女子留学生の目から見た多様性あふれるパリ市内の日常生活を描いた、14分間のドキュメンタリー映画。
製作はバルブ・シュローダー、監督はエリック・ロメール。
白黒映画で撮影はネスタ・アルメンドロス。
雑感
旧ユーゴスラビアのベオグラード生まれでアメリカに養子に貰われていった娘ナジャがシテ大学(パリ第七大学)に留学している。
彼女が感じるパリの印象を彼女自身のナレーションとともに記録した。
「パリには多様性がある。いろんな世界を体験できる。」
ロメールが抜き出したパリの情景が、彼女のナレーションに実にマッチしている。
ただし、彼女がアメリカでも異邦人であり人種差別を受けていたことは想像に難くない。そろそろアメリカでは黒人解放運動が火を吹くのである。
さらに旧ユーゴスラビアは、多民族連邦国家であってチトー大統領が生きていた当時は表だった対立はなかったが、死後は各共和国に解体してしまった。
パリは確かに多様性に寛容だが、数年後には学生運動で死人も出た。
現代も労働者階級については外国人排斥運動が起こっている。そして、これを是とする右翼政党党首が大統領の座を争うようになった。
偶然なのか、シュルレアリスム作家アンドレ・ブルトンが1928年にパリで出会って小説「ナジャ」執筆のきっかけとなった狂女「ナジャ」と同じ名前だ。
ちなみにその小説にはシュザンヌという女性も登場する。ロメール監督が一年前に撮った中編映画「シュザンヌの生き方」と繫がる。
キャスト
ナジャ・テシック 本人/ナレーション
スタッフ
製作 バルブ・シュローダー
監督 エリック・ロメール
撮影 ネスタ・アルメンドロス
ストーリー
ナジャ・テシックというユーゴスラビアから米国に養子として移住した娘が、パリ第7大学に留学した。彼女は、ドイツ学生会館に住んでいる。その彼女の日常追いかけた。
プルーストの論文を書くのが彼女の目的だが、大学に顔を出すことは少なく、カルチェ・ラタン、サンジェルマン、モンパルナスあたりの出店をウロウロしている。オープン・カフェに夜行くと、同種の人間が集まってきてピカソを論じたりする。それを聞いて現代アートの美術館に行く。すっかりボヘミアンの気分だ。
休日には、パリ市の外れにある公園に足を伸ばす。同即物が自然な姿に近く見られるが、岩はコンクリート製だ。でもナジャは、そんなことを気にしない。
ベルヴィルの労働者居住地区に通りがかると、市場が開かれている。お腹が空いたので、お店でおやつを買い食いする。そんな場所でも異邦人であるナジャを受け入れてくれる。
自分にとってパリは多様性を受け入れる場所だ。そんな場所で彼女は刺激を受けて、いつかアメリカに戻るのだろう。