(△)当時多数発生していて社会問題になりつつあった交通事故の悲劇を描く、松山善三のオリジナル脚本を「女の中にいる他人」の成瀬巳喜男が監督した社会派映画
主演は高峰秀子。交通戦争で子を失った母のやり場のない悲しみを描く。共演は司葉子、黒沢年雄、小沢栄太郎、中山仁
白黒映画で、撮影は西垣六郎

雑感

成瀬巳喜男監督と主演高峰秀子で珍しいサスペンス映画だ。

サスペンスとは言え、あまりハラハラさせられない。
ザラザラの映像が特徴的。それが国子の回想シーンだけ、白っぽくなる。現実と彼女の犯罪妄想の区別を付けているのだ。分かりやすいが、少しあざとく感じられる。

当時は、交通事故の罪は今より軽かった。弁護士の腕次第で示談金も安くて済んだ。
一方、当たり屋も横行していた。だから、被害者の注意が不十分だったと認められやすい風潮があった。

現在だったら、ひき逃げでも刑事裁判になる。
しかし、初犯ならば悪質な運転と認められない限り、執行猶予が付く。民事の損害賠償裁判も保険会社や弁護士の強い方が、有利な和解条件を勝ち取るものだ。

キャスト

高峰秀子  伴内国子
黒沢年雄  国子の弟でヤクザもの・林弘二
小川安三  国子の夫で傷痍軍人・伴内隆一
小宮康弘  長男武

司葉子  柿沼の妻絹子
小沢栄太郎  オートバイ会社専務・柿沼久七郎
平田郁人  長男健一
佐田豊  運転手菅井清
中山仁  絹子の愛人・小笠原進
賀原夏子  筆頭女中・ふみ江
加東大介  柿沼の部下川島友敬
土屋嘉男  社員黒金周一

浦辺粂子  事件の目撃者・兼松久子
中北千枝子  家政婦紹介所長の相良
柳谷寛  巡査
田島義文  刑事部長
清水元  柿沼の弁護士・今西
加藤武  取調官
稲葉義男  取調官

 

スタッフ

製作 藤本真澄
脚本  松山善三
監督  成瀬巳喜男
撮影  西垣六郎
音楽  佐藤勝
美術  中古智

あらすじ

終戦後、売春婦をしていた伴内国子は、傷痍軍人の伴内と結婚した。その後、夫は亡くなり、国子は、五歳になる一人息子武を育てるため、横浜の中華料理店で懸命に働いた。
ある日、柿沼絹子は年下の小笠原との情事の後、自ら運転する自動車で、道路を渡ろうとした武少年をひき殺す。
絹子は山野モータース専務夫人だった。会社では、オートバイの新車売り出し直前で、成功すれば夫柿沼久七郎の社長昇格は確実視されていた。妻絹子が事故を起したとなれば、久七郎の地位も危い。久七郎は妻のひき逃げをもみ消すため、後の生活は心配しなくても良いからと説得して、運転手菅井に自首させた。

事件は柿沼の手配した敏腕弁護士と国子の弟弘二の話し合いで示談にもちこまれ、菅井の交通裁判も罰金刑で済んだ。
ある日、国子は事故を目撃していた久子から、ひき逃げした車を女が運転していたことを知らされる。
国子は久子を連れて再び警察をおとずれたが、終わった事件を警察はほじくり返すことを嫌った。
そこで、顔のばれていない国子は、家政婦として柿沼家へのりこんだ。そして、真犯人絹子に自分と同じ苦しみを味わせるため、絹子の幼い一人息子健一を殺そうとした・・・。

しかし、彼女にすぐなついた健一を殺すことはできなかった。
絹子は浮気をしていたらしい。国子は、絹子本人を破滅させようと思った。弟に浮気を知っているという怪電話を掛けさせ、絹子を疑心暗鬼にさせた。小笠原は身の危険を感じてニューヨークへの単身の転勤を選んだ。
国子は真夜中になって絹子の部屋に忍びこんだ。絶望していた絹子は、健一の首を絞め殺し自らは薬物自殺していた。警察では、国子に不審を持ち、容疑者として扱った。しかし菅井の進言で柿沼は、絹子の遺書を警察に提出し、国子は釈放された。執拗な取り調べで国子は、おかしくなっていた。横断歩道を見ると狂ったように、旗を持ち子供の手を引っ張って渡った。

 

ひき逃げ 1966 東宝製作・配給 子供を失った母親が真犯人を追い詰めるサスペンス映画

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