仕様上は35Ωで90dBの平面駆動型ヘッドホンバランス接続(ケーブルは同じHIFIMAN社のヘッドホンHE6SEの付属品を使った)で、アンプはオーロラサウンドのHEADAを用いた。

少し遠くて出しゃばらない、おとなしい音だ。高音や低音はある程度出ているが自己主張が感じられない。それに対してほんの少し中域は弱く感じて実体感が薄い。サウンドステージはやや広めに取られている。余韻は少し感じられるが、過剰ではない。

同価格帯のSTAXの静電型ヘッドホンより力強さがある。
同じHIFIMANのHE6SEより音の実体感を感じる。

満足度 4
デザイン 1
高域 4
中域 3
低域 4
音漏れ 3

ヘッドホン自体の重さは感じない。軽いほうだ。
側圧感はちょうど良い。
しかし華奢なヘッドバンドで、左右のパッドが絡みやすく、外すときは常に気をつけていなければならない。

平面駆動型ヘッドホンと言うことで、エイジングには時間がかかる。新品なら二週間は鳴らし込もう。

まず総評しよう。
楽器は非常に良く鳴る。しかし楽器が多ければ多いほどボーカルやメインの中域楽器が寂しく感じられる。

ジャンル別に見ていこう。ここで掛ける音楽は全てハイレゾだ。
ロックボーカルは、想像以上に大人しい。AC/DCのボン・スコットは、ハイ・トーン・ボイスということを割り引いても、楽器に完全に負けてしまう。
その代わり楽器部分は素晴らしい。リードギターは惚れ惚れする良い音だ。ドラムのシンバルは、余韻を残しすぎず、空間に溶ける様子が自然だし、バスドラも実に自然な音だ。その代わりスネアはやや特徴的な音を出す。そこは好みが分かれるかもしれない。

ストリングスを加えたロックボーカルとして柳ジョージとレイニーウッドのアルバム「Weeping in the Rain」から最初の表題曲(英語版)を聴く。これはソロ・ギターが少々強めだが、柳ジョージが歌っている間はストリングス、バンドと調和が取れている。

ポップスのボーカルを聞いてみよう。寺尾聰「Reflections」の五曲目「ルビーの指環」は、ボーカルとインストルメンタルが釣り合っていて、良い感じだ。

女性ボーカルに移ろう。八神純子のシングル「みずいろの雨」を聞いてみる。このヘッドホンは女性ボーカル向きだと思っていたが、やはりそうだった。楽器群との調和も取れている。

女性バラードとして、オーディオ・マニアに好きな人が多い井筒香奈江の「時のまにまに」一曲目「マイ・ラグジュアリー・ナイト」を聴く。192kHz、24Bitフォーマットだ。ボーカルとギターだけの編成だが、これがジャスト・ミートである。口の中が見えるほどはっきり聞こえるヘッドホンもあるが、このARIAは節度がある。ギターもうるさくない。

ジャズに移る。ソニー・ロリンズの「サキソフォン・コロッサス」表題曲だ。ロリンズのテナーサックスはあまり吠えない。でもベースの締まり方はちょうど良く、ドラムのシンバルの音が気持ち良い。

宮沢昭のアルバム「いわな」から表題曲を聴く。ベースとドラムスは良い。テナーとピアノは両サイドに振られているせいか、抑え気味に聞こえる。

フュージョンは、フォープレイのベスト盤から冒頭の「マックス・オー・マン」だ。全ての楽器が最高の鳴りを響かせる。ボブ・ジェームスのキーボードの音色は美しいが、リー・リトナーのギターには敵わない。そしてリズム楽器は、正確無比過ぎて、面白みに欠ける面もある。

最後にクラシックに移ろう。まずピアノ曲だ。マルタ・アルゲリッチのデビュー・リサイタルから冒頭曲「ショパン・スケルツォ第三番」。非常に聞きやすい音だ。しかし華やかさは感じられない。

次にバイオリンとピアノのデュオ。ヒラリー・ハーンとヴァレンティナ・リシッツァのアイブス作曲「バイオリン・ソナタ第一番」を聞いてみる。これも良く鳴っているのだが、中域の音がピアノもバイオリンも物足りない感じがする。

オーケストラは、フリッチャイとベルリン・フィルのベートーベン第九番「合唱付き」から第四楽章。低音の響きは十分にある。音は混濁することなく、整理されている。ただし迫力が全くない。例えば初めてテナーが入ってくるあたりの盛り上がりが全く感じられない。

オペラは、ショルティとウィーン・フィルのワーグナー作曲「ラインの黄金」から、ラインの乙女とアルベリヒの登場を聞こう。ショルティなのに、非常に理知的な演奏に聞こえる。

 


HIFIMANのヘッドホンでは、HE6SEよりもARYAが好きだった。しかし、FOCALやULTRASONEばかり使うようになり、いつの間にかARYAから興味が離れてしまった。
やはり、平面駆動型ということで、音圧を感じなかったからだ。男性ボーカル曲のように中域の迫力が欲しい音楽もある。女性ボーカルでも最近は結構音圧を出している。それがARIAには感じられない。

ところが上位機種HE1000SEを聞いてみたところ、アンプのHEADAとの相乗効果もあって、元気な鳴りを聞かせたのだ。
ARIAはドンシャリな開放型ヘッドホンに近いが、HE1000SEは密閉型に近い半開放型ヘッドホンに似ている。
HE1000SEとARIAの差がわからないと言った人は、エイジングを済ませていないか、小編成しか聞かない、あるいは超高音と超低音が聞こえない人なのだろう。音場を俯瞰的に聞きたい人にも向いている。
しっかり二週間ぶっ続けで音を鳴らして慣らし運転をすれば、HE1000SEは凄い能力を発揮してくれる。
ボリュームはARIAと同じ位置(9時)で大きな音がするので、少しだけ下げて聞いてみれば良い。

 

 

ヘッドホン HIFIMAN ARYA (中国製;アメリカ設計)

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