1911年から始まったマルセル・アランピエール・スーベルトル共作小説、「怪盗ファントマ」シリーズは、フランスのベルエポック時代を代表する大衆文学だ。
1905年から開始されたモーリス・ルブランの「リュパン」シリーズほどシリアスでないことと、最先端の科学技術を駆使する点でSF的な要素が若い大衆に受け入れられた。
その後ラジオドラマ、映画、演劇、コミック、人形劇、テレビドラマと「ファントマ」はマルチメディア展開する。
サイレント映画時代からシリーズ化されるほどの人気だったが、カラー映画となったのはこの作品が最初である。
ちなみに江戸川乱歩「怪人二十面相」が初めて書かれたのは、1936年だった。
主演はジャン・マレー、ルイ・ド・フィネス、ミレーヌ・ドモンジョ様。
監督はアンドレ・ユヌベル、音楽はミシェル・マーニュ(地下室のメロディ)。

あらすじ

謎の怪盗ファントマが全世界を恐怖のどん底に落とす。パリ警視庁のジューヌ警部が捜査するが、全くしっぽを掴めない。それを揶揄って新聞記者のファンドールと恋人エレーヌは、東スポ並みにでっち上げたが、それがファントマににらまれ誘拐される。そしてファントマはファンドールに変装して白昼堂々と宝石強盗を行う。その後ファントマの愛人バルサム夫人の嫉妬を利用してファンドールたちは解放されるが、今度は警察に逮捕される。ファントムは続いてジューヌ警部に化けて、カジノで銃を連射する。ジューヌ警部と刑務所の同じ部屋に入れられたファンドールは、見慣れぬ看守によって手錠を嵌めたまま車に乗せられる。その看守こそがファントマだったのだ。看守の隙を突いて車から脱出し、通りがかりの車に乗ってファントマを追うが、結局海で潜水艦に移られて逃げられる。

 

雑感

この映画は初めてドモンジョ様を観た映画だった。デビュー当時と比較すると、少し痩せていてグラマラスな印象は薄い。でもノーブラ姿を披露していたので、刺激は強かった。
ドモンジョ様を見て、フランス人は何て美人なんだろうと思ったことが印象に残っている。日本で言うと、大映の若尾文子や叶順子の流れだ。新東宝のグラマー軍団も、フランスとは限らないが、イタリアを含めたラテン系の香りがした。

映画は「007ブーム」からの一連の流れだが、UA映画「ピンクの豹」でパリ警視庁クルーゾー警部と怪盗ファントムのコミカルな対決が馬鹿受けしたのが、フランスの逆鱗に触れたようだ。ジャン・マレーもやりたい役柄ではなかろうが、アメリカには負けていられない。
そこでも原点に立ち返って、探偵ではなく怪盗ファントマをタイトルロールに据えたあたりが、リュパンの国フランスらしい。

ちなみにジャン・マレーの生え際はズラか?だとすると禿に変身するシーンは、本物のズラの上からハゲズラを付けた屋上屋だったわけか。
美女シリーズで天知茂演ずる明智小五郎が変装を解くシーンは、多羅尾伴内シリーズのように昔からのあるものだが、このファントマにも影響を強く受けていると思う。

 

 

スタッフ・キャスト

監督 アンドレ・ユヌベル
原作 マルセル・アランエミル・スーベストル
脚本 ジャン・アラン、ピエール・フーコー
台詞 ジャン・アラン
音楽 ミシェル・マーニュ

配役
ファンドール ジャン・マレー
ジューヴ警部 ルイ・ド・フィネス
エレーヌ ミレーヌ・ドモンジョ
バルサム夫人 マリー・エレーヌ・アルノー

ファントマ/危機脱出 Fantomas 1964 フランス製作 東和配給 ジャン・マレー版ファントマ映画第一弾

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