1952年度カンヌ映画祭グランプリを受賞したオーソン・ウェルズの作品。英語版はアメリカで短期間上映後、フィルム自体が失われたが、後にウェルズの娘の依頼で発見された。損傷が激しくてリストアされたそうだ。そのため、音声がモノラルなのに非常に綺麗に録れている。
白黒映画で、オリジナル言語は英語である。
あらすじ
貴族の娘デズデモーナ(シュザンヌ・クルーティエ)は親の反対を押し切って、ムーア人の将軍オセロ(オーソン・ウェルズ)とヴェネチアの教会で結婚式を挙げた。その頃、元老院はベネチア領のキプロス島へ向かってオスマン・トルコが進軍しているという報告を受け、オセロはキプロスへ向かってオスマントルコと戦うよう命じられる。旗持ちのイアーゴ(マイケル・マクラマー)は副官に自分でなくキャシオ(マイケル・ローレンス)を指名したオセロを恨んでいて、デズデモーナに横恋慕するロダリーゴ(ロバート・クート)とともにオセロを追い落とす計画を練っていた。
オセロは、即座にオスマン・トルコを破る。それに合わせて新妻デズデモーナがやって来る。勝利の宴の最中、イヤーゴはロダリーゴをけしかけて副官キャシオ(マイケル・ローレンス)に喧嘩を売らせて刃傷沙汰を起こす。その結果、キャシオは罷免されてしまう。
心配する振りをするイアーゴは、デズデモーナに頼んでオセロとの仲を取りなしてもらえとキャシオをそそのかす一方、オセロにデズデモーナとキャシオが密会していると吹き込む。そして妻エミリア(フェイ・コンプトン)に、デズデモーナのハンカチを盗ませ、キャシオの部屋に置く。後にオセロは、キャシオの情婦ビアンカ(ドリス・ダウリング)がそのハンカチを持っているところを発見してしまう。
こうしてデズデモーナがキャシオと不倫を働いたと思い込まされたオセロは、キャシオを暗殺するように命じる。イアーゴはキャシオを殺し、事情を知るロダリーゴに罪を被してこれも殺してしまう。その頃、寝室でオセロはデズデモーナを絞め殺していた。しかしベネチアから迎えに来た使者を前にして、イアーゴの謀略だったことをエミリアが告白すると、イヤーゴはエミリアを刺殺して、逮捕される。自分が騙されて最愛の妻を殺してしまったことをオセロは悔やんで自害する。
雑感
ムーア人(北西アフリカ出身のイスラム教徒)オセロは異民族の国であるヴェネチアで将軍にまでなって、こんな陰謀に落ちるとは馬鹿だねえというのが、この話を初めて聞いたときの感想。いくら綺麗な女房をもらったからと言って、普通はイタリア人の部下が二枚舌を使って、いざとなったら将軍の寝首をかくことぐらい分かるだろうに。でもシェイクスピアの時代には、こういう単純な構造の悲劇が受けたのだろう。
オーソン・ウェルズの自費制作映画だからアメリカ映画扱いされているが、俳優はカナダ人やイギリス人を多用して、ヨーロッパで高く評価され配給された。自分もヨーロッパに行ったとき、テレビでオーソン・ウェルズの作品をよく見て、オーソン・ウェルズのファンはヨーロッパに多いと実感した。
イヤーゴ役のマイケル・マクラマーはアイルランド人で当時51歳。イヤーゴの年齢設定は28歳だから、かなり違う。それがウェルズの狙いであって、イヤーゴがオセロをコロリと騙すのを観客はすんなり受け入れた。でも今から見ると、イヤーゴはオセロの前で、もう少し忠実な部下の振りをして欲しかったなあ。
デスモデーナ役のシュザンヌ・クルーティエはかなり美人だ。もっと長く演じていたら大活躍できたろうに、ピーター・ユスチノフと早く結婚してしまった。
スタッフ
監督・脚本・製作 オーソン・ウェルズ
[修復版]監修 フィリップ・ショッパー
原作 ウィリアム・シェークスピア
撮影 アンキーゼ・ブリッツィ 、 G・R・アルド 、 ジョージ・ファント
衣装デザイン マリア・デ・マティス
編集 ジョン・セプリッジ 、 ジャン・サッシャ 、 レンゾ・ルチディ 、 ウィリアム・モートン
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配役
オセロ オーソン・ウェルズ
デスモデーナ シュザンヌ・クルーティエ
イヤーゴ マイケル・マクラマー
ロデリゴ ロバート・クート
エミリア フェイ・コンプトン
ビアンカ ドリス・ダウリング
キャシオ マイケル・ローレンス