自称作曲家の中年ボヘミアンが、浮き沈みの激しい獅子座の運勢に弄ばれていく心理を描写したヌーヴェル・ヴァーグ作品。

エリック・ロメール初めての35ミリ長編白黒映画で脚本・監督を務めた。

製作は「いとこ同志」のクロード・シャブロル。台詞は「いとこ同志」「太陽がいっぱい」のポール・ジェゴフ、撮影はニコラ・エイエが担当した。

主演のジェス・ハーンはこれが初主演作。

日本では昔から東京日仏会館が16ミリプリントを所蔵して度々上映している。35mmは、1990年にシネセゾンが輸入配給した。

ストーリー

6月22日、作曲家を気取り気ままに暮らす中年男ピエールに伯母が亡くなったという知らせが届く。遺産を相続する者と思ったピエールは、親友ジャン=フランソワに金を借り、一晩掛けて街で大騒ぎをする。
7月13日、知人たちは、夏になりヴァカンスに出かけた。ピエールの伯母の遺産は、遺言で全て従兄の物になっていた。ピエールはアパルトマンから追い出され、小さなホテルに宿泊していた。ホテル代もとうに尽きたが、頼りのジャン=フランソワは出張中でパリにいなかった。
7月30日、ホームレスになった彼は、ばったり知人と出会い、「ヤバいが金になる仕事」を紹介される。ピエールは電車の切符をもらうが途中で落としてしまい、郊外にある親方の自宅まで歩いてたどり着く。しかし、親方は出て行った後だった。セーヌ河畔まで歩いて戻ったピエールは、万引きしようとして、店主に殴られ、ほうほうの体で逃げ出す。空腹で疲れ果てたピエールは、通りかかったルンペンにパンを恵んでもらう・・・。

雑感

この作品は、ジャン=リュック・ゴダール「勝手にしやがれ」、フランソワ・トリュフォー「大人は判ってくれない」などのヌーヴェル・ヴァーグ作品の陰に隠れ、製作から3年後の1962年5月2日にパリの映画館一軒でしか公開されなかった。しかし同年の映画評論誌カイエ・デュ・シネマではベスト5に選ばれた。最もカイエ・デュ・シネマは、エリック・ロメールが高校教師をしながら映画評論活動していた雑誌だが。

伯母の遺産でプロダクションを興したシャブロルの逸話が、この作品のヒントになっている。

今さらボヘミアンを気取り何事も中途半端にしかできない男が、獅子座の運勢通り、どん底から絶頂に返り咲く喜劇だ。獅子座はアイドルに多い星座だが、そういう意味があったのか。
しかし、獅子座と関係ないんじゃないかな。調子に乗ってスピードを出し過ぎ、事故死した従兄も同様だったのだろう。大金を手に入れると、調子に乗って早死にしそうだ。(55)

スタッフ

監督、脚本  エリック・ロメール
製作  クロード・シャブロル
台詞  ポール・ジェゴフ
撮影  ニコラ・エイエ
音楽  ルイ・サゲール

 

キャスト

ピエール・ヴァセルラン(中年ボヘミアン)  ジェス・ハーン
ジャン=フランソワ・サンテイユ(雑誌記者)  ヴァン・ドード
ドミニク(ジャン=フランソワの恋人)  ミシェル・ジラルドン
ホテルの女主人  ステファーヌ・オードラン
パリ祭のブロンド娘  マーシャ・メリル
ルンペン  ジャン・ル・プーラン
パリの音楽狂  ジャン=リュック・ゴダール

 

***

8月22日、ホームレス生活が板についたピエールは、ルンペンと一緒に、道端で芸を見せて人々から小銭を恵んでもらっていた。夏が終わり、ジャン=フランソワも出張から戻って来た。彼は友人たちにピエールの棲家を尋ねるが誰も知らない。新聞を見ると、ピエールの従兄が交通事故で亡くなり、彼が遺産を相続することになることを報じていた。ジャン=フランソワは、ピエールを探し出し、そのことを知らせてやった。ピエールは性懲りも無く、またパリの街で馬鹿騒ぎをするのだ。

 

獅子座 Le Signe du Lion (1959) 仏アジャン・フィルム製作 エクスプロイト・フィルム配給 エリック・ロメール監督の長編デビュー作

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