ジャン・マレー(ファントム危機一髪、美女と野獣)を挟んでダニエル・ダリュー岸恵子が見せる女の対決。
その岸恵子と、この作品が縁で結婚するイヴ・シャンピ監督作品。
当時やたらとフランス・日本合作の映画が撮られた、その中の一本である。
はじめは、よくある「日本を勘違いしている映画」かと思った。
しかしなかなかどうして、最後の災害シーンのスペクタクルまでしっかり見せる映画だった。
ジャン・マレーは三菱造船長崎(現在の三菱重工業長崎)の雇われ技師。
フランスから二年の契約で来ている。
彼は山村聡の紹介で呉服屋を営む岸恵子と逢い、愛し合うようになった。
しかしダニエル・ダリューがパリから長崎にやってくる。
彼女は作家で、しかも昔のマレーの恋人だった。
岸恵子ファンはジャン・マレーが相手役と知り、安心してこの映画の製作を心待ちにしたことだろう。
何しろジャン・マレージャン・コクトーの恋人だったから、女に手は出すまいと思っていたのだ。
それがよりによって監督のイヴ・シャンピに口説かれているとは、皮肉なものだ。
イヴ・シャンピはもともと医者でインテリだ。
同僚はノーベル賞を取った。
その上、本人はレジスタンスの英雄である。
これでは日本男子も敵わない。
しかしイヴ・シャンピは寡作家であり、他の作品は見たことがない。
1975年に二人は離婚している。
—ネタバレ—
当時新婚の松山善三が全体の構成と日本語の台詞を考え、
イヴ・シャンピ監督がフランス語の台詞を補ったと思われる。
しかし若干、構成にご都合主義のところが見られた。
ダニエル・ダリューが台風が来ているのに、造船所へ遊びに行くシーンだ。
そしてジャン・マレーを街へ引っ張り出し、○○○が死ぬシーンに間に合わせる。
ちょっと都合が良すぎると思った。
イヴ・シャンピは最後の台風シーンを本物以上に描いている。
フランスには台風はない。
また長崎でも、家が次から次へと倒壊する台風は滅多にないはずだ。
あるいは戦災で仮住居だったため、壊れやすかったかも知れない。
ゴジラの逆襲のように家をなぎ倒していたが、それが見る側の緊張感を高めた。
そして翌日台風一過で晴れ上がった中を人々は町の再建のために立ち上がる。
原爆でやられようと、台風でやられようと、長崎人は負けない。と言うところでほろりと来る。
カルトな場面はダニエル・ダリューが着物を着て和髪のカツラをかぶり、日本舞踊を舞うシーンだ。
あの「赤と黒」のフランスの大女優がこんなことをやるとは思わなかった。
ダニエル・ダリュー岸恵子の衝突場面では、
ダリューは8分ぐらいの力しか出しておらず、岸は120%出しているにも関わらず、
ダリューの3馬身差し切り勝ちという感じ。
彼女はもう若くはなかったのだが(当時39歳)重厚さで圧倒する。
さらに10年後「ロシュフォールの恋人たち」でその衰えぬ美貌にあっと言わされ、さらにそれから40年近くたった2002年、「8人の女たち」で、ベルリン映画祭銀熊賞を取っている。
現在、世界でもっとも美しい90歳ではないだろうか?
ゲルト・フレーベが日本に永住するフランス語教師役で出演している。
和服姿で日本屋敷に住む。
彼こそはのちに、007「ゴールドフィンガー」でタイトルロールを演じた悪漢である。
しかもドイツ人である。どうして彼がフランス語教師なのか?
彼の妻をもと宝塚スター浅茅しのぶが演じている。
他に若い日の野添ひとみ岸恵子の妹役で出演。
邦題は「慕情」Love is a many splendored thing.に因んだものだろう。
東洋の恋人と死に別れる話だからだ。
しかし仏題は「Typhon Sur Nagasaki」
長崎の台風とは何と色気のないことか(笑)
この時代のカラー映画にありがちだが、保存状態が良くない。
録音も悪い。
しかしこれ以上は悪くしてもらいたくない。
残しておく値打ちのある映画だ。