10代で音楽ジャーナリズムの伝説的存在になったキャメロン・クロウ監督の自伝的ストーリーを映画化。音楽ライターをめざす純粋な少年の初恋と成長をポスト・ビートルズ時代の音楽に乗せてみずみずしく描いている。
主演ビリー・クラダップ、ケイト・ハドソン、パトリック・ヒュジット。共演はフランシス・マクドーマンド
アカデミー・オリジナル脚本賞受賞。

あらすじ

1973年、ウィリアム少年は15歳だが、飛び級して高校三年生になっている。厳格な教師である母エレーヌに女手一つで育てられた。母の教育方法にうんざりしたウィリアムの姉アニタは家を出ていき、スチュワーデスになる。弟思いのアニタはウィリアムにロックのレコードを残していった。それを聞くうちにウィリアムはロック通になる。

ウィリアムは、クリーム誌の編集長レスターに校内新聞に書いた記事を送る。興味を持ったレスターに仕事をもらって以来、ウィリアムはレスターを師として慕う。
ウィリアムは「スティルウォーター」というバンドのライブ会場へ取材に出かける。そこでウィリアムは女性グルーピーでも特に美しい少女ペニー・レインと出会う。ペニーの魅力に若いウィリアムは取り憑かれる。
スティルウォーターのメンバーが会場へ到着し、ウィリアムは記者だと告げる。見た目に15歳の子供なのに、ウィリアムの熱心さに驚いたギターのラッセルが楽屋へ通し、それ以来ウィリアムは彼らの取材を認められる。またペニーは、ラッセルに恋人がいることを知りながら関係を持ってしまう。

 

ウィリアムの記事を読んだローリングストーン誌の編集者ベンから、スティルウォーターのライブツアーでの同行取材記事の執筆を依頼される。初めは反対した母エレーヌだったが、ウィリアムの説得の前に条件付きで同行を許可する。
ウィリアムはツアーに同行するが、ペニーも仲間のグルーピーと付いてくる。影響力のあるローリング・ストーン誌の記者となると、スティルウォーターのメンバーもオフレコでなければウィリアムの前で何も喋らなくなってしまった。ウィリアムはベンに進展状況を提出しろと言われるが、何も出せず困ってしまうが、レスターに泣き付き、助けてもらう。

ツアーは様々な街を周り、バンドの人間関係やドラッグの乱用ぶりも見えて来たが、ウィリアムには何も書けない。一行はニューヨークに辿り着くが、ラッセルの恋人がやって来て、ペニーは邪魔者として扱われる。ペニーはショックを受けて、睡眠薬自殺を図る。ウィリアムに助けられ一命を取り留めた彼女は淋しく故郷へ去る。

ツアー用のプライベート・ジェット機が雷雨に巻き込まれて、墜落寸前となる。死を覚悟したメンバーたちは誰も知らぬ秘密を告白しあう。ところが飛行機は危険を脱し、無事に着陸してしまう。ウィリアムは知ってはいけないメンバーの内情を知ってしまうが、ラッセルは「好きに書け」と言い残して空港を後にする。

ウィリアムは覚悟を決めて、バンドの裏話を執筆する。しかし編集がスティルウォーターに裏を取ったところ、否定される。
編集から嘘つき呼ばわりされたウィリアムが空港で呆然としているところをスチュワーデスの姉に見つかり、どこでも行きたいところに連れて行くと言われる。ウィリアムは迷わず、母の待っている実家を選ぶ。
ラッセルはペニーの友人から、ペニーの住所を聞き出す。ラッセルは、彼女の家に直接行ってやり直したいと言おうと思ったが、彼女に言われた住所はウィリアムの家だった。

ウィリアムと再会したラッセルは、ローリング・ストーン誌にウィリアムの記事は全て真実だと告げたから、そのうちに掲載されるだろうと言った。
ペニーはモロッコに旅立ち、スティルウォーターはウィリアムの記事のおかげで人気が高まり、ウィリアムは人気音楽ライターとしての第一歩を進み始めた。

雑感

青春映画の傑作。
天才少年は詰まらない高校を卒業するより、実社会で経験を積む方が良いようだ。
この作品は、キャメロン・クロウがローリング・ストーン誌の音楽ライターだった時に経験した、業界の裏側を描く映画でもある。
スティル・ウォーターは実際にあるサザン・ロック・バンドだった。アルバムを三枚出すうちにどんどんウェスト・コースト風に洗練されてきた。
しかしここでのスティル・ウォーターは架空のバンドであって、いくつかのバンドのエピソードの合わせたものだ。オールマン・ブラザーズ・バンドのグレッグ・オールマンはライターのクロウを徒名で呼んでいたしし、飛行機事故に会いそうになったのは、ハートだ。

ラッセルがツアー途中の小さな街で、ファンのパーティーに呼ばれてLSDを決めてしまい、屋根の上に登り「俺は神だ」と叫ぶシーンは、レッド・ツェッペリンのボーカルのロバート・プラントの実話だ。

映画音楽は1965年から1975年あたりのロックやポップスがバンバンかかる。従ってラップなんかはかからない。
何曲か作っているナンシー・ウィルソンというのは、有名な黒人歌手でなく、当時のキャメロン・クロウの奥さんである。

キャメロン・クロウ監督は16歳で音楽ライターになったのだが、22歳で書いた初小説がヒットした。その映画化(「初体験/リッジモンドハイ」1982年)にあたり脚本を手掛けたことから、脚本家・映画監督への道を進む。
ケイト・ハドソンは1998年「二百本のタバコ」の演技で評価され、この作品で抜擢されて、その結果ゴールデングローブ助演女優賞を受賞し、アカデミー助演女優賞をノミネートされた。

ビニール・フィルムはキャメロン・クロウの作った映画製作会社。音楽を使い過ぎて予算の二倍の経費が嵩んだ時、スティーブン・スピルバーグのドリームワークスが救いの手を出してくれた。

原題はあと少しで有名になるという意味。

スタッフ

監督・脚本 キャメロン・クロウ
製作 キャメロン・クロウ 、 イアン・ブライス
共同製作 リサ・スチュワート
撮影 ジョン・トール
音楽 ナンシー・ウィルソン
音楽監修 ダニー・ブラムソン

キャスト

天才少年ウィリアム・ミラー   パトリック・フュジット
ペニー・レイン   ケイト・ハドソン
ギタリストのラッセル・ハモンド   ビリー・クラダップ
母エレーヌ   フランシス・マクドーマンド
ボーカルのジェフ・ビーブ  ジェイソン・リー
ポレキシア   アンナ・パキン
サファイア   フェルザ・バルク
ディック・ロスウェル   ノア・テイラー
姉アニタ・ミラー   ズーイー・デシャネル
師レスター・バンクス   フィリップ・シーモア・ホフマン
ローリング・ストーンの編集者ベン    テリー・チェン

 

 

 

あの頃ペニーレインと Almost Famous 2000 ビニール・フィルム製作 コロンビア+ドリームワークス配給 ソニー国内配給

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