クリント・イーストウッド監督と主演アンジェリーナ・ジョリーが初めて組んだ話題作。1928年に米国で起こった実話に基づき、我が子を取り戻そうとする母親の闘いを描く。
共演はジョン・マルコビッチ。
あらすじ
シングル・マザーのクリスティン・コリンズは小学生の息子ウォルターと二人暮らし。1928年のある日、息子が誘拐される。しばらくしてロス市警のジョーンズ警部から発見したと言う報告があった。駅で息子を出迎えると、全くの他人であった。その時はマスコミが大勢いて混乱するので、一旦子供を預かる。その子供は自分がウォルターだと言って聞かない。フリーグレイブ牧師に相談すると、警察のいい加減な捜査により子供を取り違えたと教えてくれる。
しかし警部とディビス署長は、フリーグレイブ牧師に接近し、取り違えをマスコミに発表しようとするクリスティンを育児忌避と言って、精神病院に入れてしまう。精神病院には罪のない女性がロス市警によって大勢収容されていた。
その頃、ロス市警のレスター刑事は不法入国者サンフォード少年を保護するが、彼は叔父ノースコットの連続少年殺人を手伝わされたと告発する。レスターは、被害者の中にウォルターも含まれていたことを知り、ジョーンズ警部を無視してワインビル養鶏場へ行き、白骨化した遺体を発見する。フリーグレイブ牧師は精神病院へ行き、クリスティンを解放する。
フリーグレイブに紹介された人権派弁護士ハーンとクリスティンは、早速精神病院で隔離されている無罪の女性を解放する。そして市警の不祥事に関する聴聞会の開催を要求する。
一方、ノースコットはカナダで逮捕されて、ロスで裁判にかけられる。聴聞会と連続少年殺人の裁判は同じ日に設定され、クリスティンは朝裁判に出て、昼から聴聞会を傍聴した。
聴聞会ではジョーンズ警部の無期停職、デイヴィス市警本部長の更迭が決議されて、裁判ではノースコットの有罪と市警判決が下される。
2年後、ノースコットの死刑は執行される。それから5年後になって連続殺人の遺族仲間から息子が見つかったと知らされる。その子供によると、ウォルターと逃げ出したが別々の方向に逃げたので、その後ウォルターは逃げ果せたかわからないと言う。クリスティンは息子のことを忘れて新たな人生を踏み出そうとしていたのに、再び事件の渦中に戻される。結局ウォルターが現れることはなかった。
雑感
1906年のサンフランシスコ大震災以来、ロサンゼルスがアメリカ西部の中心都市として急成長する。その反動として犯罪が急増し、警察の癒着や汚職も蔓延った。捜査においてもロス市警はかなり荒っぽい手法を取って検挙率を上げていたが、射殺、逮捕された人の中には無罪の人も多くいた。フリーグレーブ牧師のように、その手法に反発する人権派も多かった。
そうした状況で大恐慌直前の1928年に実際に起きたのが、ワインビル養鶏場殺人事件だ。その犠牲者と思われるウォルター少年の母親に起きた、恐るべき警察の隠蔽工作は信じられるものではなかろう。でも多忙な警察に隠蔽、冤罪捜査は付きものなのだ。当時の警察はどこの馬の骨かわからない父無し子の誘拐事件などに長い時間、関わりたくはなかったと考えられる。
ウォルター少年はノースコットに再び捕まって殺されたのだろうか。二人がバラバラの方向に逃げて二人とも捕まる可能性は小さい。恐らくどちらかは逃げ切っただろう。しかし例え逃げ切っても、実家の方向に戻ることは再びノースコットに捕まる可能性がある。だから実家と逆方向に逃げ出して、事故に遭って行き倒れになったと考えられる。
アカデミー監督賞を受賞してからのクリント・イーストウッド監督の作品にはスピードも爽快感もない。サスペンスでものんびりしている。間延びしていると言うべきかもしれない。アンジェリーナ・ジョリーの配役にも違和感があった。
スタッフ
監督 クリント・イーストウッド
製作 クリント・イーストウッド 、 ブライアン・グレイザー 、 ロン・ハワード 、 ロバート・ロレンツ
脚本 J・マイケル・ストラジンスキー
製作総指揮 ティム・ムーア 、 ジェームス・ウィテカー
撮影監督 トム・スターン
音楽 クリント・イーストウッド
キャスト
クリスティン・コリンズ アンジェリーナ・ジョリー
息子ウォルター・コリンズ ガトリン・グリフィス
グスタヴ・ブリーグ牧師 ジョン・マルコヴィッチ
デイヴィスLA警察本部長 コルム・フィオール
アーサー・ハッチンズ(子役) デヴォン・コンティ
J・J・ジョーンズ警部 ジェフリー・ドノヴァン
レスター・ヤバラ刑事 マイケル・ケリー
犯人ノースコット ジェイソン・バトラー・ハーナー
キャロル・デクスター エイミー・ライアン
人権派ハーン弁護士 ジェフリー・ピアソン
証人サンフォード少年 エディ・オルダーソン