大島渚監督13年ぶりの作品。しかし以前の切れ味は消えていた。
脚本は簡潔に過ぎる。
変化を追っていくと言うより、場面が変わると心理情況もがらりと変わってしまう感じだ。
映像はセピア調で美しいのだが、ビデオで見ると音声のバランスが悪かった。
ある場面は相当大きめの音で再生しないといけないが、こんどは他の場面の声が大きすぎる。

新撰組に新たな隊士が入隊した。
1人は美男子の加納惣三郎(松田龍平)、もう1人は田代(浅野忠信)。
田代は衆道(ホモ)の者で、加納をその道に誘う。
二人を立ち会わせて、惣三郎が田代に激しく打ち込まれるのを見て、土方(ビートたけし)は二人の関係に気づく。
次第に二人の噂が流れ出し、隊の雰囲気がおかしくなる。
加納は別の隊士(田口トモロウ)にも誘われる。
しかしその隊士はある日、斬られて発見される。
捜査する山崎監察(トミーズ雅)も狙われる。
遺留品から犯人は田代だと判断され、近藤勇(崔洋一)は、加納に田代の暗殺を命ずる。

新撰組は男の集団だから、その気のある連中がいてもおかしくは無い。
ネコのタイプが入ってきたとき、各隊士が本当に自分はノンケだろうかと自問自答してしまう。
誰だって絶対の自信を持って、ノンケとは言えないものだ。
そういった不安が、徐々に隊の規律を乱し始める。
この辺の集団心理描写は巧みだが、加納や田代の当事者心理にまで深く入り込もうとしない。
あくまで土方の第三者視点で何が見えたかってことだけ。
これは監督の制作意図だろうが、物足りなく感じるところだ。
昔の大島渚作品だったら、観客の襟首を掴んで、「見ろ見ろ、この映画を見ろぉぉぉ」って迫力があったんだけどなあ。