福岡市で昭和29年にあった私立養護学校の話だ。
大学教授だった山本三郎は、二人の子供が小児麻痺になったことから全財産をかけて、障害児向けの学校を作る。教え子だったかよ子や父兄も協力してくれて、学校は何とか軌道に乗る。
そんなとき鉄夫が父と継母に連れられて岡山から学校にやってくる。継母はなさぬ仲で障害者を厄介払いしたくて、あえて遠くの学校を選んだのだ。
山本は怒るが、鉄夫が不憫で結局引き取ることにした。鉄夫は山本の長男に頼んで父に手紙を書いてもらう。しかしなかなか返事は来ない。やがて鉄夫は病に倒れ、余命幾ばくもないことを医師から告げられる。山本は事情を父に知らせ、返事を出してくれるように頼む。
鉄夫の臨終間際に父の手紙はやっと届いた。

 

清水宏監督の話題作で主題歌もヒットしたから、どういう作品だろうと思ったが、あまり良くなかった。本音をぶつけてくるドキュメンタリー映画「ねむの木の詩」(1974、宮城まり子監督)とは大違いだった。
展開もあまりに平凡だ。とくに皆が一斉にびっこを引いているシーンは驚いた。リアリティが全く無い。素人子役を使わせたら日本一の清水監督なのに、ここでは河原崎健三ら名子役を使っている。

 

しかし、時代背景が違うのだ。この時代はこういう映画でも人は感動して泣いたと思う。見て見ぬ振りをしていた社会に障害者問題があるのだと知らしめたのだ。
この山本三郎の養護学校は上映の翌年違反があったとして、法人格を失う。のちに昭和53年になって、しいのみ学園は社会福祉法人になるが、その間の事情をよく知らない。
おそらく映画化されてからの方に数多くのドラマはあったと思う。
山本氏のご子息お二人はすでに亡くなっているが、三郎氏ご本人は100歳を越えて存命だそうだ。
(ちなみに宮城まり子の「ねむの木学園」は昭和43年に設立された)

 

監督 清水宏
脚本 清水宏
原作 山本三郎
製作 永島一朗
撮影 鈴木博
音楽 斎藤一郎

 

出演
宇野重吉 (山本先生)
花井蘭子 (妻文子)
河原崎建三 (息子有道)
岩下亮 (弟照彦)
香川京子 (渥美かよ子)
島崎雪子 (田中先生)
龍崎一郎 (村田三吉)
葉山葉子 (照子)

しいのみ学園 1955 新東宝

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