映画「スタア誕生」三度目のリメイク。今回の主人公も前作同様に歌手志望という設定だが、エスターではなくアリーという名なので、邦題に「アリー」という名を付け加えている。
主演は今や人気絶頂のレディー・ガガ、しかもほとんどスッピンに近いメイクで登場する。最初はビヨンセが主演する話も出ていた。
共演で初監督も勤めるのはブラッドリー・クーパー。「アメリカン・スナイパー」での好演がまだ記憶に新しいが、今回はずっと軽量化して出演する。
ウィリー・ネルソンの息子ルーカス・ネルソンがいくつかのカントリー音楽を担当している。
あらすじ
アリーはバイトをしながら夜はドラーグ・バーで歌のステージを勤めていた。カントリー歌手のジャックはコンサート・ツアー中に入ったバーで偶然彼女を見つけ、シャンソンの歌声に驚く。
ステージを終えてからも一晩中二人は公園で歌ったり語っていた。
翌日ジャックの運転手が訪ねてきて、ジャックが自分のコンサートに招待しているという。彼女は戸惑いながらも誘惑に負け、プライベート・ジェットでコンサート会場に向かう。ステージ袖でジャックのコンサートを見ていると、一度で良いからこんな場所で歌いたいという気持ちが湧いてくる。
その時、ジャックが彼女をステージに招き入れ、昨日彼女が聞かせてくれた歌「シャロウ」を少し手直ししたから一緒に歌おうと言い出す。突然のことで何が何かわからなかったが、いつの間にか彼のリードで熱唱してしまう。初めて大観衆の前で歌った彼女は興奮するが、観客もハプニングに興奮していた。彼女はその後、コンサート・ツアーに同行して彼と共演する。そして彼との愛も育てていた。
アリーにレズという名の男性マネージャーが付き、ソロ・デビューする。彼女はカントリーでなく、ダンス・パフォーマンスを取り入れたポップ路線で大ヒットを飛ばす。ジャックは彼女なしの生活は考えられず、ついに結婚する。
それでも売れっ子のアリーはジャックと離れることが多くなり、ジャックは寂しさをアルコールで慰める。実は彼は聴力が年々衰えていて、いずれ歌えなくなる運命だった。グラミー賞当日、ソロで歌うはずだったが酷く酔っていて、伴奏ギタリストに配置転換される。さらに最優秀新人賞をアリーが受賞してもジャックがステージに乱入して台無しにしてしまう。
彼はアル中を克服するため施設に入り、アリーに二度と迷惑はかけないと約束する。アリーはそんな彼を抱きしめるのだ。
アリーはヨーロッパ・ツアーが決まっていたが、キャンセルしてできるだけジャックと一緒にいようと決意を告げる。しかしマネージャーのレズは、ジャックに一滴でも酒を飲んだら、彼女と別れてくれと言い放つ。
アリーは国内ツアーの最終日、打ち上げに来てと言って出発するが、ジャックは車庫で首を吊って自殺する。
しばらくしてジャックの追悼コンサートが開かれる。彼女は「彼のために歌います」と言い、彼が彼女に遺してくれた歌を歌い上げる。
雑感
レディー・ガガがかなり背が低くスタイルも良くなかったことに驚くと同時に、たった一つ人より優れた能力を持ってさえいれば人を幸せにすることができると知った。彼女の奇抜なファッションも派手なダンス・パフォーマンスも彼女の並外れた歌唱力を際立たせるものでしかなかった。
ブラッドリー・クーパーは初監督でこれほどまで良い仕事をするとは思っていなかった。映画のあらすじはよく知られたものだから、工夫する点は少なかった。監督の仕事はみんなの気持ちを一つにするだけ。それでもこれだけのヒット作を作るにはプレッシャーは大きかったはず。
惜しむらくは、同時期に公開されたマーヴェル映画「ヴェノム」(その週の興行収入1位)を酷評する投稿がネットで多数投稿されたこと。レディー・ガガの熱狂的ファンらしいが、そんなことをしなくても優劣は明らかなのに、こやつのおかげでケチを付けた。
スタッフ
監督 ブラッドリー・クーパー
脚本 エリック・ロス 、 ブラッドリー・クーパー 、 ウィル・フェッターズ
製作 ビル・ガーバー 、 ジョン・ピーターズ 、 ブラッドリー・クーパー 他
製作総指揮 ラビィ・D・メタ 、 ベイジル・イバニク 他
撮影 マシュー・リバティック
キャスト
アリー レディー・ガガ
歌手ジャック ブラッドリー・クーパー
ロレンツォ アンドリュー・ダイス・クレイ
ジョージ(ヌードル) デイヴ・チャペル
ジャックの兄ボビー サム・エリオット
マネージャーのレズ ラフィ・ガヴロン
ラモン アンソニー・ラモス