グレングールドの映画を撮った、フランソワ・ジラール監督作品。
伝説のバイオリンがたどる数奇な運命を描き、音楽や楽器に賭ける人間の情念の深さを伝える。
17世紀後半、クレモナのバイオリン工房の妻アンナは高齢で身ごもる。
彼女が未来を占ってもらうと、四つの不幸(死、病気、悪魔、裁判)を経験するが、その後に復活することができると告げられる。
やがて彼女は産気づくが亡くなってしまう。
夫ニコラは最後のバイオリン、レッドバイオリンを完成させた後、悲嘆に暮れながら後を追う。
18世紀後半、レッドバイオリンはウィーンの修道院にあった。
修道院の孤児カスパーはレッドバイオリンで奇跡のような演奏を行い、モーツァルトの再来と賞賛される。
彼は心臓に持病があったが、教師プッサンの教えに従い、素晴らしいソリストへと成長する。
そして貴族たちへのお披露目の日、カスパーはレッドバイオリンに魂を吸いとられるように心臓麻痺を起こして逝ってしまう。
カスパーと共に埋葬されたレッドバイオリンだったが、ジプシーの墓荒らしに盗まれ、やがて海を渡り英国オクスフォードのバイオリニスト、フレデリック・ポープが手に入れる。
彼はレッドバイオリンを持つや、悪魔のような官能的な響きが頭に浮かび、素晴らしい作品を次々に発表する。
しかし、作品を作り出すためには女性が必要だった。
やがて彼は妻を裏切り、怒った妻はピストルでレッドバイオリンを撃つ。
壊れたレッドバイオリンは中国人の下男とともに海を渡り、上海の骨董店に譲られる。
そこで美しい娘に買い取られる。
娘はやがて共産党に入党し幹部になる。
ときは文化大革命。
西洋文化廃絶運動のなか、彼女は裁判に掛けられる。
しかしレッドバイオリンの隠し場所だけは誰にも告げなかった。
やがて現代のモントリオール。
中国から運び込まれた骨董バイオリンの中にレッドバイオリンを発見した、
鑑定士モリッツ(サミュエルLジャクソン)。
彼は類い希な鑑定眼でこのバイオリンに込められた、情念の重さを明らかにしていく。
やがてオークションにかけられることになったレッドバイオリン。
ウィーンの修道院、フレデリックポープ財団、中国共産党幹部の忘れ形見、著名なバイオリニストたちが競り上げていくが、一体誰の手に落ちるのか?

脚本としては、さほど抑揚もなく、先が読めてしまう。
しかし4世紀の間、クレモナ、ウィーン、オクスフォード、上海、モントリオールと5カ国にわたる物語を、パラレルに描く構成のため、二時間飽きることはない。
ジョシュアベルのソロ演奏、エサ・ペッカ・サロネンの指揮も感傷的に流されることなく、タイトな音楽を奏でているため、音楽だけ聞いていても楽しめる。
何より名器と言われる楽器が、信じられないような歴史を積み重ねて、今日に至ってることを思い知らされる。
ストラドバリウスだって、最初からストラドバリウスではないのだ。
それを巡る人間たちの情欲、呪い、そんなものがあるときは名器を汚し壊し、あるときは名器を活かし伝えていく。
人間と音楽との関わり、楽器との関わりの深さ、強さに感動した。
バイオリンがこれほど格好良く、偉大な楽器に見えたことはない。クラシックファン必見!!!
クラシック音楽映画としては傑作の部類だろう。