(☆)大岡昇平の原作小説を菊島隆三が脚色して、川島雄三が監督した女性映画。撮影は岡崎宏三
主演は、新東宝から退社して東宝入社後の初主演となる池内淳子で銀座の有名なホステスを演ずる。
彼女に絡む男性役は、佐野周二、池部良、高島忠夫、有島一郎、三橋達也
カラー映画である。

雑感

倒産しかけていた新東宝から移籍したばかりの池内淳子が、ベテラン男優陣を相手に初主演を張った文芸映画。池内は撮影当時恐らく28歳で、同世代女優がやりたがらなかったので回ってきたのだろう。
離婚後、新東宝に復帰しながら、怪談映画「花嫁吸血魔」で被り物を着させられるなど、やや干されていた池内淳子にとってビッグチャンスだった。

主人公のモデルは、文壇バーにおける伝説のホステス坂本睦子(1958年に43歳で亡くなった)。原作者大岡昇平は、恐らく池部良の演ずる男性のモデルである。佐野周二演ずる胡散臭い老紳士高島のモデルは、美術評論家青山次郎である。大岡昇平は主人公と関係があり、供養としてこの小説を書いたと言われる。

ただ、年が満たない池内淳子が演ずると女の側面ばかり注目されてしまい、主人公が男に裏切られ人生に疲れたように感じられる。主人公の享年43歳という年齢は、微妙なものであり、坂本睦子にはもっと複雑な背景があったのではないかと考える。
新珠三千代なら出来たのだが、今から見れば大したことはないが、濡れ場があったので拒否したと思う。

いかにも胡散臭い美術評論家を佐野周二が好演。テレビで見る美術評論家も、人の良さそうな感じがしているが裏では金に汚そうだ。

 

キャスト

池内淳子  足立葉子
佐野周二  美術評論家高島謙三
池部良  作家松崎勝也
高島忠夫  テレビディレクター清水文雄
有島一郎  弁護士畑浩助
三橋達也  ワイン会社社長野方逸郎
山岡久乃  トンボのママ戸田潤子
筑波久子  チイママ亜矢子
淡島千景  野方の義母お米
高城淳一  バーテン徳さん
中真千子  バー・トンボのホステス久美
村松恵子  同上・春子
穂高あさみ  同上・悦子
桜井浩子  同上・早苗

 

スタッフ

製作  佐藤一郎、椎野英之
企画  金原文雄
原作  大岡昇平
脚色  菊島隆三
監督  川島雄三
撮影  岡崎宏三
音楽  池野成

 

あらすじ

銀座の文壇バー「トンボ」の女給葉子は、戦前から働き多くの文学者や芸術家と浮名を流してきた。戦後になって、松崎は彼女の人の好さにつけ込んで同棲した。しかし、娘が年頃になると別れていった。
葉子は、まるで父親のように頼る美術評論家の高島に相談した。そこで葉子は、古巣の「トンボ」にマダム代理として舞い戻る。マダムには旧友の潤子が納まっていたが、肺を病んで店を休みがちだ。
やがて、葉子はやもめの弁護士、畑から求婚され体の関係を持つ。しかし、畑は同僚マダムの亜矢子ともできていた。それが原因で、葉子は畑と大げんかした。
彼女を助けたのが、テレビディレクターの清水だ。いつの間にか葉子は、年下の清水と同棲するようになる・・・。

ある晩、葉子と幼馴染の野方が、「トンボ」に現れる。今ではワイン会社の社長になった野方は、学生時代から葉子を愛していた。野方は高島のことを思いだし、骨董の鑑定をしてほしいと葉子を通じて頼む。その頃、清水との関係は破綻して葉子の元から去った。
野方は、湯河原の旅館昇仙館を女将お米に葉子を預ける。お米は彼の義母で、相談相手でもあった。葉子は心を込めて働いた。お米には、葉子が高島と親しくしているのが気に入らなかった。
高島が野方の骨董品を利用して詐欺を働いた。その事を知った野方は、自分を取るか高島を取るかと葉子に迫った。葉子は、戦前から体の関係もなく自分を大切にしてくれる高島を捨てられなかった。
東京に帰った葉子は高島に会いに行くが、彼は自宅の裁判で金が入り用だったがすぐ返せると嘯く。
葉子は家に帰って、睡眠薬を大量に飲んだ。やがて眠くなっていく。まだ明るく、花の影が地面に写っていた頃だった。

花影 1961.12 東宝東京製作 東宝配給 実話に基づく大岡昇平の原作小説を映画化

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