脱獄した青年が犯罪を重ねることになり泥沼に堕ちてゆく姿を描くフィルム・ノワール
製作はジョン・ハウスマン、監督はニコラス・レイ(監督デビュー作)で、エドワード・ロビンソンの原作小説「私たちのような泥棒」をもとにチャールズ・スクニーが脚本を書いた低予算映画だ。
主演はファーリー・グレンジャー、キャシー・オドネル
共演はハワード・ダシルヴァ、ヘレン・クレイグ。白黒映画。

あらすじ

1930年代のミシシッピー州刑務所から、チンピラのボウイ(16歳で入所して7年目)はチカマウ、T-ダブと脱獄する。ひとまずチカマウの兄の小屋で暮らす。そこの娘キーチをボウイは気に入ってしまう。やがて、近所に若い男性がいない田舎でくすぶっていたキーチもボウイを好きになる。
チカマウらは銀行強盗を企てる。まずボウイが宝石店で時計を買いに行き、銀行の様子を探る。翌日、開店早々にチカマウとT-ダブが実行犯となり、運転手役にボウイがなった。待機中にボウイは宝石店の店主に顔を再び見られる。強盗計画は成功して分け前を三等分するが、T-ダブと別れた後、ボウイとチカマウは二台の車に分乗して逃亡しようとする。しかしボウイが交通事故を起こしてチカマウが助け出し、兄の家ボウイを置き去りにする。そのためキーチがボウイの世話をする。
ボウイの体調が戻ると、情が移ってしまったキーチと二人で一緒に逃げる。そして途中の教会で二人は結婚する。新婚旅行は、キーチの思い出のコテージを借りて暮らす。クリスマスが近付いたある夜、チカマウが訪れ、再びボウイを銀行強盗に誘い込む。T-ダブもチカマウも女と博打に分け前をすっていたのだ。反対するキーチを手伝うのは一回だけだからと宥めるが、いざ実行すると待ち伏せを食らいT-ダウが射殺され失敗してしまう。チカマウは翌日、再度強盗を重ねて警察に逮捕される。ボウイも身の回りが危険になり、クリスマスの日に馴染みのコテージから突如姿を消す。
ボウイとキーチは高級ホテルに現れる。キーチはボウイの子を妊娠していた。しかしホテルの用心棒に正体を見破られ、見逃してやるからすぐ出て行けと命じられる・・・。

雑感

本作は、ニコラス・レイ監督の処女作にして最高傑作の呼び声が高い。人間的な昼間の生活がしたい主人公と、それを許さないドライな犯罪を対比するフィルム・ノワールが当時は珍しかったのだろう。特にフランス・ヌーヴェルバーグの支持者から支持されたと言う。そう言えば、1954年仏映画「現金に手を出すな」でもジャン・ギャバンは静かな余生を求めるが、ギャングであると言う事実がそれを許さない。

この映画は1930年代前半に実際に起きた「ボニーとクライド事件」にインスパイアされて作られたそうだ。しかしニュー・シネマの「俺たちに明日はない」世代にとっては、この映画がとくに面白いと感じなかった。フリッツ・ラング監督のフィルム・ノワール「暗黒街の弾痕」(ヘンリー・フォンダ主演)という1937年の傑作の方がウェットだけど良いように思える。
またロバート・アルトマン監督のリメイク作「ボウイ&キーチ」(1974年製作:原題 Thieves like Us)は、もっと醒めた感じで描かれている。

 

ビスコンティの「夏の嵐」やヒッチコック映画で「ロープ」「見知らぬ乗客」と2回重要な役を演じたファーリー・グレンジャーは、この「夜の人々」で初主演する。本映画の製作時期は1947年と、「ロープ」より早かったので、これが大出世作だと言える。この映画の後、MGMに戻り5年契約を結ぶ。

ヒロインのキャシー・オドネルは、田舎娘を演じているのでメイクが芋っぽい娘だが、実物はすこぶる美人である。映画「探偵物語」「ララミーから来た男」などでも脇役だが好演している。1946年「我らの生涯の最良の年」に両手を戦争で失ったハロルド・ラッセルの恋人役として出演し、フレデリック・マーチがアカデミー主演男優賞を受賞するがブロードウェイ出演中で授賞式に出演できなかった時、彼女が代理でオスカーを受賞した。

彼女はファーリー・グレンジャーと1950年フィルム・ノワール「サイド・ストリート」でも共演している。グレンジャーには強い印象を与えたようで、伝記にも最も印象深い女性として彼女について書いている。彼は惚れていたようだが、彼女は爺好みでウィリアム・ワイラーの兄ロバート・ワイラーと二回り近く違うのに結婚して添い遂げた。若いのにウィリアム・ワイラーの義姉なのである。

なお、1954年に日本で公開された、グレゴリー・ペック主演映画「夜の人々」があったが、これは原題を「Night People」と言い、冷戦下の二重スパイの話である。本作品と関係ない。

スタッフ

製作  ジョン・ハウスマン
監督、脚色  ニコラス・レイ
脚本  チャールズ・スクニー
原作  エドワード・アンダーソン
撮影  ジョージ・E・ディスカント
音楽  リー・ハーライン
挿入歌  「あなたの赤いワゴン(荷馬車)」 唄:マリー・ブライアント

キャスト

脱獄囚ボーイ  ファーリー・グレンジャー
キーチー(チカマウの姪)  キャシー・オドネル
脱獄囚チカマウ  ハワード・ダ・シルヴァ
脱獄囚T-ダブ  ジェイ・C・フリッペン
マッティ(T-タブの弟の妻)  ヘレン・クレイグ
モブリー(チカマウの兄)  ウィル・ライト
歌手  マリー・ブライアント
ホーキンス  イアン・ウォルフ

ネタばれ

二人は死んだT-ダウの弟嫁マッティのモーテルを借りて、身を隠す。マッティの夫は刑務所に入っていた。そこで刑務所にボウイの情報を知らせたら、代わりに夫を釈放すると言われていた。そこで彼女はボウイの情報を警察に躊躇なく売ってしまう。
その頃、ボウイは以前結婚式を挙げてくれた牧師のところへ相談に行った。しかし返事は芳しいものではなかった。ボウイはマッティの元に戻り、妊婦であるキーチのことを頼んで一人で去ろうとする。しかしマッティは、今ならキーチは寝ているから一目寝顔を見てから行けと言う。その言葉に動かされたボウイはキーチの顔を覗きに行くが、警官隊に包囲されあえなく射殺されてしまう。騒ぎで目を覚ましたキーチの叫び声が夜空に響いた。

 

 

 

 

 

 

 
夜の人々 They Live By Night 1948 RKO製作・配給 (IP国内配給1988年)

投稿ナビゲーション