三原色式テクニカラーによる初めての長編総天然色映画。
原作は社交界を風刺したウィリアム・サッカレー原作小説「虚栄の市」であるが、ラングドン・ミッチェル作の舞台劇「ベッキー・シャープ」を基にしている。
脚色はフランシス・エドワーズ・ファラゴーが当り「クリスチナ女王」のルーベン・マムリーアンが監督した。色彩デザインはロバート・エドモンド・ジョーンズ、撮影はレイ・レナハンが担当した。

主演者はミリアム・ホプキンスで、共演はフランセス・ディー、セドリック・ハードウィック、ビリー・バーク

あらすじ

孤児ベッキー・シャープは、奨学生として女学校に進学することを許される。しかし学校の授業は、宗教や道徳ばかりでつまらないものだった。
仲の良い同級生アミリア・セドリーが卒業するとき、ベッキーは行く宛てもないのに自主退学する。それをアミリアが哀れに思い、実家に寄寓させてくれる。
ベッキーはアミリアの兄ジョゼフを誘惑し、結婚を申し込ませようとするが、その企みは身分を重んじる彼の親族にバレて、セドリー家を追われる。

生活のためベッキーは、ビット・クローリー卿の子供たちの家庭教師となる。彼女の機転の効いた対応にクローリー卿、長男ビット、次男ロードンは、心を掴まれる。やがて彼女は、兄弟の叔母に当たる老嬢クローリーの付き添いになる。老クローリー嬢はベッキーの美貌と才智に好意を寄せた。
ロードンはベッキーと秘密裡に結婚するが、それもバレてしまい、身分の低い娘と結婚した大馬鹿者と怒られて、一族から勘当される。ただ兄ビットだけが二人に親しくしてくれた。

ベッキーは軍人の夫と無一文になったが、彼女は美貌を元手に借金をしながら贅沢に暮らす。夫ロードンは賭場に入り浸り逆に借金をこさえて来る。またアミリアの夫のジョージ・オズボーンはベッキーに想いを寄せて博打に入れ込む。

一旦流刑になっていたナポレオンがエルバ島を脱出したので、ロードンやジョージが属するウェリントン卿の連隊はベルギーへ出征する。ベッキーは夫に従ってブリュッセルへ赴き、社交界の花形となる。有名貴族のステイン侯爵も彼女の美貌に目をつけた。

ある日、パーティー会場近くが爆撃を受け、ウォータールーの戦いが始まる。英軍は勝利したが、アミリアの夫ジョージは戦死する。
ベッキーはロンドンへ帰ってからはステイン侯爵との噂で社交会を賑わす。しかし、賭博にイカサマ・ダイスを使ったのがばれて借金を作り、夫の借金と一緒に今すぐ払えと言われる。
彼女はステイン侯爵に色目を使って、資金を引き出すが、そこにロードンがやって来て、侯爵を殴る。ベキーは夫から離婚され、ステイン侯爵にも相手にされず、社交界から抹殺される・・・。

雑感

ベッキー・シャープとはウィリアム・サッカレーの原作小説「虚栄の市」の主人公。頭の良い快楽主義者だが、生まれの身分が低く神を信じず、社交界に対して強い憧れと妬みを持っている。女優としてはやりがいのある役だろう。映画の原題は原作「Vanity Fair」でなく舞台の題名である「Becky Sharp」である。
長編映画としては三原色を使ったテクニカラーとして初めての劇映画だ。公開当時は画期的な作品だったのだが、保存状態が悪いフィルムが多く出回っており、黒い点々が画面に映り込んでいる。従って、映画の評価まで大きく下げている。社交界の腐敗を描いた映画の内容そのものは、それほど悪くないと思う。
ミリアム・ホプキンスが好演だ。大女優らしくタイトル・ロールを実に生き生きと演じている。彼女は初めてのカラー画面で存分に弾けていた。
親友役のアメリアは、フランシス・ディーが演じている。彼女は、1933年のキャサリン・ヘップバーン主演映画「若草物語」でメグ役を演じていた美人女優だ。
ウィリアム・サッカレーの原作「Vanity Fair」自体は、サイレント時代から何度か映画化されており、トーキー以後も1932年マーナ・ロイが現代風に翻案した脚本で演じ、2004年に「悪女」と言う題でリース・ウィザースプーンが主役を演ずる。
ウィリアム・サッカレーは、ディケンズと同じ19世紀中頃の大作家である。他には小説「バリー・リンドン」を書いた。

スタッフ

監督 ルーベン・マムーリアン
原作 ウィリアム・サッカレー
戯曲 ラングドン・ミッチェル
脚色 フランシス・エドワーズ・ファラゴー
撮影 レイ・レナハン
音楽 マックス・スタイナー
テクニカラー・カラー・コンサルタント ナタリー・カルマス
音楽監督 ロイ・ウェッブ

キャスト

ベッキー・シャープ  ミリアム・ホプキンス
親友アメリア・セドリー  フランセス・ディー
ステイン侯爵  セドリック・ハードウィック
レディ・バリーカー  ビリー・バーク
義理の叔母クローリー夫人  アリソン・スキップワース
アメリアの兄ジョセフ・セドレー  ナイジェル・ブルース
夫ロードン・クローリー  アラン・モウブレイ
ウィリアム・ダブリン大尉  コリン・タプリー
アメリアの夫ジョージ・オズボーン  G・P・ハントリー・ジュニア
長男ピット・クローリー  ウィリアム・スタック
クローリー卿  ジョージ・ハッセル
ウェリントン男爵  ウィリアム・フェーヴァーシャム
リッチモンド公爵夫人  ドリス・ロイド

ネタばれ

落ちぶれたベッキーは酒場の唄い女となるが、そこでも笑い物にされる。それを聞いたアミリアは彼女を引取ろうとする。しかしアミリアの求婚者ダブリン大尉はベッキーを救うなら結婚せぬと宣言する。アミリアは先夫に操を立てていたのだが、ベッキーは、ジョージが生前ベキーに宛てた恋文を見せてアメリアの眼を覚まし彼女を愛するダブリン大尉と結婚なさいと勧める。
そしてベッキーは、別れた夫ロードンの兄ビットからお金を巻き上げ、アミリアの兄ジョゼフとインドへでも行って、楽しく暮らすことにする。

 

 

 

虚栄の市 Becky Sharp 1935 パイオニア映画製作 RKO配給 初の三原色式テクニカラー作品

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