CM界の巨匠、市川準監督の作品。
下町の商店街を舞台に、中年の男一人と女二人のせつない恋物語を、淡々と描いている。
市川監督は、大林監督に次いでCM界から現れた巨匠だ。
この二人に共通している点は、とても静かな映画であること。
動きは基本的に少ない。CMという、短い時間でどれだけ印象を強く与えられるか、という世界で仕事をしてきた人は、こういう映画を作ることになるのだろう。
しみじみ系がお好きなら、お薦めの作品だ。
電気屋の店主浜中(長塚京三)が数年ぶりに商店街に帰ってくる。
家出して、やくざな生活をしていたが、怪我をして、やむなく戻ってきた。
妻(倍賞美津子)や家族は何も言わず、彼を迎え入れる。
近所の青年朝倉(上川隆也)はひそかに浜中の妻のことを慕っていて、面白くない。
そこで彼は、浜中の過去を調べはじめ、
碁席喫茶の女主人たみ(桃井かおり)と浜中がかつて恋仲だったことを知る。

下町の風景のカットで時間を経過させていく構成はとても良い。
ロケ中心なのでとくに美しい映像とは行かないが、セピア調で心和む絵だ。
音楽も室内楽が中心で、うるさいところが全くない。
登場人物の情感が、静かに心にしみる作品だ。
とくに後半、たみと浜中が二人喫茶店で無言でいるシーン。
カメラに二人して背を向けているのだが、その背の丸め方が人生だとか二人の関係だとかを無言の内に語っていて、見ていて鳥肌が立った。
ワンカットに命を懸けてるなあ(笑)
桃井かおりの代表作だ。
ただ、格好悪かったのは、碁席で客が碁を打つシーンだ。
みんなまともに碁石を持てていない。
ちゃんと技術指導ぐらいすべきだろう。