今村昌平のカンヌ映画祭グランプリ作品。
今村監督と言うと「赤い殺意」や「復讐するは我にあり」など、少し重いって感じがあって、あまり好きじゃなかった。
この映画は意外と軽い感じで、それでいながら今村作品の持つ日本的な湿度を表現している。
これぐらいなら、楽しめる。
山下(役所広司)は8年の服役後、仮出所で佐原の町に現れる。
保護司(常田不二雄)の世話で古い理髪店を借りて、開業する。
しかし彼は自分の罪を悔いることはできなかった。
彼は自分を正当化する代わり、人々とは交わらず、うなぎを飼って話しかける毎日。
それでも近所の人たち(佐藤允、哀川翔、河原さぶ他)は、山下が心を開いてくれる日を温かく待っている。
ある日、桂子(清水美砂)という行きずりの女が近所で自殺未遂を起こす。
彼女は一命を取り留め、山下の店で働くようになる。
桂子はやがて寡黙な山下を愛するようになる。
彼女は山下にお弁当を作るのだが山下は決して食べない。
桂子は山下の刑務所仲間(柄本明)に山下の過去を知らされる。
山下が妻を殺したその日も、妻は弁当を作って山下を送り出した後、男を引きずり込んだのだ。
☆
愛することができなくなった男が、押さえに押さえていた激情を爆発させたとき、人を愛する心を取り戻した。
刑務所へ舞い戻ることになったが、彼はかけがえのない愛を得た。
彼はいまだに、なぜ妻を殺したかってことについて、心の中の解決が付いていない。
でもその問題を避けて通ってきた彼は初めて、その問題に向き合うことになった。
愛情の問題は、愛情のないところでいくらもがいても、答えは見つからない。
山田洋次監督がこの主題で映画を撮るなら「遙かなる山の呼び声」ってところだが、
今村監督はもう少しクールに描き出す。
さらに池辺晋一郎の音楽が如何にも映画音楽って感じで、全体の雰囲気をどこか無国籍にしている。
そういう意味で賞取りっぽく感じられる部分もある。
清水美砂は今まであまり好きじゃない女優だったが、こうやって本編を見ると、こいつぁ女優だなあと思った。
蓮っ葉な女の役なんだが、どこか潔さがある。
最後は結構好きになっていたよ(笑)
でも、清水って外人大好きなんだよなあ。
永遠のセルマ・リッター
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