ジュリアン・デュヴィヴィエ監督(「望郷」「にんじん」「アンナ・カレニナ」「巴里の空の下セーヌは流れる」)は、戦前から戦後にかけて日本で非常に人気になったフランス人監督。いまだにヌーベルバーグを差し置いて人気があるので、本国でも「古典映画のビッグ5」監督として再評価されている。

その監督が戦後、ドイツ人ペーター・ド・メンデルスゾーンが著した幻想文学「痛ましきアルカディア」を元に作った作品が「わが青春のマリアンヌ」だ。戦中はアメリカに亡命していたデュヴィヴィエだが、終戦直後に非常にヨーロッパ的な敗戦国の文学を扱うとは大胆だったのかな。

実は同じセットでフランス語版ドイツ語版の二つ作っている。日本で公開されたのはフランス語版である。ドイツ語版では少年や教師はドイツ人を起用し、バイリンガルであるマリアンヌ・ホルトとイザベル・ピアだけが両方に出演している。

あらすじ

森の中に建っている古城を利用した孤児院がある。教授と呼ばれる先生が管理教育を施していた。子供は男子小学校から高校生ぐらいまでいて、マンフレの優等生グループとアレクシスの不良グループに分かれて対立している。そこへアルゼンチンから転校生ヴァンソンがやって来る。牧場育ちらしく腕っ節は強そうだが、何故か夢見るところがある。みんなは興味津々で、早速不良グループから誘いがかかる。ところが孤児院にもう一人珍客が舞い込んだ。リーゼという少女だった。その夜はリーゼを囲んで音楽の宴が開かれ、ヴァンソンもギターの弾き語りをして見せた。リーゼはその姿を眩しく眺めていた。

不良グループの目的は湖を挟んで対岸にある幽霊屋敷と呼ばれる古城の地下墳墓探検だ。ヴァンソンはボートの見張り役だったが、なかなかみんなが帰ってこないのでボートを離れて一人で探しに行く。その間に仲間は従者に見つかり這々の体でボートで逃げ出してしまい、ヴァンソンは脱出手段を失う。そこで中に入ると美女マリアンヌがいた。マリアンヌは屋敷の主人である男爵を寝かし付け、その隙にヴァンソンを従者に言付けてボートで対岸まで送る。すでに真夜中で嵐が吹き荒び、校舎のガラス窓は割れていた。ヴァンソンはリーゼの部屋に行くと木が窓を突き破ってどんどん入ってくる。ガラス扉を閉めていると彼は手を切ってしまう。リーゼは包帯を巻いたついでに彼に抱きつこうとするが、彼は身をよじって逃げる。そこでリーゼは服を全て脱ぎ彼を誘惑する

しばらくしてヴァンソンは部屋に帰ってベッドに入るが幸せそうな表情をしていた。夏祭りの日、街に出るとマリアンヌを乗せた車を発見する。しかし彼女はすぐ引っ込められ窓には日除けが降ろされて出発してしまう。その様子はヴァンソンとマンフレも見ていた。さらにある日、ヴァンソン宛にマリアンヌから助けてと書かれた手紙が届く。ヴァンソンはボート小屋に鍵がかかっているので湖を泳いで渡ろうとするが途中で溺れ、仲間に助けられる。亡くなった父の旧友で母の婚約者である大尉がやって来て明日、チューリヒのお母さんのところへ行こうと誘われるが、翌日再び抜け出して森を回って対岸まで歩くコースを選ぶ。リーゼも追って来たが、途中で鹿の大群に踏み潰されてナレ死した

翌日の午後、マンフレがボートを漕いでヴァンソンを探しに行くと、水辺で血だらけになって倒れていた。気付いたヴァンソンはマンフレを幽霊屋敷に案内する。しかしそこにはついさっきまで人がいた雰囲気はあるのだが、誰もいなかった。ただ男爵とマリアンヌの肖像画が掛けられていた。

ヴァンソンによるとマリアンヌと男爵に会い、男爵が語る理由(大邸宅に住み挙式寸前だったが花婿に逃げられたため精神が崩壊した)を聞き一時は納得したが、狂ったように抵抗するマリアンヌをやはり助けようとして従者に投げ飛ばされて気を失い、気がつくと水辺にいたと言う。

結局、ヴァンソンは母の元へ帰ることになった。最後に彼は大邸宅でマリアンヌと会うつもりと言った。

 

マリアンヌリーゼならリーゼを取るな。
マリアンヌは見るからに牡丹灯籠だ。精気をすべて吸い取られそうだ。
でもリーゼも嵐の中でぱっぱと脱ぐあたり、随分遊んでるから孤児院に入れられたようだ。

 

マルチミニングのエンディングだった。よく分からないが、やはりマザコンゆえに母の幻影を見ていたのであろう。

ヴァンソンは母の元へ帰るが、もう母を束縛する気は無いだろう。囚われているマリアンヌは、彼の心の中に閉じ込めていた母である。いまや母を解放して、彼も自分にふさわしい相手を探そうとしている。つまりこの騒動で乳離ができたのだ。

だからこの映画は彼にとっての通過儀礼だったのだ。

この映画は日本の文化に多大な影響を与えた。森に囲まれた寄宿舎に来る転校生は萩尾望都の漫画「トーマの心臓」、マリアンヌ役を演じたマリアンヌ・ホルトは松本零士「銀河鉄道999」のメーテルのモデルであり、ハーロック映画の題名「わが青春のアルカディア」はこの映画の原作「痛ましきアルカディア」から採っている。さらにジャックスのナンバーに「マリアンヌ」という嵐を題材にしたロックがあり、最も有名なのがジ・アルフィーのヒット曲「メリーアン」である。

 

監督・脚色・台詞 ジュリアン・デュヴィヴィエ
製作 ラルフ・ボーム
原作 P・E・メンデルスゾーン
撮影 レオンス・H・ビュレル
音楽 ジャック・イベール

配役
マリアンヌ  マリアンヌ・ホルト
リーゼ イサベル・ピア
ヴァンソン ピエール・ヴァネック
マンフレ  ジル・ヴィダル
大尉  ジャン・ギャラン
男爵  ジャン・ヨンネル
ジャン  クロード・アラゴン
トビ  セルジュ・デルマ
教授  フリードリッヒ・ドミン

わが青春のマリアンヌ 1955 フランス+西ドイツ

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