宇野千代の原作にマーラーの五番はかまわないが、五木ひろしの主題歌はやめて欲しい。
幸吉はおはんと夫婦だったが、芸者のおかよと懇ろになり、いまはおかよは芸者屋の女将で、自分は売れない雑貨古物商を営んでいる。
そんなある日七年ぶりに、おはんが幸吉と再会する。
話を聞くと、別れたとき幸吉の子を宿していて、その子も今では尋常小学校に上がったという。
幸吉はおかよとも別れがたいのだが、親子三人の暮らしもしてみたい。
おかよの目を盗んで家を借り、おかよと引っ越すその日に息子が事故に遭う。
原作は読んでいるが細かいところは忘れていた。
具体的にはおかよの一家の様子だ。
おかよの姪お仙のことは全く記憶にない。
ただし、おかよのことを忘れていたおかげで、おかよの主演シーンとくにおはんとの対決シーンは新鮮に見ることができた。
吉永小百合は顔で演技をして、大原麗子は背中で演じていた。
吉永の方が印象に残る人は多いと思うが、映画出演の少ない大原麗子の演技の方が僕には印象深かった。
明治生まれの祖父が存命中最後に映画館に行った作品らしい。
吉永小百合は世代を超えて惹き付けるものがある。
でも僕は大原麗子の強くはかない生きざまを愛する。
そして吉永小百合との間で揺れる石坂浩二の気持ちもわかる。
最後に、ミヤコ蝶々の演技にも敬服した。
舞台ばかり出ずに、浪花千恵子みたいに映画にもっと出て欲しかった。
監督 市川崑
脚本 市川崑 日高真也
原作 宇野千代
製作 田中友幸 市川崑
撮影 五十畑幸勇
出演
吉永小百合 (おはん)
石坂浩二 (幸吉)
大原麗子 (おかよ)
ミヤコ蝶々
香川三千

おはん 1984 東宝

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