昭和28年のキネマ旬報ベストテン一位作品。今井正監督が樋口一葉の短編を現代に蘇らせた。脚本は水木洋子、井手俊郎である。
2位 「東京物語」、3位 「雨月物語」を敵に回しての一位だけに値打ちがある。ちなみに4位以下も「煙突の見える場所」、「あにいもうと」、「日本の悲劇」、「ひめゆりの塔」、「雁」と傑作揃いである。

 

 

第一話 十三夜
婚家を飛び出した丹阿弥谷津子。娘を諫めて夫の元へ返す父三津田健
谷津子が幼い頃芥川比呂志にあこがれていた。偶然乗り合わせた、うらぶれていた車夫が芥川だった。昔話もそこそこに谷津子は後ろ髪引かれる思いで車夫と別れる。

丹阿弥谷津子が主演を張ってる映画ははじめて見た。
芥川比呂志はこの映画ではジェラール・フィリップそっくりだ。とてもいい男だった。

第二話 大つごもり
この作品がオムニバスの中でもっとも面白かった。
久我美子はお金持ちの下女。女将さん長岡輝子に借金を頼むが断られ、むしゃくしゃして金を盗む。
一方、ぶらりと女将となさぬ仲の長男仲谷昇が現れる。その夜、女将さんが金を入れた引き出しを開けると・・・
いったい何が起きたのか?犯人は誰なのか?最後までわからない。

第三話 にごりえ
「菊の井」の人気女郎淡島千景と、今はうらぶれた布団屋の宮口精二の心中話だ。山村聡は客として淡島千景の悩みを親身になって聞いてやるが、命までは助けられなかった。杉村春子は夫宮口をすっかり追いつめてしまう悪女である。
淡島千景の魅力爆発。宮口精二は女房に責められどうしで人生にバイバイしたくなったのだな。

 

 

最初の作品はほろ苦い恋心を思い出す話。
二番目はブラックユーモアだが、盗人になってしまった久我美子の今後が非常に不安。
三作目は無理心中ものだ。後の作品になるほど、救いがない。
今井正監督も戦後の楽天主義から、次第に変わってきた。また彼は明治の昔に目を向けてもらいたいなどと言ったそうだが、一話と三話については今も昔も変わらない話だと思う。

 

にごりえ (今井正監督) 1953 松竹

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