルカを車に乗せて遊園地に連れて行った。すでに夜も遅くなって真っ暗だったが、遊園地のマネージャーに事情を話して、親子二人だけのために遊園地を開いてもらう。
ロベルトはルカを抱きしめて、メリーゴーランドに乗り込む。そして白鳥のボートなど全ての乗り物に乗ることができた。最後に、再びメリーゴーランドに乗る。しかし、ルカはロベルトに抱きしめられながら、小さな首がガクッと項垂れた。わずか10年の人生だった。遊園地の片隅で見守っていたベロニカは、涙ぐんだ。残業していた遊園地の従業員も同じ気持ちだった。メリーゴーランドは、いつまでも回り続けた。