独語のタイトルは、シューマンの第一交響曲である「春の交響曲」、
ところが邦題は「哀愁のトロイメライ」挙げ句の果てに、「クララシューマン物語」に改題された(爆)
何はともあれ、東西ドイツが協力して作り上げた作品。
たとえ共産党が強い時代でも、ドイツは音楽では一つなのだ。
クララ・ヴィーク(ナスターシャ・キンスキー)はライプチヒの音楽教師の娘で、幼い頃からパガニーニ(ギドン・クレーメル)と共演するなど、天才の名をほしいままにしていた。
父の高弟ロベルト・シューマン(ヘルベルト・グレーネマイヤ)とは子供の頃から仲が良く、彼女にとってロベルトは、兄でもあり友人でもあり、そして最も信頼できる作曲家でもあった。
しかし彼は腕を故障しており、ピアニストとしては、クララには頭が上がらない。
クララは成長して、ロベルトを男性として意識するようになる。
と言うのも、回りに男性らしい男性がロベルトしかいなかったのだ(笑)
世間知らずの天才少女クララだったが、愛を知ることで、クララの演奏は次第に情熱を帯び始める。
ロベルトは元来、躁鬱の気があり、シンフォニックな激しいピアノ曲を書いていたが、クララを女性として愛するようになってから、生活のためもあって、子供向けのシンプルな曲を作り始める。
それが「子供の情景」(トロイメライ他)などの小品集である。
また音楽批評誌を創刊して、自ら文筆を振るった。
クララはプラハ、ウィーンと演奏旅行を成功させ、ますます名声を得る。
クララの父は無名作曲家ロベルトを「精神病で、財産狙い」とののしり、娘から引き離そうとする。
ロベルトは酒に溺れるが、メンデルスゾーンの支援で立ち直り、作曲活動を続ける。
クララもパリの演奏旅行は、必ずしも成功とは言えず、遂に父を捨てて、ロベルトの元へと走る。
裁判で父を破り、二人は結婚を認められた。
ロベルトの第一交響曲「春」が完成し、メンデルスゾーンとライプチヒ交響楽団により初演される。
それを聴くクララの横顔は何かしら淋しげで、これから先の不幸を予感させた。

妙な映画だ。
クララが一番幸せだった辺りで、作品を終わらせている。
見ている側はその後、どうなったのか、知っているわけで、素直に喜べない。
父の予想した通り、ロベルトは躁鬱が激しくなって、気が狂って死んでしまうし、クララは苦労して子供を育てなければならない。
それを影ながら援助する、ブラームスはクララを思って、一生やもめを通してしまう。
ここから後の悲劇を描いてくれた方が、ずっと映画的だと思うのだが。
ナスターシャ・キンスキーの野性味溢れる美しさが、天才ピアニスト・クララのそれと重なる。
ずいぶんダイエットしているようだ。
しかし東ドイツで保管していたせいか、状態が良くなくて、映画「パリ・テキサス」の前年の撮影とは思えない。
音が悪いのも、つくづくも残念。
テナーはフィッシャー・ディースカウ。
ピアノはアルゲリッチではなく、ケンプとポゴレリッチというのが妙だが、その辺はクララっぽく、それなりに弾いている。

哀愁のトロイメライ Fruehlings Sinfonie (1983, East and West Germany)

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